“絶対的司令塔”の言葉から見えた優勝の舞台裏 [JBL]

柏木真介アイシンシーホース

柏木真介 ~“覚悟の涙”を越えて~

昨ーズン、絶対的な司令塔としてチームを引っ張っていた柏木真介は、今後の成長を約束する“覚悟の涙”を流した。あれから1年――。相手は違えども、昨シーズン同様、1勝したあとに2連敗とあとがない状況に追い込まれたとき、柏木は何を思い、どのようにチームを優勝へと導いていったのか。第4戦以降の柏木の言葉から見えたアイシン逆転優勝の舞台裏を探る。

インタビュー・文・写真/三上 太

 柏木真介~“覚悟の涙”を越えて~

「自分が優勝したいと思う気持ちと同じくらい
若い選手に優勝をさせてあげたかった!」

JBL最後のシーズンとなった2012-2013シーズンを制したのはアイシンシーホースだった。
昨シーズンのJBLファイナルでは先勝したものの、その後3連敗。
絶対的な司令塔としてチームを引っ張っていた柏木真介は悔しくも、
今後の成長を約束する“覚悟の涙”を流していた。
あれから1年。
相手は違えども、昨シーズン同様、1勝したあとに2連敗とあとがない状況に追い込まれたとき、
柏木は何を思っていたのか。
そこからどのようにチームを優勝へと導いていったのか。
第4戦以降の柏木の言葉から見えたアイシン逆転優勝の舞台裏――。
 
◆関連記事 2011-12JBLファイナル 「柏木真介~覚悟の涙~」
 
 

【GAME4:アイシン74-65東芝(対戦成績2勝2敗)】

王手をかけられてなお、ここからが勝負と
チームを奮起させたキャプテンシー

絶対に負けられなかった4戦目。「ここからが勝負」と、柏木は若い選手たちにこれまでのファイナルでの経験を伝え、そして、みずからコートで牽引して勝利に導いた

――今日のゲームを振り返って。

今までの3試合とは異なる展開で、レギュラーシーズンでやってきた自分たちらしいバスケットができたかなと思います。今まではどちらかというと受けに立っていたところがありました。でも自分たちはチャレンジャーなんだから、もっとハードにプレーしようと話をしたことで、今日は全員がコート上でそれをしっかり表現できたと思います。
 
 
 
――第3戦は外国人選手のミスもありましたが、それについてはどう修正しましたか?

ミスは誰にでもあると思います。それに対してミスした人を責めても仕方がないので、チーム全員でカバーし合おうと話し合いました。なにせ3戦目まで自分たちらしいバスケットが全然できていなかったので、もう1回原点に戻ってやろうと…それだけです。

――昨日、鈴木貴美一ヘッドコーチが「外国人選手がナーバスになっている」と言っていましたが、それは柏木選手も感じますか?

第1戦は初戦を取りたいという気持ちから、全員が積極的に攻めていました。ただ第2戦を落としてからは、外国人だけでなく若手も何か弱気になっているところがすごく見えましたね。

――それが第3戦目の負けにもつながりました。

そう。ウチはディフェンスをハードにしなければリズムを作れないし、レギュラーシーズンで1位になれたのも、そうやってガムシャラにやってきたからこそなのに…。だから「それを出さなければ、どこを相手にしても勝てないぞ。(王手をかけられて)追い込まれるのではなく、ここからが勝負なんだから最後までしっかりやれ」と伝えました。それで今日はみんな強気で、積極的にできたんだと思います。

――それは柏木選手が伝えたのですか?

そうです。試合の前、コートに入っていく前にみんなを集めて伝えました。ファイナルでは何よりもメンタルが一番大切になります。ヘッドコーチもミーティングで戦術の指示以上にメンタルのことを重点的に話していました。僕も昨日からそこが一番重要かなと思っていたので、ゲーム前に選手だけでもう一度集まって、再確認したわけです。

――そういうことは普段あまりされませんよね?

普段はあまりしませんけど、今日の試合で負けたら終わりですし、昨シーズンのように先勝しながら連敗して終わるという悔しい思いもしていますから。それに若いメンバーがこれからさまざまな試合を経験していく上でも、ここを乗り越えなければ先はないと思ったので、最後のつもりで伝えました。

――話を今日の第4戦に戻します。今日はこれまでと違って、追いかける展開でした。

前半が終わって、自分たちもこのほうがいいだろうと思っていました。前半は我慢して、後半の勝負どころで逆転して逃げ切るのがウチのパターンでしたから。もちろん最初から逃げ切るパターンのほうが楽ですけど、東芝(ブレイブサンダース)のように勢いのあるチームを相手にすると、つい最後まで受けに回ってしまうケースがあったので…今日は後半が勝負だと話していて、ディフェンスとリバウンドを集中してできたのがよかったのだと思います。

――作戦を変えたわけですね。柏木選手自身に目を向けても、昨日(第3戦)は前半から得点面で飛ばしていましたが、今日は後半の大事なところでシュートを決める活躍でした。

昨日は東芝が序盤から勢いよく向かってくると思っていたので、こちらが先手を打とうと思って攻めました。それが結果として後半、いい流れでシュートを決めることができなかった。今日は全員でアイシンのバスケットをしようと話していたので、後半の勝負どころまで我慢しようと思っていました。ヘッドコーチからも「第4ピリオドの残り3分まで休ませる」と言ってくれたので、ボクはその3分に賭けようと思っていたんです。それがいい結果につながってよかったですね。

――柏木選手を含む主力を休ませている間、コート上にいる選手たちには何を伝えましたか?

(交代でPGを務める橋本)竜馬には「我慢しろ」という話をしました。あいつもファウルが多くなっていたので「残り5分くらいまでは冷静に、しっかり耐えてくれ」と。ただ「5分を切ったら、ファウルをうまく使ってもいい」とも伝えました。他の選手に対しては、とにかく「自信を持ってプレーしろ。ただしディフェンスだけは緩めるな」と言いましたね。

――そしてリードした展開で柏木選手がコートに戻ってきて、逃げ切る。シナリオどおりの展開でしたね。

戻るときにヘッドコーチから「大丈夫か?」と聞かれましたが、そのときはすでに準備もできていたし、「大丈夫です」と言って出て行きました。そこでは自分が得点を取るというよりも、逃げ切る形に持っていければいいなと思っていて、(桜木)ジェイアールや喜多川(修平)がいい形でシュートを決めてくれたので…今日の勝利は本当にチームの勝利だと思います。

――その喜多川選手が今日はラッキーボーイでした。

ウチはラッキーボーイになれる選手がたくさんいますから。そういった選手がここまで出てこなかったのがプレーオフの難しさなんだと思います。喜多川はレギュラーシーズンでもいい働きをしていたし、それがこういった大舞台で活躍できたことは、彼自身の自信になると思います。もちろんチームとしてもプラスです。明日の最終戦も、主力か控えの選手かわからないけど、ラッキーボーイが出てくれば、いいバスケットができると思います。

――明日の最終戦に向けて。

明日が本当にラストなので、倒れようが何をしようが、ベストを尽くしたいですね。体力面の心配はありますが、ここまできたらやるしかないし、今日の試合を見てのとおり、自分たちはチーム全員で戦っていますから。その中で自分も体力面などの調整をしながら、今日みたいに勝負どころで仕事ができるように、仲間を信じて、チームとして戦いたいと思います。
 
 
 昨シーズンのファイナルではトヨタの厳しいディフェンスにあって、自らの攻撃とゲームコントロール、挙げ句にメンタルのバランスさえも失っていた。「チームを勝たせるために何をしなければいけないのか」が見えなくなり、チームリーダーとしての大きな課題も突きつけられた。それらを1年経った同じ舞台で、しかも相手に王手をかけられた、後のない場面で冷静に対処、披露してみせたのである。
 
 

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