指導歴50年の理論派コーチ [女子代表]

ハーブ・ブラウン女子日本代表アドバイザー・コーチ

「女子代表のために、どんなサポートもするつもりです」

女子代表のアドバイザー・コーチに就任したハーブ・ブラウン氏。指導歴50年を超えるベテランコーチだ。5月のチーム始動から熱心な指導を見せているブラウン氏に、日本でのコーチングや今後の女子代表の課題などを聞いた。

インタビュー・文/舟山 緑  写真/小永吉陽子

ハーブ・ブラウン
(女子代表アドバイザー・コーチ)

「私の仕事は、選手が、チームが日々成長するために
出来うることは何でもサポートすることです」
 
ハーブ・ブラウン氏は、5月に女子代表合宿に合流して以来、アメリカ・ヨーロッパ遠征にも帯同。
77歳とは思えないほど精力的に「内海ジャパン」をサポートしている。
これまでにNBAやプエルトリコ、スペインでのクラブチームのヘッドコーチやアシスタントコーチ、大学コーチなどを歴任。
2012年には、ウルグアイ男子代表のアシスタントコーチとして南アメリカ選手権3位に貢献している。
その指導歴は、優に50年を超える。理論的なコーチングをする人物としても知られ、
ディフェンス論やオフェンス論などの著書もある。
ブラウン・コーチに、日本でコーチングすることを決意した思いや、この2カ月余りで見えてきたこと、
女子代表の今後の課題などについて聞いてみた。
 

女子代表のアドバイザー・コーチに就任した指導歴50年の大ベテラン

「女子の代表チームのコーチングは初めてです。
日本でコーチングすることは、すべてがチャレンジングなこと!」

「私の中にはコーチをリタイアするという考えはない。日本女子代表を指導するのはワクワクするチャレンジ」とブラウン・コーチ

――経歴では、これまでずっと男子チームの指導でした。女子の指導歴は?

毎年、関わっているワールドキャンプでは、男女ともに教えていました。ただし、女子のナショナルチームのコーチは初めてです。今回、内海さん(内海知秀ヘッドコーチ)から女子代表のオファーをいただき、私にとっても初めてで、チャレンジングなことです。男子選手は、自分で何でも出来ると思っていますが、実際はそうではありません。一方、女子は「自分が出来ないから、1つでも多く学びたい」という意欲がとても強い。そういう選手に教えるのはすごく楽しいことです。私は、教えること、コーチングすることが大好きですから、「女子のナショナルは初めて」というのは、あまり関係がありません。ベストを尽くすのみです。

――現在77歳。アジアのこの国で、女子のナショナルチームのアドバイザー・コーチを引き受けようと思った理由は何でしたか。

私の中には「コーチをリタイアする」という考えはありません。それが第一にあります。これまで香港や中国、インドネシア、スペインなど様々な国で指導をしてきました。それぞれ文化が違い、とてもいい経験になっています。私は、自分を必要としてくれる所ならば、どこへでも行きます。今回は内海さんが誘ってくれました。日本の女子代表を指導できるのはとても幸せなことで、楽しみに来日しました。さらにバスケットのみならず、日本語を学び、日本食を味わい、地下鉄の乗り方などを学ぶことができます。すでにこの2カ月間でいろいろ学んでいます(笑)

――内海ヘッドコーチからは、特にどんな点を要請されていますか。

「練習中に気づいたことは何でも言ってほしい」と言われています。このような形は、私にとってアドバイスしやすい状況です。内海さんはバスケットをよく知っていて、毎日毎日、何かを学んでいますし、私も彼から学んでいます。練習前にコーチ陣で練習プランを毎日考えますが、私からサジェスチョンできることがあれば率直に言っています。
 
 

アメリカ・ヨーロッパ遠征での成果

「ボックスアウト、リバウンドの重要さを選手は身をもって痛感したはず。
フィジカルな相手にはフィジカルで対抗しなくてはなりません」

上背のない日本を指導するにあたり、リバウンドとボックスアウトを含めたディフェンスについて、時間をかけて丁寧に指導している

――チームは、5月から6月にかけてアメリカからヨーロッパへと1カ月間の遠征を行いました。この間、どんなことに取り組んだのですか。

このチームは非常に若いチームです。まず基本を作り、オフェンスとディフェンスのタイプを決めることからスタートしました。彼女たちは走れるし、シュート力もあります。それを見てオフェンスを組み立てました。さらにディフェンスのフィロソフィーには一番時間をかけて、じっくりと作ってきました。例えば「今日はこのプレーをやろう」と決めて練習し、次の日にもう1つ新しいことを加え、2、3日して出来るようになったら、また次のプレーをというように、基本からどんどん積み重ねています。

――ディフェンスで強調していることとは?

リバウンドをいかに取るかは、時間をかけました。日本は絶対的な高さがないので、リバウンドは特に重要です。そのためには、ボックスアウトを徹底すること。リバウンドのファンダメンタルでは、チームで取るということを言い続けています。1人ではなく、5人で取るということです。そして、常にハードにプレーし、フィジカルにプレーすることを強調しています。

――アメリカで対戦したのは、WNBAでもトップクラスのフェニックス・マーキュリーです。このようにレベルの高いチームと対戦するのは意味がありますか。

もちろんです。相手は高さもパワーも巧さも兼ね備えたチーム。どれだけボックスアウトが大事か、どれだけ全員でリバウンドに飛び込むことが必要か、どれだけアグレッシブにやらなくてはいけないかを身をもって知ることができたのが収穫でした。ゲームは8点差ぐらいで追いかける展開だったので、選手はあきらめずに相手に向かっていっていました。フェニックスのような強いチームと戦って「自分たちはこれだけ出来るんだ」という手応え、目安をつかんだと思います。

――ヨーロッパでの試合もタフなものになったようですね。

スロバキア代表は、非常にフィジカルで当たりも強かったです。そういうチームに対してどうプレーすべきかを学んだと思います。フィジカルなチームには、フィジカルで対抗しなくてはなりません。それを実際に体験できたのはよかったです。リトアニアでの3戦も、非常にフィジカルでした。それは粗いという意味ではなく、きちんとした強さでした。リトアニア代表は、日本よりも経験があるチームで、FIBAランキングも15位。しかし、日本がしっかりアジャストできたことで勝利につながりました。

――リトアニの大会では、アジア選手権で戦うライバル・中国代表に21点差で勝利しました。中国に勝利したのは、第5回東アジア競技大会(2009:ホンコン・チャイナ)の予選ラウンド(59-54)以来です。相手はベストメンバーではなかったようですが。

中国代表もいいチームでしたが、日本はアタックすることができました。対戦前に中国チームの戦いぶりを見たので、試合前に選手には「中国には絶対に勝てる。いや、勝たなくてはいけない。あなた方は毎日、一生懸命に練習しているのだから、絶対に勝てる」と伝えました。前半で5点リードしていたので、「このままハードにプレーを続けよう。絶対に負けないという気持ちでいこう」と話しました。中国戦は、遠征中に取り組んでいたディフェンスがうまく機能したと思います。
 
 

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