東アジア競技大会&FIBAアジア女子選手権に挑む [女子代表]

王 新朝喜(女子日本代表/三菱電機)

「日本代表になれたことを誇りに感じています」

今季、初めて日本代表に選ばれた王 新朝喜(おうあさこ)。フィジカルの強さを生かしたゴール下プレーは、代表チームにとっては大きな武器になっている。8月には日本への帰化が認められた。この秋、アジアの舞台に挑む王に「代表」への思い、抱負を聞いた。

取材・文/舟山緑  取材・写真/小永吉陽子

王 新朝喜(右)の加入で、インサイド陣の選手層が厚くなった女子代表。王の身体を張ったプレーに期待がかかる

FIBAアジア女子選手権に挑む<1>

王 新朝喜(女子日本代表/三菱電機)

「私も両親も、日本代表になれたことを誇りに感じています。
アジア・チャンピオンである中国との対戦が、とても楽しみです」

「王 岑静(ワン・ツェンジン)」から「王 新朝喜(おうあさこ)」へ――。
中国国籍だった王の帰化が認められ、8月に晴れて日本国籍取得が実現した。
189㎝の高さでボディコンタクトに強い王の存在は、女子代表にとっては大きな武器である。
192㎝の渡嘉敷とのツインタワーは、今までの代表にはなかった高さであり、
ケガから復帰してきた間宮佑圭(184㎝)とともに、インサイドに厚みが増した。
決して器用な選手ではないが、今年は海外遠征でいくつものゲームを経験して
得意なフックショットにも磨きがかかってきた。
東アジア競技大会、そして10月27日開幕のFIBA アジア女子選手権へと挑む王に、
日本代表として戦う覚悟、日の丸のユニフォームで戦う思いなどを聞いた。
 
 
◆FIBAアジア女子選手権公式サイト(FIBA ASIA)
◆FIBAアジア女子選手権大会特設サイト(日本バスケットボール協会)
◆東アジア競技大会公式サイト
◆東アジア競技大会特設サイト(日本バスケットボール協会)
 

■日本国籍の取得

「日本への帰化は、三菱に入団するときに決めました。
たくさんの方にお世話になったので、恩返しがしたい!」

 189㎝の王 新朝喜(おうあさこ/三菱電機)の加入は、女子代表にとって大きな戦力となっている。間宮佑圭、渡嘉敷来夢(ともにJX-ENEOS)というインサイドの選手層に厚みが生まれたからだ。強みは、幅を生かしてゴール下で身体を張れること。日本人選手が弱いとされているボディコンタクトに強いのが武器である。三菱でもインサイドの軸としてこの3年、着実な歩みを見せてきたが、今年5月に日本代表に選出されてからの成長も目覚ましい。内海知秀ヘッドコーチやハーブ・ブラウン・コーチの指導によって、ポストプレーに安定感が増してきたのだ。

 そしてこの8月、王は晴れて日本への帰化が認められた。東アジア競技大会、そしてFIBA アジア女子選手権には「王 朝新喜」として挑むことになる。

自分が好きな3つの漢字から日本名を決めたという王。気持ちも新たに日本代表としてこの10月、2つのアジアでの大会に臨む

――晴れて日本国籍となりました。「王 新朝喜(おう あさこ)」という名前は誰がつけたのですか。帰化が認められた今の心境は? 

自分で名前を決めるのは、すごく不思議な感覚でした。「新朝喜(あさこ)」は、親と相談して決めました。自分が好きな漢字を3つ選び、画数にもこだわりました。帰化にあたってはたくさんの人に協力していただいたので、もう迷いもなく、あとは思い切ってプレーするだけです。今は、すごくうれしくて、お世話になった方々にバスケットで活躍をして恩返しがしたいと思っています。

――日本への帰化はいつごろ考え、それはなぜだったのですか。

高校(岐阜女子高校)から日本に留学しましたが、帰化は考えていませんでした。高校を卒業したら帰国しようと思っていたぐらいでしたが、高校、大学(白鷗大学)とプレーしていくうちに、バスケをやる楽しさや勝ったときのうれしさを覚えるようになって、どんどん上のレベルでやりたいと思うようになっていきました。大学を卒業する年にWリーグの規定が変わり、「帰化する意志があればプレーが認められる」ということになったので、三菱電機へ入団するときに帰化を考え、申請をしました。

――日本国籍を取ることに迷いはなかったのですか。

そのときはあまりなかったですが、帰化の面接で「一度、日本に帰化してしまうと、将来、中国人にもう一度戻りたいと思ってもほとんど無理ですよ」と言われました。その言葉を聞いて少し迷いました。でも、帰化にあたっては多くの方にご協力をいただいたので、そこで断念しては全てが水の泡になってしまいます。だから「大丈夫です。お願いします」と伝えました。

――帰化申請をしたとき、同時に「日本代表になる」という目標も抱いていたのですか。

はい。三菱に入団する際に山下(雄樹)ヘッドコーチとの面接で「将来は日本代表に入りたい」とハッキリ言いました。Wリーグで活躍することが自分の目標だったし、さらに代表メンバーに入ることも目標でした。だから今年、そのチャンスを与えていただけて、すごくうれしいです。
 
 

■アジアの舞台に挑む

「東アジア競技会の開催地・天津は、生まれ故郷。
中国代表と対戦するのは、すごく楽しみです」

王の持ち味は、ゴール下でのパワープレー。リバウンドや得点にどれだけからめるかだ

――10月9日から始まる東アジア競技会の開催地・天津は、出身地だそうですね。地元で日本代表として戦う訳ですが、複雑な思い、やりづらさはないですか。

いえ、ありません。逆にすごくうれしいです。中国で大会があるだけでもうれしかったのに、開催地が地元の天津だなんて、めったにないチャンスです。両親も「張り切って応援に行くから」と言ってくれています。自分も試合に勝って、みんなで喜んでいる姿を見てもらいたいです。今は、自分に出来ることを一生懸命にやればいいのかなと思っています。

たぶん、バスケのことをよく知らない人からは「もともとは中国人なのに……」と思われるかもしれません。でも、私自身は、バスケットボールを高校、大学、三菱電機、そして代表チームでいろいろ教えてもらい成長してきました。高校1年で来日したときは本当にバスケットの初心者でした。バスケを始めたのは中学1年からですが、レギュラーにも入れず、シュートも我流でした。ですから、バスケットは日本で育ててもらったと言っても過言ではありません。なので、日本代表としてプレーするのは、全然、複雑ではありません。逆に楽しみなんです。中国出身だからというのはあまり気にせずに、バスケットだけに集中していきたいと思います。

両親も変に意識はしていないと思います。私も両親も、「日本代表であること」を誇りに感じています。

――中国代表との対戦は、特別に意識したりしますか。6月のヨーロッパ遠征では、すでに中国代表チームと戦っていますが。(※東アジア競技大会の日本vs中国戦は、10月12日、20:00~)

相手はアジア・チャンピオンです。対戦するのは、すごく楽しみです。6月にリトアニアで中国と対戦したとき、相手はベストメンバーではなかったですが、マッチアップしたのは、WNBAでもプレーしていたチェン・ナン選手でした。そんな選手と対戦できると思うだけですごくワクワクして、“やりづらい”とかは全く思いませんでした。もうプレーすることだけに集中してゲームを楽しんでいました。

――WNBAでのプレー歴もある中国代表のエースセンター、チェン・ナン選手とマッチアップした感想は?

本当にうれしかったですし、すごく強かったです。中国チームは困ったらチェン・ナン選手にボールを集めてインサイドで勝負をしてきました。彼女を守るために、私だけでは守り切れないので、大神(雄子)さんや吉田(亜沙美)さんがトラップにきてくれて、相手のミスを誘えたので助かりました。それでも、中国にやられてしまうシーンも多くあったので、次の対戦ではしっかり対応したいです。

――中国チームの選手と何か話す機会はありましたか。

はい。最初、中国のメンバーは私が中国出身だとは全く思っていなかったようで、プールで一緒になったときに思い切って話しかけてみました。すると「なんで日本でプレーしているの?」と質問され「高校から留学している」と話したら、友達になることができました。それからは試合中でも試合後でも話が出来るようになりました。大会が終わるときに中国のメンバーからは「頑張ってね」と言ってもらえたので、本当にうれしかったです。

 

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