U16アジア選手権3位――ヘッドコーチインタビュー [U-16]

井手口 孝U16男子代表ヘッドコーチ / 福岡第一高監督

「若い世代から韓国や台湾に勝って、“世界に出る”意識をつけていきたい」

アジア選手権で銅メダルを獲得したU16代表。来年、アラブ首長国連邦で開催されるU17世界選手権の切符を獲得した。2大会連続で3位となり、世界選手権に出場することは快挙である。井手口孝ヘッドコーチに強化方針と今大会の戦いぶり、今後の強化について話を聞いた。

インタビュー・文/小永吉陽子  写真提供/日本バスケットボール協会

帰国後の成田空港にて。メダルを胸に、選手、スタッフチーム全員での記念写真(写真/小永吉陽子)


FIBAアジアU16男子選手権3位――井手口 孝ヘッドコーチインタビュー
「若い世代から韓国や台湾に勝って
“世界に出る”意識をつけていきたい」

「U-16代表、初の世界選手権の切符を獲得」――うれしいビッグニュースに、バスケットボール界が沸いた。
2次リーグではフィリピンに一敗を喫したものの、大会中に課題の修正を図り、
準々決勝で韓国との激戦を制し、3位決定戦ではチャイニーズ・タイペイ(台湾)に快勝しての銅メダル獲得だ。
全カテゴリー含めて、日本の男子が自力で世界選手権の切符を獲得したのは、
1998年、U-18アジア選手権(当時はアジアジュニア選手権)で3位になって以来の快挙である。
ディフェンスで粘り、リバウンドで負けず、全員がタフに戦ったチーム作りの成功が、世界の切符をもぎとった要因だ。
井手口孝ヘッドコーチ(福岡第一高)に強化と指導方針、大会の戦いぶり、今後の強化についての話を聞いた。

◆FIBAアジアU-16男子選手権試合結果、順位表
◆FIBAアジアU16男子選手権 特設サイト(日本協会)

【大会順位】 
優勝/中国(3大会連続3回目)
2位/フィリピン
3位/日本
4位/チャイニーズ・タイペイ
5位/韓国
6位/イラン
7位/カザフスタン
8位/バーレーン
※16チーム参加。上位3ヵ国が来年UAEで開催されるU17世界選手権に出場

「世界一のマナー」で結束した大会

「日に日にたくましく成長していった選手たち。
U-16とU-18世代の合同強化の成果が出た大会」

一人一人が役割を果たしたU16代表。結束力を一番に求めてチーム作りを心掛けた井手口孝ヘッドコーチ

――すべての戦いが終わっての感想、手応えを聞かせてください。

選手たちは日に日にたくましくなっていきました。普通、国際大会だと、病気の選手が出てダメになることがあるのですが、試合を重ねるごとに精神面が強くなっていきました。選手たちの頑張りが一番であり、それを支えるスタッフの頑張りや、励ましがあるチームでした。日本の男子もアジアで十分に戦えます。U-16のスタッフに何年か関わらせてもらってそう感じました。

――大会をタフに乗り切るチーム作りとはどのように行ったのですか。

この大会は現地(イラン・テヘラン)に行ってみないとわからない、情報がない中での大会だったので、手探りの部分がありました。テヘランに入ってすぐにイランと練習ゲームをやれたのが良かったですね。負けたけど内容が良かったんです。また大会初日に試合がなくて、インドとヨルダンの試合を見て、選手もコーチ陣もある程度のイメージができ、中東の戦いについて計算ができて試合に臨むことができたのが良かったです。

また、タフに戦ったという意味では、食事についても特別に用意しないで現地のものを食べさせましたが、みんな大丈夫でしたね。これはドイツ・チェコ遠征(2013年1月)でもそうだったんですが、たくましく何でも食べていましたよ。

あと良かった点は、FIBAアジアや現地の方、アジア各国の人たちが『日本のマナーは世界一』と言ってくれて応援してくれたことです。高校生の選抜チームだとだらしなくなりがちだけど、試合に臨む姿勢やコート内外での取り組み方についてお褒めの言葉をいただきました。マナーの良さや真面目に取り組むチーム作りにおいては、佐藤先生(佐藤久夫、明成高、U18ヘッドコーチ)をトップとしたU-18・U-16合同委員会での一貫したチーム作りの方向性が出たと思います。

――昨年、モンゴルで開催されたU-18アジア選手権でも、「ひたむきな取り組みと大会中の成長はアジアナンバーワン」だと、FIBAアジア関係者は口々に言ってましたし、そうしたインタビュー記事も掲載されました。

そうなんです。U-16、U-18代表がこれまでやってきた大きな成果の現れが、今大会の結果だと思います。それに、前回の富樫ヘッドコーチ(富樫英樹、本丸中、前U-16代表ヘッドコーチ)のチームもアジアで3位なんです。ですからチーム作りは継承されていると思います。僕自身も数年前からU16やU18代表のスタッフとして経験させてもらったので、中国や韓国というのはこんなもんだな、とわかって大会に入れたのがやりやすい面でした。

※今大会よりU-17世界選手権の出場枠が12→16へと拡大。そのためアジア枠が3となり、今大会よりアジア3位までが出場権を獲得できることになった。前回までアジアは2枠だった。
 
 

韓国とチャイニーズ・タイペイに勝利した決勝トーナメントの戦い

「中国に勝って優勝するのが目標だった。だから
世界選手権に出られるのはうれしいが、3位は悔しさもある」

日本はディフェンスを武器に、牧の得点、八村のリバウンドを中心に戦った

――日本のチーム作りにおいては、何を軸としてチーム作りを行ったのですか。

牧(隼利、福岡大附大濠高1年、187㎝)が点取り屋で、八村(塁、明成高1年、197㎝)がリバウンドの軸となって頑張ってくれました。あとは粘り強いチームディフェンスですね。ディフェンスではガードの林(祐太郎、幕張総合高1年、180㎝)と武藤(海斗、福岡第一高1年、174㎝)を中心にプレッシャーかけて、ほとんどマンツーマンで通しましたが、崩れませんでしたね。初戦だけは怖かったのでゾーンプレスをしたけれど、2戦目のインド戦からは少しゾーンを入れるくらいで、あとはほとんどマンツーマンでした。韓国戦(準々決勝)もタイペイ(チャイニーズ・タイペイ、3位決定戦)戦もマンツーマンでした。

――大会のポイントとなったのは、2次リーグ2試合目のフィリピンに負けたあと。ここから修正して立て直したことで、決勝ラウンドにつながったと感じます。

それが、決勝のフィリピン対中国戦を見ていたら、フィリピンがめちゃめちゃ強くてビックリしたんですよ。小さいのに強い。2次ラウンドまでのフィリピンというのはたいしたことがないように見えたんです。確かにフィリピンには、ボックスワンとかトライアングルツーとか、特殊なディフェンスをされて負けたのですが、八村と牧が攻められず、ディフェンスも我慢できなくなってやられてしまったわけです。前半10点くらいリードされて3Qで取り返そうとプレスをして逆に失敗してしまったんです。そのときに私自身がフィリピンの強さに気付けなかったんですね。次の日の練習では「だらしない」と叱りましたから。だから、フィリピン戦で負けたあとは気合いが一層入りましたね。

2次リーグで手痛い敗戦をした場合、決勝トーナメントの対戦相手を考えて点差を操作したり、わざと負けたりする国があるけれど、日本はそういうことを考えずに、次のタイペイ戦では魂のディナイと、魂のボールアタックディフェンスをやろうと臨みました。その結果、チームがいいムードになってきたんですよ。それが韓国戦(準々決勝)でも続きました。

中国戦(準決勝、平均198.58㎝、最長身208㎝)は出足でやられて失敗したけれど、2Qからは互角にやれました。最後はお互いが控えの戦いになったけれど、20点差のままでした。中国には2メートル台が6人いましたが、何回かやれば一回くらい勝てるのでは、という手応えも見えました。だから3決のタイペイ戦は迫られましたけれど、負けることはないな、と安心して采配ができる試合でした。

この大会に行くときに「中国に勝って優勝するぞ」と臨んだわけです。だから結果的に3位でも残念かなという感じなんです。もちろん世界選手権に出られるのは素晴らしいことなんですけれど、この世代ではアジアの決勝進出も望めると思います。

――優勝するつもりで臨んだのは頼もしいかぎりです。一方で、どのカテゴリーもこれまで“韓国”が壁になっていました。準々決勝・韓国戦を制したことが大会の大一番。韓国戦勝利の要因は何だったのでしょうか。

実際は、恐れるに足りないというか、韓国もタイペイもそんなに力はないな、中国もそんなに力がないな、というのが感想でした。それは僕自身が前回も中国や韓国を見ているからだと思うんですね。映像を見ながら「戦えないことはないな」とスタッフたちと分析しました。

要するに、今までは「中国には勝てない」「韓国は苦手だ」と決めつけて、男子はどのカテゴリーでも臨んでいたのかもしれません。今回は中国に勝とうと臨んでいたのだから、韓国やタイペイに負けることはありえないんです。だからフィリピンに負けたときに叱ったんです。フィリピンに負けてからは今まで以上に「絶対に負けない」という気持ちで臨みました。そのあとの韓国戦は本当に素晴らしかったです。逆転されたけど、ディフェンスが最後まで崩れなかった。4Qは9点に抑える戦いができましたから。

韓国戦の時は日韓戦の大切さを選手たちに知ってもらうために、モチベーションビデオを分析スタッフに作ってもらいました。要は、アジアでは韓国とタイペイに勝たないと世界に出られないわけです。中国にだってやっている内容は負けてはいません。そういう思いをこの世代から植えつけたいのです。

――韓国戦で八村選手がリバウンド25本、平岩選手(玄、土浦日大高1年、198㎝)がリバウンド13本。今まで日本の男子はインサイドで勝負できないことが多かったですが、このチームはリバウンドでも張り合えました。インサイドの勝負についての評価は?

インサイドに関しては、今回のメンバーよりも2年前の杉浦佑成(福岡大附属大濠高3年、194㎝)のほうが身体は強かったと思います。ただ、今回は八村と平岩という195㎝超える選手が2人いて、ゴール下でよく戦ってくれました。八村はリーチが長く、高校で基礎をしっかり教わっています。背も伸びているし、ダンクも軽々やります。平岩もたくさん経験を積んで、これから伸びていくでしょう。日本の高校生は国内でもセネガル人や留学生と試合をしているじゃないですか。そういう意味では、海外の選手と戦い慣れたのかもしれません。留学生がいても勝てない時代になってきていますから。高さがないから負けたというのは言い訳だと思っています。そんなことはわかりきって大会に臨んでいるのですから。

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