外国人指揮官 × 日本のバスケットボール<1> [NBL]

ドナルド・ベック <前編> トヨタ自動車アルバルク東京

「バスケットは全員が力をあわせて成し遂げるスポーツ。練習と努力こそが必要」

10チームが外国人ヘッドコーチを招聘しているNBL。様々な国やカテゴリーで経験のある指揮官の哲学は、日本に様々な影響をもたらすだろう。NBL外国人指揮官のフィロソフィーを紹介する第一弾は、トヨタ自動車のドナルド・ベック。<前編>では、勝利を目指すチーム作りのモットーと、4年目となるトヨタでの指導について聞いた。

インタビュー・文/宮地陽子  写真/小永吉陽子

2011-2012シーズン、JBLとオールジャパンの2冠に導き、コーチ・オブ・ザ・イヤーに輝いたドナルド・ベックHC

外国人指揮官×日本のバスケットボール<1>

ドナルド・ベック(トヨタ自動車アルバルク東京 ヘッドコーチ)

「バスケットは全員が力をあわせて成し遂げるスポーツ。
練習と努力こそが必要」

今シーズンのNBLは12チーム中、アイシンと東芝以外の10チームが外国人ヘッドコーチを起用している。ヨーロッパでの経験、アメリカでの経験、国家代表での経験、NCAAでの経験――日本にいては知ることができない国やカテゴリーで指揮を執った哲学は、NBLと日本人選手たちに様々な影響をもたらすだろう。

「外国人ヘッドコーチのフィロソフィーを聞く企画」第一弾は、トヨタ自動車のドナルド・ベックHC。一昨シーズンはリーグとオールジャパンの2冠に導いているベックHC。<前編>では、トヨタ自動車を指導した3シーズンでの経験談と、勝利を目指すチーム作りのフィロソフィーをインタビュー。<後編>では、日本のバスケットボールと選手の将来、そして自身が日本の発展を願って11月より展開するコーチング・クリニックの内容について聞いた。

 
 
◆ドナルド・ベックHCのコーチングセミナー開催
2013年11月5日より、トヨタ府中スポーツセンターにて、
ドナルド・ベックHCによるコーチングセミナーを開催する。
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ヨーロッパでの指導から日本へ

「トヨタでのコーチは、20年以上のコーチ歴の中でも最高の仕事」

ドナルド・ベック/1953年生まれ、60歳、アメリカ出身。愛称は「ドン」

──まず、あなたのコーチ経歴についてお聞きしたいのですけれど、日本に来られる前はNCAAなどアメリカの大学や、その後、ヨーロッパでコーチされていたのですよね。

最初から順に話すと、まず短大のサンタ・バーバラ・シティ・カレッジでコーチを始めた。その後、5年間、NCAAディビジョンⅡのボストンのベントレー・カレッジ、さらにラッガーズに行き、その後1年間、フレズノ・ステイトに行った。ここまでは、ずっとアシスタント・コーチで、フレズノ・ステイトでの最後のシーズンだけは、ヘッドコーチが解雇されたので、共同ヘッドコーチとなった。

──その後にヨーロッパへ渡ったのですよね?

そうだ。まずベルギーに行き、そこで1シーズン過ごした。その後、ドイツには14シーズンいた。そのうち9シーズンはTBBトリアで、5シーズンはオールデンバーグでコーチした。一度ベルギーに戻り、その後、オランダに行った。

──そもそも、なぜベルギーでコーチすることになったのですか?

いい機会だと考えたんだ。

──日本に来て、トヨタ自動車のヘッドコーチになったときは?

それも同じだ。最近の5、6年間は、私のコーチとしての経歴の中で、一番、実績をあげることができた時期だったと思う。

ドイツにいたときにコーチしていたトリアは、言ってみれば予算の低いチームで、そのチームでリーグ決勝戦を2回戦い、ファイナル4にも4回行った。お金がない中で、それだけのことを成し遂げることができたのは、大きなことだった。

そのチームを離れて次に行ったオールデンバーグは、それまでドイツ・リーグで13位より上の成績だったことがなかったチームだった。それが、私がコーチした最初の4年は毎年、上位4~5チーム以内に入った。成功と言っていいと思う。私がオールデンバーグにいた間に、チームはアリーナと練習場を建てた。その前のトリアにいたときも、在任中にチームはアリーナを建てた。

その後、ベルギーに戻ったときには、最初のシーズンに決勝まで行き、コーチ・オブ・ザ・イヤーを受賞した。その後、チームは破産したので、オランドのデン・ボスというチームに行き、オランダ杯を取り、その次のシーズンにも決勝に行った。

日本に来たのは、その後だ。日本に来て、昨シーズンまでの3シーズンではのべ100試合以上に勝利した。私がトヨタに来て以来、すべての大会で準決勝か決勝まで進んでいる。2年前にはJBL優勝し、私もコーチ・オブ・ザ・イヤーをいただいた。このように、最近5、6年は本当に成功を収めることができている。

ハードワークな選手に、ハードワークをこなせる環境。そして、毎年「優勝」というビジョンがあるトヨタ自動車

──日本に来たのはなぜですか?

素晴らしい機会だと思った。ヨーロッパでコーチしていると、ヨーロッパのチームは財政面で常に危うい状況にあり、仕事も安定していない。決勝まで行った直後にベルギーのチームを離れることになったのは、チームが破産したからだ。オランダを離れたのも、実質的には同じような理由からだった。ヨーロッパのリーグは経済的に下降していて、デン・ボスのチームをスポンサーしている会社も経済面で打撃を受けていた。いつも金銭問題を抱えていた。

それだけに、東京にきて、トヨタがスポンサーしているチームをコーチすることができるというのは、私にとって素晴らしい機会だった。それに率直な話、私の20年以上のコーチ歴の中でも、このチームでのコーチングは、色々な面で最高の仕事だと思う。

──最高だと思う理由は?

チームにはっきりしたビジョン、目標がある。毎年優勝を競うという目標だ。素晴らしいサポートをしてもらっている。素晴らしいスタッフにも恵まれ、日本一の練習施設もある。その3つだけを考えても素晴らしい。さらに最も重要なことに、選手たちの質が素晴らしい。性格もよく、ハードワークな選手たちばかりだ。
 
 

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