ウインターカップ2013特集 [高校]

山田 愛(桜花学園高#4)

「なんで泣いているのか、自分でも分かんなかったです(笑)」

ウインターカップ2013で、見事3冠に輝いた桜花学園高(愛知)。優勝を決めた直後、キャプテンの山田愛は一人、泣いていた。どんな思いが胸に去来したのか……。準決勝でのミスのこと、岐阜女子との決勝戦、ヒザのケガから苦しいリハビリの日々を送ってきたこと、そしてガードとして未来へ向けての抱負を山田に聞いた。

取材・文/舟山 緑   写真/一柳英男

優勝を決めて涙する山田愛。そんな彼女の周りにチームメイトが笑顔で集まってきた。#8西山、#6酒井、#7井澗(いたに)

ウインターカップ2013特集:選手インタビュー<1>

山田 愛  (桜花学園高#4)

「終わった瞬間、なんで泣いているのか、
自分でも分かんなかったです(笑)」

ウインターカップ2013で、桜花は女王の座を死守し、3冠を遂げた。
ゲームが終わった瞬間、キャプテンの山田愛は、両手で顔をおおって泣いていた。
右ヒザの靱帯断裂による戦列離脱から1年あまり。
高校生活最後の舞台で見事に復活を果たし、チームを優勝に導いたのはキャプテンの山田だった。
ファイナルのこと、ケガでリハビリに打ち込んだ日々のこと、
そして次のステージであるWリーグへの意気込みなどを聞いた。

■ミスが続いた準決勝&岐阜女子との決勝戦

「準決勝、決勝は、いつもとちょっと違った気持ちでした。
何だか勝手に自分で“重圧”を背負っていたのかもしれません」

山田愛は大会直前にネンザをしてしまい、今大会、万全な調子とはいいがたかった。初戦はプレーせずに、2戦目から1クォーター5分程度を目安にプレーしていた。しかし、準決勝の聖カタリナ戦ではプレータイムが32分と延び、それが脚に負担となって、終盤はボール運びでミスを連発してしまった。勝負強さでは定評のある山田には考えられない、珍しいミスの連続だった。

準決勝の聖カタリナ戦。第4クォーターでプレスからカタリナの猛攻を受け、3点差の辛勝。#10萩尾、#7井澗らがカタリナのシュートをチェック

――準決勝のカタリナ戦では20点のリードを奪っていたのに、第4クォーターで相手のプレスにボールが運べずにターンオーバーを連発してしまいました。なんとか3点差で逃げ切りましたが、あのミスからすぐに立ち直れましたか。

あの試合の後は、本当に落ち込みました。ミーティングではみんなで「気持ちを切り替えよう」と確認しあったけれど、(ホテルの)部屋に戻ると誰とも口をききたくないぐらい、落ち込んじゃいました(苦笑)。いろいろ考えてノートに反省を書いたりもしました。でも、一晩寝たら少し気持ちが楽になっていて、決勝の時間には普通に戻っていました。最後の試合だったし、「楽しまなくちゃ」と思って臨みました。

――試合ではいつもニコニコしながらプレーしている印象があります。しかし、あの準決勝は全く違いましたね。

はい、自分でもビックリでした、本当に(笑)

――副キャプテンの#6酒井彩等(さら)選手が、顔がひきつっているあなたを見て「無理にでも笑いなよ」と言ったそうですが、覚えていますか。

たぶん、その瞬間は「うん」と言ったと思うけど、本当に無理でした(苦笑)。あのゲームの中では切り替えられなかったです。自分でもホントに、自分がわかんなかったというか……。緊張しているんだか何だか……。脚が動かないし、身体も動かなかったし、頭の中も真っ白になってしまって……。あんなこと、今まで一度もなかったから自分でもパニくっていました。あんな姿を高校最後のウインターカップで出しちゃった自分が情けなくって……。それで落ち込んでいました。

――決勝戦の相手は岐阜女子。東海で何度となく戦っている相手でしたが、作戦は?

#5坂田さん(坂田侑紀奈)は三重県の出身なのでジュニアオールスターなどで一緒だったからよく知っていて、#4鐘ヶ江さん(鐘ヶ江さゆり)は若水中の出身だから、ジェイ(酒井彩等)やクク(井澗絢音)がよく分かっていました。

私は、「ゲームはいつもガードで決まってくる」と思っているので、相手ガードの坂田さんをいかに止めて、自分たちのゲームをいかに作っていくかがカギだと思っていました。自分がマッチアップした相手に1対1で負けないことはすごく意識しました。今大会、ディフェンスは自分でも納得していないけれど、坂田選手を10点ぐらいに抑えたいと思っていたので、その仕事はできたと思います。ジェイ(酒井)たちが、「鐘ヶ江選手はメインコートに強いよ」と言っていて、そこも気をつけました。

――後半は、岐阜女子が徹底してセンター#7ロー ヤシン選手にボールを集めてきて、点差を詰められました。ロー選手の28得点は、想定内でしたか。

いえ、井上(眞一)先生からはずっと「止めろ!」と言われていましたが、あの高さがなかなか止められず、そこで点差を詰められました。20点のリードが、3クォーターが終わって10点差、4クォーターには6点差までいったんですよね。でも、焦ってはなかったです。

岐阜女子の187㎝のセンター#7ロー ヤシンの得点をどう止めるかが、1つのカギだった決勝

――準決勝と違って落ち着いていたのですね。

はい。準決勝とは違って、自分のメンタル・コントロールはできていたし、別にパニックにもならなかったから大丈夫だと……。それに、みんながいいところでポンポンとつないでくれたので、そこもよかったです。

――4クォーターの終盤、6点差まで詰められた後に、何本もドライブからのジャンプショットを決めて、相手を突き放しました。すごく攻め気なプレーでした。あそこは自分で決めていこうと?

カタリナ戦は自分の攻め気が足りなかったなという反省があったから。相手がプレスでガーッと向かってきたのに対し、「ゲームを作ろう、作ろう」としてしまって。本当は1対1で行けるのに、パスとかフォーメーションにこだわっていました。残り時間が少なかったのに、みんなが1対1で勝負していなかったんです。オフェンスもディフェンスもそういう攻め気が足りなかったというのが、チーム全体の反省として出たので、決勝の後半もどんどん攻め気で行きました。

――カタリナ戦で脚が動かなくなったのは、いきなりプレータイムが長くなったためだったように思います。決勝でも#9森田(菜奈枝)選手と交代はあったものの、35分と長かったです。そこは大丈夫でしたか。

カタリナ戦はすごくしんどかったけれど、それを乗り越えたから、ちょっとは慣れていました。だから、決勝はそんなにしんどくなかったです。

スピードあるガード、岐阜女子#5坂田をどう抑えるか。ガードの意地がぶつかりあった

――優勝を決めた後、一人、泣いていましたね。コートの上で優勝をかみしめているような……。その涙がとても印象的でした。

「岐阜女のベンチに挨拶に行かなくちゃ」と思ったんですが、ジワッと涙があふれてきて……。なんで泣いているんだか、自分でも分かんなかったです(笑)。きっと、ホッとしたんだと思います。優勝して「うれしい」というよりも、「ホッとした」というのが大きかったです。勝手に一人で泣いていたら、みんなが寄ってきてくれました(笑)

――しばらく涙が止まらない様子でしたね。ケガをして苦しかったことを思い出したのですか。

いえ、それは全然(笑)。ただ、大会を勝ち進むにつれて、準決勝、決勝では、いつもとちょっと違った気持ちでした。何だか勝手に自分で“重圧”を背負っていたのかもしれません。それが終わって「ハアーッ」という感じで、ホッとしたというのが一番かな(笑)
 
 

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