NBLクライマックス [NBL]

田臥勇太リンク栃木ブレックス#0

「責任は自分が背負う。バスケができるのが楽しくて幸せだから」

今季の田臥勇太は、チームの命運を背負う覚悟がコート上に表れている。チームを4シーズンぶりのプレーオフ進出に導いた要因は、踵(かかと)のケガを完治させたリハビリの成果だった。33歳、絶頂期を迎えた田臥勇太が、ケガと向き合った5年間、シレイカバスケへの理解度、プレーオフに向けて、そして、これからの自分のことを本音で語った。

インタビュー・文・写真/小永吉陽子

勝ったり負けたり、転んでも起き上って学び、チームカラーを構築し、成長したシーズン。チーム全員でつかみとった4シーズンぶりのプレーオフ

NBLプレーヤー ロングインタビュー

田臥勇太
(TABUSE, Yuta/173㎝/G/33歳/リンク栃木ブレックス#0)

33歳、ケガを克服して迎える絶頂期
「役割は全部。責任は自分が背負う。
バスケができるのが楽しくて幸せだから」

今季の田臥勇太は、チームの命運を背負う覚悟がコート上に表れている。
自身初となるレギュラーシーズン全54試合に出場し、スピードと視野の広さを生かしたゲームメイクを展開。
平均32.46分出場、15.96点(日本人選手2位)、5.9アシスト(1位)、
2.02スティール(1位)の高い数字をひっさげ、チームを4シーズンぶりのプレーオフ進出に導いた。
その要因となっているのは、踵(かかと)のケガを完治させた地道なリハビリの成果だった。
33歳、絶頂期を迎えた今、田臥勇太は
「もっとうまくなりたい」「負けたくない」――という一心で
バスケットボールを始めた頃の原点に戻った姿で目の前の試合に挑んでいる。
 
 

■シレイカ体制2年目のチャレンジ

「役割は全部。攻めることを強く意識したことで
バスケットボールの原点に戻れているような気がします」

1980年10月5日生まれ、33歳。173㎝、PG/コンディション万全の今シーズンはすべての役割を担ってチームをリードする

リトアニア人ヘッドコーチ(以下HC)アンタナス・シレイカ体制となって2年目の今シーズン、リンク栃木ブレックスは確実なる進歩を見せた。

シレイカHCが目指すバスケットボールを一言で表せば「ヨーロッパスタイル」。全員がよく動いてボールをシェアし、ピック&ロールを使いながら、細かいプレーをつないでいく。ディフェンスではマンツーもゾーンも併用してチェンジングをするスタイルだ。「サイズのない日本人の体格面を考えた時にチームディフェンスとボールをシェアするスタイルが合っている」というシレイカHCの持論から、自身が歩んできたヨーロッパスタイルを取り入れている。

コートに立つ全員が噛み合うことで相乗効果が生まれるために「一人一人が状況判断をして、一歩も二歩も先読みすることが求められる」と司令塔の田臥は言う。シレイカバスケ2年目の今シーズンは、ヘッドコーチの考えをベースに、積極性のもとでいい選択、いい判断ができるかがポイントとなっている。

――今シーズンのリンク栃木は田臥選手が全面的に牽引していると言えます。自分自身、チームでの役割をどう捉えていますか。

ゲームの組み立てもそうだし、アシストもそうだし、点を取ることもそうだし、全部が自分の役割という気持ちで臨んでますね。今までは踵(かかと)のケガでフルシーズン戦えなかったのですが、今シーズンはケガも治って体も動いているし、自分の出来がチームの勝敗にかかわってくるので、その責任を背負うことは、このチームに来てから今までで一番感じています。

――全部の役割を果たすキレキレのプレーぶりを見て、思わず能代工高の頃を思い出したくらい体が動いているのですが、自分ではどう感じていますか。

自分でもその感覚はありますね。今、すっごい楽しいですよ。久々にバスケが楽しい(笑)。もちろん、試合に勝ちたいんですけど、それ以上に毎試合に出られることが楽しいし、練習も楽しい。一言で楽しいって言うと簡単なんですけど、勝っても負けても勝負していることが楽しくて、その充実感が幸せですね。

――特に15.6得点と高いアベレージを残した得点力が際立ちます。やはり、川村卓也選手(今季、日本人選手得点1位)が和歌山に移籍したため、得点を取らなくてはという気持ちがあるのでしょうか。

水を得た魚のように、攻めまくる今シーズン。「バスケットボールの原点に戻っている」というほどの楽しさを全身で表している

それもありますけど、タク(川村卓也)がいて優勝した年(2009-2010)のプレーオフでも僕が20点以上取っている試合ありますし、あの年の結果がベースになっていますね。自分自身が攻めることで、チームの結果にも現れていますし、自分が攻めれば次のチャンスが生まれてくるので、まずは攻めることからスタートしています。今は攻めることを強く意識していることで、バスケの原点に戻れている気がしますね。

――そんな上昇した今シーズンのカギとなっているのは、“シレイカバスケ”をチームでやろうとしている姿勢。ヨーロッパスタイルのバスケを2シーズンやってみて、「今までやってきたバスケとはここが違う」という発見はありますか。

たくさんありますね。コーチ(シレイカHC)のバスケはスペースを広げるんじゃなくて、スペースを埋めていく感覚なので、これは今までにやったことのないスタイルでした。スペースを埋めていくことをヨーロッパのバスケとして捉えると、パスをつないだり、みんなで動いて組み立てていくものなので、それはそれで理解できるので、面白いですよ。

単純にピック&ロールを使うにしても、すごく考えるようになりました。周りがどう動いているのか、それによってどんなチャンスが生まれるのか、そのチャンスはシュートなのかパスなのか。自分がオフボールの時はどう合わせてどう動くのか、パスをもらったら次にどういう展開に持っていけるか。常に先の展開を考えながらやることが求められるので、パスのスキルや攻めのバリエーションが増やせているし、技術的なことを磨けている感じがします。コーチが求める速いパスでつなぐことは自分の得意とすることだし、結局は、自分に託された中で選択してシンプルにやればいいと気がついて、そこに向かっている感じですね。

――「シンブルにやる」という答えは、シレイカバスケを理解したからこそ、行きついたものですか?

そうですね。コーチが考えているイメージが、2年目になってより明確にわかるようになったってとこですかね。極端な話、どんな動きをしてもシュートが入ればOKというのもあるし、その割り切り方が去年はわからなかったのが、「これはOKだけど、これは違う」というラインを自分なりに引けるようになったんです。それはコーチが僕のことをすごく信頼してくれて、コミュニケーションを取れるようになったからですね。

――昨年はヘッドコーチが要求する動きがわからないと言っている選手も多くいましたが、今はチーム全体でも理解できている手応えはありますか。

みんなの中で「やるしかない!」という腹のくくり方が去年と違うというのはありますね。コーチがスタイルを変えるわけはないですし、だったら自分たちがこのスタイルに対応して、自分たちでプラスαの色をつけられるか。コーチがやりたいバスケに対してみんなが腹をくくって受け入れて、その中で、それぞれがどう持ち味を生かすか、ということですね。だから終盤に来て、みんなのいい面も出てきてるんですよね。
 
 
◆次ページは「踵(かかと)のケガからの復活について」について
 
 

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