WJBL2011-2012 MVP [WJBL]

吉田亜沙美JXサンフラワーズ

「同じ苦しみや辛さを味わってきた仲間がいると思えた時、自分自身も強くなれました」

Wリーグファイナルは、JXが3勝1敗でトヨタを退け、4年連続15回目の優勝を遂げた。 プレーオフMVPと レギュラーシーズンMVPとのダブル受賞を果たした吉田亜沙美(JX)にファイナルのポイントを振り返ってもらい、今後の展望や目標を聞いた。

文/舟山 緑  写真/小永吉陽子、一柳英男

Wリーグファイナルは、JXが3勝1敗でトヨタを退け、
4年連続15回目の優勝を遂げた。
 皇后杯と合わせると4年連続の2冠獲得となった。
プレーオフMVPに輝いたのは、ガードの吉田亜沙美。
3年ぶり2回目の受賞となり、

レギュラーシーズンMVP(初)とダブル受賞である。
ファイナル第4戦の終盤、最大11点リードを
1点差まで詰め寄られた場面で

再びJXに流れを引き寄せたのは、
吉田の2本の力強いドライブインと

間宮のレイアップをアシストした絶妙なバウンズパスだった。
最後まで集中を切らさなかったJXの中でも、
吉田の“ここぞ”というときの集中力、勝負強さは、
観る者すべてをうならせた。

渡嘉敷来夢、大神雄子という看板選プレイヤーを
ケガで欠くという厳しいチーム状況の中で、

司令塔としてどんな思いで戦ったのか、
ファイナルを振り返ってもらった。

 

レンさん(田中)が声を掛けてくれることで、心に余裕が持てました

ロングインタビューでは、JXと吉田亜沙美の「今」を語ってくれた

――4年連続の2冠達成、おめでとうございます。第4戦で優勝が決まった瞬間、すごい勢いでベンチに駆けていって喜びを爆発させていました。試合終盤は少し足を引きずるほどだったのに。

自分で勝手にプレッシャーや責任を感じていたところがあったので、それが全部吹っ切れた瞬間、もう一気に解放されてホッとしたというか、ウワーッとなってました(笑)。いつも試合前の緊張感がすごくイヤで、前日に眠れなかったりして精神的に弱い部分が出てしまうんですが、それをもう味あわなくてすむのかと思ったら、一気に解放されていました(笑)。

――優勝を決めた第4戦の終盤は、体力的にもかなりきつかったと思います。残り1分33秒でトヨタがタイムアウトをとった際に新原選手と交代してベンチに下がり、その後30秒足らずでコートにまた戻りました。ベンチの絶妙の交代も光りましたが、あそこは準備をしていたのですか。

もう少しで足がつりそうだったし、体力的にも息があがっていたので、あの交代で救われました。ベンチに下がったときに内海さんから「1往復したらもう1回出るぞ」と言われたので、その間に息を整えていました。最後は自分で勝ちをもぎとりたいと思っていたので、もう気持ちだけでプレイしていました。

――今回のファイナルは今までになくケガ人が多く、苦しい戦いでした。特に2戦目途中から大神選手の出場が難しくなって3戦目は大敗(51-82)。第4戦を戦うにあたって、司令塔としてのプレッシャーは大きかったですか。

自分で勝手に責任を感じてたというか、負けたらガードとしてのコントロールが出来ていなかったからと言われるなと思っていました。でも、レンさん(田中)がいるので少し気持ちに余裕が出てきました。試合中、ちょっとでも雰囲気が悪くなるとレンさんが声をかけてくれるので、私たち後輩からしたらすごくホッとできるというか、張りつめていた緊張感がいい緊張感に変わったりして、レンさんの存在は大きかったです。私はレンさんがコートに一緒にいるときのほうが安心できて、余裕が少しずつ出てきました。

あとは新原選手が私と交代で入ったり、ツーガードで出ているときにボール運びを手伝ってくれ、積極的に前を走ってボールを呼んでくれましたし、ディフェンスでも川原選手を止めてくれたので、この2人には助けられました。試合中は責任というのはあまり感じていないんですが、試合前や試合後は、大げさに言えば自分がどうにかなってしまうんじゃないかと思うぐらい責任を感じたり、「どうしよう、イヤだな」というのはありました。

――試合直後の取材でも、「JXを勝手に背負っていて……」という言葉がありました。2戦目の後半でもトヨタを突き放すところで、かなりアグレッシブに攻めていった場面にそれが現れていたように思いますが。

以前はプレッシャーをあまり感じないようにしてたんですが、今回はすごくありました。レンさんもヒザや足首が悪いし、出る時間が長くなれば負担がかかってくる中、ディフェンスでも走り回らなくてはいけないと考えたら、オフェンスで私が点にからんでいかなくてはいけないと思っていました。内海さんからも「もっと積極的に攻めていいよ」と言われていたので、ファイナル2戦目の後半は、勝手に「私がやんなくちゃ」と思っていたからこそ、あのジャンプシュートが入ったと思います。レギュラーシーズンは点を取れるメンバーがいっぱいいるのでどうしてもパスに回っていました。でも、ファイナル2戦目は自分が点数を取らなくてはと思い、攻めていきました。

第4戦のドライブイン2本は、気持ちの強さでねじ込みました

第4戦、力強いドライブで勝負を決定づけた吉田

――3戦目はリバウンドとルーズボールをトヨタに支配されて完敗。相手に主導権を握られてしまい、ディフェンスもオフェンスも立て直しができませんでした。試合後に、「ディフェンスでフワフワ入ってしまった」と言っていましたが、それはどういうことですか。

自分たちも気を抜いていたというか、2戦勝ってちょっと気持ちが緩んだ部分がたぶんあったと思います。それがディフェンスにも出てしまいました。そこで大差でガツンとやられ、気が引き締められました。「挑戦者」という気持ちを少し忘れかけていたと思うので、あそこで「もう1回」と思いました。4戦目に負けたら(勝負は)ちょっと分からないなと思っていたので、もちろん優勝する覚悟は決めていたけれど、4戦目を落としたら向こうに勢いがいってしまうと思ったので、絶対に4戦目で決めたいと私自身思っていました。あとでレンさん(田中)や寺田に聞いたとき、「自分もそう思っていた」と言っていました。その気持ちは1つだったかなと思います。

――大差で負けて中1日あいての4戦目。負けた翌日の練習はすごく気合いが入ったと聞きましたが。

3戦目はボックスアウトもリバウンドも負けていたので、試合後に内海さんからも「最初のリバウンドが取れなかったから、後半もリバウンドが向こうにいってしまった」と言われました。なので、次の日にボックスアウトの練習をしたんです。そのときもボックスアウトに対してまだ気持ちが甘かった選手が何人かいて、その練習が終わったときにレンさん(田中)が「昨日、負けているんだからね。リバウンドで負けているんだよ。明日負けたらうちは不利なんだから、もうちょっと集中して練習しよう!」と、ビシッと言ってくれました。それでみんなの気持ちが引き締められたところがあります。

――4戦目は、序盤からリンバウンドとルーズボールへの強い気持ちが表れた試合になりましたね。

4戦目のゲーム前のミーティングで、内海さんから「今日はリバウンドとルーズボール、それだけでいい」、あとはディフェンスのルールの指示もありましたが、「この2つがあれば必ずうちの流れがくるから」と言われたので、スタートの5人が「まずはリバウンドだ」と思って臨みましたし、それが間宮や木林に伝わって思い切りできたんだと思います。この2人は、リバウンドが獲れれば自分のオフェンス・リズムも作れてくる選手なので、そこは大きかったです。3戦目の前半は、センターの間宮になかなかボールが入らない時間帯がありました。間宮も正面で面をとっているのに、ボールがウイングに渡らないから自分もパスがもらえないフラストレーションがあったと思います。それが4戦目で爆発して、リバウンドを自分で獲ってからいいリズムが出てきました。あの日は一人ひとりが最高のプレイで、本当に調子がよかったと思います。

――第3戦ではボールマンへのプレッシャーが厳しく、インサイドも寄りの速い守りのためになかなかボールが入らず、リズムがつかめませんでした。第4戦は、相手の厳しい守りにどう対処していこうと思いましたか。

3戦目は自分がプレッシャーに押し負けていた部分があったので、4戦目は積極的にリングに向かっていこうという気持ちで臨んだ結果、身体を寄せてファウルをもらうプレイが出てきました。あとはボールのつなぎで、いろんな選手が高い位置でパスを受けてくれたので助かった部分もあります。相手のディフェンスが厳しかったので、24秒ギリギリのプレイが多かったのですが、そこでピックプレイで攻めることができたと思います。

――第4戦で勝負を決めたのは、吉田選手の終盤のドライブでした。第4Q、残り4分16秒で1点差に詰め寄られた後、強気のドライブが決まりました。さらにカウントワンスローのリバウンド、田中選手の3ポイントのリバウンドをJXが獲り、そこから再び強気のドライブでフック気味のシュートが決まりました。1点差からどう攻めようと思ったのですか。

前半、久手堅選手が私に左にドライブさせるよう守ってきていて、また森選手がゴール下に下がっていたので、ハーフでスタッフに「どうしたらいいですか」と質問したら、「大きい選手につかれているんだから、ドライブすればファウルがもらえる」と言われました。内海さんも佐藤コーチもトム(ホーバス・コーチ)も同じ答えだったので、クリアな答えがもらえ、気持ちが吹っ切れた部分があります。だから、1点差になったあの場面は「ドライブで行こう」と。最悪、ファウルをもらえればいいと思ったので、思い切りいけました。さらにフリースローを落としたのを木林が拾ってくれて救われ、「ここでもう1回、点につないでいこう」と思ったので、(2本目も)強気で攻めて、最後はねじこめたかなと思います。

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