WJBL2011-2012 新人王 [WJBL]

町田瑠唯富士通レッドウェーブ

ルーキーイヤーは60点。負けず嫌いな19歳が描く司令塔像

札幌山の手高では司令塔として3冠に導き、富士通ではルーキーながらスタメンに抜擢されて飛躍した町田瑠唯。161㎝の司令塔はU19世界選手権の舞台でも、スピードと果敢な攻めを展開してベスト5に選ばれた。19歳の新人王がこの1年を振り返り、将来への司令塔像を描くロングインタビュー。

文・写真/三上 太

身長161㎝での新人王受賞はおそらく史上最小だろう。 少なくともWリーグになってからは最小だ。
第13回Wリーグの新人王、 富士通レッドウェーブ・町田瑠維――
経験がものをいうバスケットボールにおいて、 しかも司令塔ともいうべきポイントガードのポジションで、
10代の選手が結果を残したことは 快挙といっても過言ではない。
そのルーキーイヤーを町田自身はどのように感じ、 そして今後にどのようにつなげようとしているのか。
話を聞くと、この“小さな新人王”、 実に大きなハートと クレバーな頭脳を持っている。

 

スピードと、高校時代からやってきたパスの狙い目は通用する!

スタメンにも抜擢され、新人王に輝いた町田瑠唯

――新人王獲得、おめでとうございます。まずはその感想を聞かせてください。

ありがとうございます。素直に嬉しかったです。自分としてはいただけないと思っていたんです。確かに試合には多く出させていただいたんですけど、そこで自分のプレイをしっかり出せていたかと言うとそうではないなと思っていたので。

――自分のプレイが出せていない? 町田選手としては100点満点で何点くらいの出来だったのですか?

よく聞かれるんですけど…う~ん…60点くらいかな。

――60点? 40点引かれたところはどういうところですか?

課題がたくさん見えたこともありますが、それ以上に新人らしく、失敗を怖れないで挑戦していく姿勢がなかったように思います。シーズンが始まる前から今の自分では通用しないとわかっていたんですけど、その自分のプレイさえも出しきれていなかったと思います。それが一番のマイナス点です。

――新人らしく、挑戦できなかったのはなぜですか?

多くの試合に出させていただいていて、こんなことを言っていいのかどうかわかりませんが、遠慮していたというか…いや遠慮とも少し違いますね、周りの先輩たちに頼り過ぎていたように思うんです。先輩たちがやってくれるだろうと頼りきってしまったところは確かにありました。もちろん自分としてもやってやろうという気持ちはあったんですけど、でもどこかで引いていた部分もあったかなと…今思えばそう感じています。

――具体的にいうとどういうところでそう感じましたか?

たとえばシュートだったら、自分が打つよりも先輩が打った方が確実に入るからパスを回すとか、確率のいい方を取ってしまった。1つのミスが大きなミスにつながってしまうという気持ちがプレイにも影響したように思います。

――そういったとても大きな課題は残りましたが、手応えを感じるところもあったでしょう? 特にパスの面では先輩ガードたちにはないものを持っているように見えました。

そうですね。通用するところも少しはあったと思います。スピードや、高校時代にやってきたパスの狙い目などは実業団でも通用するんだなとわかりました。

しっかりとした自分の考えを持つ新人王、町田瑠唯

――パスの「狙い目」ですか。

まだ1年目なのでチームメイトとの信頼関係はそれほど深くないと思うんです。高校のように3年間ずっと一緒にやっていれば「こう動いたら、ここにパスを出す」といった感じになるんですけど、そういった信頼関係を作るためにまずはチームメイト一人ひとりの得意なプレイを把握して、ディフェンスがこう動いたらこう行くんだなというのは考えて、プレイしていました。ただその「狙い目」がどこだって聞かれると、言葉では表しにくいものです。感覚的なものもあるので…。

――でも見えているわけでしょう? たとえば町田選手が右にドリブルをしていて、左のゴール下で篠原恵選手がディフェンスを振り切ってノーマークになっていたら、そこにパスを出す。そういったシーンも何度か見ました。

それはリーさん(篠原選手)が練習中からそのように動いている姿が頭に入っているからです。それだけじゃなくて、自分が右に進んでいる時点で逆サイドも視野に入れていて、味方を守っているディフェンスが自分のほうを向いていなかったらパスを出しています。つまりディフェンスの状況によってパスを出す感じですよね。たとえ味方が裏を取ってなくても、自分の出したパスで味方が裏を取ることもできますから。パスで誘導してあげるようには心がけていました。

周りの意見を聞きながら、自分の考えを伝えることが来シーズンの課題

チームメイトのプレイを把握してパスを出すことが課題

――しかしそのパスがリーグ終盤になると単純なミス…序盤では見られないようなパスミスになっていました。

リーグの後半戦に入ってから、自分のプレイが吹っ切れなくなっていたんです。今まで普通に出していたパスも、ちょっと見てしまったせいでパスが遅れてカットされたというのはありました。

――なぜ「ちょっと見た」のですか? 疲れですか?

疲れではありません。なんか迷っていたというか…うん、ちょっと迷いがあったんです。

――迷い?

ボールって1つしかないので、1つの場所にしか飛んでいかないんですけど、ここよりも他が空いているんじゃないかと思って、周りを見ていたんです。私は自分の感覚でパスを出しているところもあるんですけど、それをちょっと考えてしまうというか、他の場所が空いているのも見えてしまうことがあって「ここにパスをするよりもあっちのほうが展開ができるかな」というふうに考え始めて、ワンテンポ遅れてしまったんです。

――何かそのように考えるようなきっかけがあったのですか? たとえば町田選手の判断ミスで試合に負けたとか。

別に自分の判断ミスで試合に負けたというわけではないんです。もちろん先輩たちに「今はこっちじゃない」と言われることはありましたけど、それ以上に自分のなかで何か納得のいかないときはビデオを見返すんですね。そうすることで「あぁ、このときはこっちが空いていたんだな」とわかるんです。そこからですね、ちょっと考え始め出したのは。

――客観的に自分のプレイや判断を見つめ直した結果、考えるようになったというわけですね。町田選手は性格的にも考え込むタイプですか?

結構考え込むタイプだと思います。考え込むというか、納得がいかなかったら、自分で解決しようとするタイプと言ったほうがいいかもしれません。人に聞かないで、何でも自分でやろうとしちゃうところがあって、結局、自分ですべてを抱え込んでしまうんです。それがシーズンの終盤に出てきてしまったというところはありますね。

――今後はそれをどう解決するかが課題の1つですね。

割り切って「じゃあ、この場面はこうすればいいんだ」と考えればいいんでしょうけど、やっぱり何か自分のなかで「『ここはこうしなさい』と言われるのはわかるけど、でもやっぱりこっちのほうがよさそうだな」とまた深く自分のなかで考えてしまうと思います。それでも今後は自分の中で秘めておかないで、先輩に話してみようかなと思っています。実は今シーズンの後半戦も自分がちょっと迷い始めたときに三谷(藍)さんに声をかけられて、ちょっと話すことができたんですね。それはよかったと思います。

多くの先輩たちに支えてもらいながら成長したルーキーシーズン

――三谷選手にはどのように声をかけられて、どんな話をしたのですか?

プレイがうまくいかなかったこともあって、練習中も気持ちが落ちていたんだと思うんです。自分ではそういうつもりはなかったんですけど、三谷さんが気付いたみたいで「どうした? 大丈夫?」って言われたのが最初です。セミファイナルが始まる前のころです。

――三谷選手と話したことで気持ち的には吹っ切れたところもありましたか?

ありましたね。吹っ切れたというか、考えていたことを話しただけで気持ちが軽くなったところはありました。三谷さんがしっかりと話を聞いてくれて、しっかりと三谷さんの考えを話してくれたので。

――ポイントガードとしてはそういったことはどんどん表現すべきだと思うのですが…

そうですよね。ただ高校のときもそういう感じでやってきたんですね。まずは周りの意見を聞いて、それを基にして自分はこうしたほうがいいんだろうなと考えてきました。もしその人の言っていることが違っていたら、やったあとに「こうしたほうがいいんじゃない?」って言うようにしていたので、富士通に入ってからもそういった感じのままだったんです。でもトップになればなるほど、やりたいことって一人ひとりが持っていますよね。「今はこっちにパスが欲しかったんだよね」って言われたら、それをどんどん取り入れていく…自分から「ここをこうしてほしい!」ということを高校のときからやっていなかったので、そうせいもあるのかなと思います。

――それは大きな課題です。このまま聞き役に徹するとまた終盤に悩んで、迷って、力を出しきれずに終わります。来シーズン富士通に入ってくる新人は町田選手の高校の後輩ですが、はっきりと「こうしてください!」と言うタイプでしょう?

言いますね(笑)

――どう解決していこうと考えていますか?

それでも周りの考えを聞かないことは絶対にありません。ちゃんと周りの考えを聞いて、その意見を取り入れるんですけど、それプラス、自分の考えもしっかりと伝えるようにしていこうかなと思っています。相手はこうしたいけど、自分はこうしたい、じゃあ、こうしようかとお互いがつながっていくんじゃないかと思うので、そういったコミュニケーションはしっかりと取っていこうと思っています。

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