2012 李相佰盃(日韓学生選抜) [大学]

比江島 慎青山学院大4年(日本学生選抜)

「0点」と「3戦完敗」―― 日本のエースが味わった屈辱からの脱却

日本学生界のエースとして勝負強さを発揮する比江島慎。今年度は日本代表候補にも選出された有望株だ。しかし李相佰盃において、大差での3連敗には悔しさ以上に「屈辱」だと語った。日本のエースは、この敗戦から何を感じ取ったのか──。

文・写真/小永吉陽子

日本学生選抜 比江島 慎インタビュー
(190㎝/SF/青山学院大4年/洛南高)

◆第35回李相佰盃レポート/韓国との実力差を突きつけられた3連敗

1戦目は無得点だったが、2戦目はドライブが通用して23得点。「なぜ隣の国なのに、ずっと勝てないんだろうと思う。やりようはあるはず」(比江島)

 日本学生界を代表するエースだ。大事な試合、それも勝負所になると無類の勝負強さを発揮する。とくに“スイッチ”が入ったときの勝負強い1対1は誰にも止められない。だが――この李相佰盃ではスイッチが入る以前に、力を出し切ることができなかった。一試合目は「0点」。バスケット選手として、はじめて味わう屈辱でもあった。

 5月13日、関東トーナメントで3連覇を達成したとき、日本代表候補に選出直後ということもあり「日本代表で戦うことをどのように考えているか」「海外や日本代表など、実力が上の相手とやりあって成長できる場が欲しくないか」という質問を比江島にぶつけてみた。そのときの本人の答えは「そういうことはあまり考えたことがなかった」という欲のないものだった。

 もちろん、今の比江島は常勝・青山学院大のエースとして、チームを勝利に導くことが最大の役割であり、チームの大型化にともない、3番から2番へとポジションアップするなどの課題を抱えている。しかし個人として見た場合、比江島の持つ勝負強さは学生界では群を抜いている。彼は負けられない試合の勝負所を迎えると「ここが俺の出番だ!」とばかりにスイッチが発動し、試練を楽しむことができる天性の勝負勘を持っている。

 その一方で、インタビューなどで本音を聞けば、上昇志向の言葉をあまり口にすることはない。彼が目指しているところは一体どこにあるのだろうか――と常々感じていた。ゆえに、大学4年生となって日本代表候補に選ばれたからには「現状に満足せずにもっと上のレベルを目指してほしい」――との願いからの質問だった。

 「あまり考えたことがなかった」という回答をもっと突っ込んで聞いてみると、「今回は代表が若返るということなので、選んでもらったからには全力で頑張ろうと思っています。だけど今回選ばれるまでは、まだ大学生だから代表で活躍するのは先のことかと思っていました」という、まだ日の丸の重さを実感できていない現状があった。自分が何でもできてしまう大学まではそれでも通用するかもしれない。だが今大会、同じアジアの同世代から惨敗という結果を叩きつけられても、答えはこれまでと同様なのだろうか――。

 いや、そんなはずはなかった。確かに性格上、ギラギラとした欲は出さないが、この韓国の地で受けた屈辱は、日本学生界の、将来の日の丸エース候補の心を揺るがし、変えようとしている。

できない自分に対し、もっと頑張らなきゃいけないのだと、韓国に完敗して思った

――韓国と戦った感想を聞かせてください。日本は何が出来なくてこんなに差がついたと思いますか。

やっぱり、韓国のほうが実力が上というのはわかっていたけれど、その実力をカバーするための覇気というか、気持ちが足りなかった。ルーズボールやリバウンドとか。相手は高さがあるから空中戦はしかたないのもあるけど、こぼれ球でもやられたし、何もかもが相手のほうが上でした。実力も1対1のうまさも、ひとつひとつのプレイも全部うまかったので……。やっぱり、何もかも相手に負けていたら、この結果は当たり前かなと思います。

――自分の出来はどうでしたか?

いや、もう、自分は全然でした……。1戦目は気持ちがフワフワした軽いまま入っちゃって、2戦目は気持ちを切り替えて自分の持ち味は出せたんですけど(23得点)、今日(3戦目)は完全に体力切れでした。

――1戦目は「0点」でしたが、今まで0点だった試合ってありますか?

たぶん、はじめてです。記憶にないです。

――チームとしてまとまっていない印象でしたが、チームの仕上がり具合いや、チームプレイについてはどのような出来だと感じていますか?

まだ完全なチームになってなかったと思います。逆に聞きたいんですけど、韓国はどうだったんですか? 韓国はどれくらい練習をしてこの大会をやっていたんですか?

――韓国は5月13日までリーグ戦をやっていて、その翌日の月、火で合同練習をして、水曜日はリーグ戦中にアクシデントがあったために、慶煕大と漢陽大の振替試合があったと聞いています。木曜は大学オールスター戦をしていて、金曜から日韓戦というスケジュール。合同練習時間は日本と同じ2、3日ですね。

ですよね。チームとしての練習条件は日本と一緒ですよね。それでこれだけ差があるということは、やっぱり……。そこは言い訳はできない。やっぱり、ノーマークを作るうまさとか、プレイの力強さは普段の大学の試合で染みついているのが、韓国のうまさというか、そこは日本にはないところ。日本は最終的に個人技に頼るというか……。

執拗なマークに対し、どう対応していくかもエースとして乗り越えていくべき壁となる

――正直な気持ちを聞かせてほしいのだけど、比江島選手の場合、大学でプレイしていて悔しいことってあまりないのでは?

そうっすね……。

――日本ではあまり悔しい思いをしたことがない比江島選手としては、今回の3連敗はどう受け止めているのですか?

悔しいという言葉しか出てきません。同じアジア人、というか、韓国は隣の国で人口も日本より少ない相手なのに、A代表でもずっと勝てていない。このことはよく長谷川さん(青山学院大監督)にも言われるんですけど、隣の国なのになんで勝てないのかと。本当にこれだけ差があるというのは悔しいし、3連敗は屈辱です。

――そんな中でも個人的に通用したのはどのプレイですか?

自分の持ち味っていうか、ドライブは通用しました。1戦目は高さにビビッてしまったんですけど、2戦目は慣れたというか、全然問題なかった。韓国くらいだったらという言い方は変ですけど、ここで攻められなかったら上ではやっていけないと思ったし。そこは考えながらやりました。

――上というのは?

日本代表です。今回、選ばれたので。それと、同世代の選手には負けられないという気持ちを持って、2戦目はやりました。

――今回は3連敗しましたが、やり方によっては、韓国に勝てると思いますか?

それはもう、十分です。十分勝てると思います。僕が2年のときも3年のときも一試合は韓国に勝っているし、(李相佰盃の)最終結果は負け越したとしても、やり方しだいでは十分勝てると思っています。個人個人が全力を出すようになれば、絶対に勝てると思います。

――でも、その常に全力を出すというのは、日本にいると忘れてしまう。現状、青学だったら日本では競る試合は限られています。日本で今回味わった「悔しい」気持ちを持ち続けているのは難しいことではないですか?

そうですね。難しいかもしれません。刺激しあえる相手がいないとダメですよね。

――比江島選手はファイナルとか逆境になると強い。追い込まれるとスイッチが入って本領を発揮する。今回のように、日本より強い相手とやる機会があれば常にスイッチが入ると思うのですが、日本の大学界にはそういう相手はなかなかいない。そこは自分ではどう感じていますか?

それは、確かにあると思います。環境が違えば、自分はもっとうまくなるのかなと、考えたことはあります。

――関東トーナメントが終わったあとに、「比江島選手は大学だと出来てしまうから、実力が自分より上の海外と対戦したり、代表入りして成長できる場が欲しくないですか?」と質問しましたが、そのことについては「あまり考えたことがなかった」という答えでした。同じ質問を今ここでもしますが、今でもあのときと同じ答えですか?

いや、違います。成長したい気持ちはあります。こういう試合をやって、できない自分がいるともっと頑張らなくっちゃとは思います。前よりかはそういう気持ちは出てきました。出てきたというか、次にやるときは韓国を倒したい。僕たちの代で、代表でも韓国に勝てるようになりたい。今からそういうふうに思うのは遅い……かもしれませんが、自分がもっとやらなきゃいけないと思っています。本当にそう思います。