ドイツリーグ挑戦インタビュー [海外]

石崎 巧BVケムニッツ99 (ドイツ・ブンデスリーグ2部)

ドイツで学んだものを、日本に還元したい思いは常にあります

2011-2012シーズン、ドイツ・ブンデスリーグ2部リーグ、BVケムニッツ99 でプレーした石崎巧。主力のPGとして、チームをプレーオフに導く活躍を見せた。ドイツで体感した身体接触プレー、コミュニケーション能力など、海外挑戦で得た「今後の日本人選手に必要なもの」を語る。

文/松原貴実  写真/小永吉陽子

石崎 巧

ドイツリーグで得たこと、日本に伝えたいもの――

昨シーズン、ドイツのBVケムニッツ99(ブンデスリーガ2部チーム)でプレーし、平均13.7得点をマークした石崎巧。プレーオフ進出にも大きく貢献したその活躍はドイツのバスケットボール専門誌にも取り上げられた。その中でSCHREIERヘッドコーチは「イシは積極的に学ぶ非常に賢いプレーヤー。今のチームの財産だ」という最高の賛辞を贈っている。バスケット選手としてさらなる成長を求めて単身海を渡った石崎がドイツでのシーズンを経験して得たもの、感じたものは何だったのか。そして、それは今後の彼をどう変えていくのか。今年日本代表チームの副キャプテンにも任命された石崎がチームの中にどんな新しい風を吹き込んでくれるかも大きな楽しみだ。
 

目標は『日本がアジアで勝ち抜いていくために必要な選手としてステップアップすること』
そのためには、今いる場所よりレベルアップしたい思いがある

 
――まずは昨シーズンプレーしたドイツ・ブンデスリーガプロA2部リーグと所属チームであるBVケムニッツ99について教えてください。

ドイツの2部リーグは全部で15チームあって、各チームがホームとアウェーで2試合ずつ戦います。つまりレギュラーシーズンは28試合ということですね。基本的にゲームは週1回ですが、たまぁにダブルヘッダーの週もあります。でも、それも続けてではなく、金曜と日曜とか、水曜に行われた時もありました。そのレギュラーシーズンの上位6位までがプレーオフに出場することができます。僕が所属するケムニッツはレギュラーシーズンを3位で終え、それも勝ち点は確か2位と同じで、プレーオフに進んだんですが、そこで6位のデュッセルドルフに敗れてしまいました。3位と6位といっても力差はほとんどなくて、レギュラーシーズンも1勝1敗。今回のプレーオフも接戦が続いただけに(それを落としたのは)本当に悔しく、残念でした。

――シーズン中はドイツ各地でゲームが行われるわけですよね。

そうです。うちはお金がないチームなので、基本的に遠征はバスを使い、いつも日帰りでした。1番遠いデュッセルドルフまでは600kmぐらいあって、バスで6時間から7時間かかるんですよ。試合開始時間も3時だったり、5時だったり、7時だったり、その(ホーム)チームによっていろいろなんですが、3時の試合に間に合うようまだ暗いうちにバスでケムニッツを出て、試合して、終わったらまたバスに乗って帰って来るなんてこともありましたね。

――それはハードですね。コンディションを整えるのも大変だったのではないですか?

最初はやっぱり大変でした。慣れていないことも多かったからアウェーのゲームでは身体がうまく動かなかったり…。でも、それも少しずつ、少しずつ慣れていって、最後の方はアウェーでもわりといいパフォーマンスができるようになったと思います。

――2部リーグで優勝すると1部に上がれるチャンスを与えられるわけですか?

2部の上位2チームは1部の下位2チームと入れ替わります。入替戦はなくて、自動昇格ですね。ただ1部でやるためにはそこでチームを運営する条件がいろいろあるらしく、残念ながらケムニッツはまだその条件をクリアしていない状況です。シーズン中盤にはそういうリリースも出て、チームの人たちともそのことについて話もしました。スタッフによると1部でやるためのブンデスリーガのライセンスを取得するためには最低でも3年はかかるということで、それまではチームが2部で優勝しても1部には上がれないわけです。僕はできたらもっと上を目指したいということを伝えたのですが、その時チームから言われたのは「もし、このシーズンが終わって、君がどこか別の1部のチームでプレーするようになったとしても、ケムニッツが1部に上がった時には戻ってきてほしい」ということでした。

今年度は日本代表の副キャプテンを務める

――ということは、あなたは来シーズン、ケムニッツを出て、さらに上のステージでプレーする可能性もあるということですか?

その可能性はないとは言えません。自分の目標である『日本がアジアで勝ち抜いていくために必要な選手としてステップアップしていく』ためには、今のリーグにいるだけでは不十分だと考えているので。ここでずっと留まっているわけにはいかないなと。これから先のことはエージェントとも相談しています。

――エージェントとはどういう経緯で契約したのですか?

去年、日本代表がドイツ遠征を行った時、現地でいろいろコーディネイトしてくれた人で、以前ブンデスリーガのどこかのチームのマネジャーをしていた経験から1部のすべてのチームとコネクションを持っているということです。移籍などの話になると自分1人の力ではなかなか開拓していけないので、エージェントが必要だと考えました。彼に(移籍候補のチームがあれば)「トライアウトを受けに行く必要があるのか?」と聞いたら、昨シーズンの試合ビデオ、成績の記録や資料など材料はそろっているから大丈夫だと、それをもとに交渉するのは自分の仕事だと言われました。ドイツだけに限らず、ベルギーやオランダなどのチームも視野に入れてくれているようです。

――それではケムニッツというチーム、またケムニッツでの生活について少し話を聞かせてください。先ほどの話ではチームはあまりお金持ちではないということでしたが(笑)

ケムニッツはとても小さな町なので大きな企業もなく、(多額のサポートをしてくれる)大きなスポンサーがいないということです。これは2部だから貧乏ということではなく、2部でも大きな町に行くと、みんなが知っているような有名な企業のスポンサーも目にします。さっきも言ったように僕たちの遠征はいつも日帰りのバス移動でしたが、プレーオフを戦ったデュッセルドルフなんかは(ケムニッツで試合がある時は)数日前に現地入りしてコンディションを整えていました。だけど、うちは試合の集客率はとても高いんですよ。町の人たちは本当にバスケットが好きで、楽しみ方もよく知っているんですね。毎試合2000人以上の人が観戦に来てくれたし、町を歩いていても、子どもたちに見つかると「タク~ミ、タク~ミ」と言って集まってきました(笑)

――生活面ではどうでしたか?

貧乏なチームなので給料は安いです。収入は日本のコンビニでバイトするぐらいですかね。ただ、現金は多くないですが、外国人選手には住む家と車を提供してくれます。家は2LDKくらいあって、1人で住むには広すぎて持て余していました(笑)。1日1食はスポンサーであるレストランで無料で食事ができますし、贅沢は望めませんが、生活に困ることはなかったですね。僕は当初貯金を切り崩して生活することも覚悟していたんですが、逆に1年の間でわずかですが貯金もできました。もちろん倹約生活ですよ。食事もほとんど自炊してましたし。

――えっ、食事は自分で作っていたんですか?これまでにも自炊経験は?

全然(笑)。向こうにもアジアンマーケットがあって、米でもしょうゆでもみりんでも味噌でもたいてい何でも手に入るんです。だから、わりと日本と変わらない食事を摂ってました。といっても、最初のうちはただ肉を切って焼くだけとか。向こうの肉はブロックで売っているので、それを毎日いろいろ味付けを変えて料理するんですが、それでもだんだん飽きてきて、最後の方は自分が食べたい料理を作ろうと、ネットでレシピを見てロールキャベツなんかも作りました。考えてみると、向こうでの生活で1番上達したのはバスケットでも言葉でもなくて、料理だったかもしれませんね(笑)

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