渡嘉敷来夢――「完全復活」 [WJBL]

渡嘉敷来夢JXサンフラワーズ #10

「今季はいろんなことが吹っ切れて、潔くプレーしています」

日本のエースが足のケガから完全復活を果たし、コートに戻ってきた。そのポテンシャルの高さは誰もが認めるところ。今シーズンはリハビリ期間に「自分とじっくり向き合って、精神的に強くなれた」と語る。どんな心境の変化があったのか。今季へ懸ける思いを聞いた。

インタビュー・文/舟山 緑  写真/小永吉陽子、一柳英男

渡嘉敷来夢――「完全復活」  JXサンフラワーズ #10
「今季はいろんなことが吹っ切れて、 潔くプレーしています」

レギュラーシーズンを22戦全勝で突っ走るJX。
今季も高さ、スピード、個人技の上手さで頭一つ抜けた強さを見せつけている。
オールジャパンでも5連覇を目指し、優勝候補の筆頭であるのは間違いない。
中でも大きな存在感を放っているのが、足の故障から完全復帰した渡嘉敷来夢だ。
192㎝の長身を生かしたジャンプショットはダイナミックで、
リーチと高さを生かしたディフェンスもまた、対戦相手にとってはやっかいな壁になっている。
今季の渡嘉敷は、思い切りコートを走り、何度もリバウンドに跳び、
しつこく守って、元気な声を飛ばしている。
すべては、足の故障が癒えたからこそできるプレーだ。
足の手術による苦しいリハビリを経てコートに戻ってきた渡嘉敷の全身には今、バスケットができる喜びがあふれている。
「ケガをして本当によかった。精神的に強くなれたから」とキッパリ言い切る彼女に、どんな心境の変化があったのか。
完全復活して今シーズンに懸ける思いを語ってもらった。
 
 

8カ月ぶりの完全復帰

「いつ折れるか、という恐怖心と戦っていた先シーズン。
今季は思い切り走り、思い切り跳ぶことができています」

完全復活を遂げた渡嘉敷来夢。話をする表情もとても明るく前向き

 8カ月ぶりにコートに戻ってきたJXの渡嘉敷来夢。レギュラーシーズン22戦に全試合出場。個人ランキングでは、得点こそ15.23点で7位に位置するが(1位は間宮佑圭の21.45点)、野投成功数は70.16%でダントツの1位。リバウンド10.82本、ブロックショット2.09本もそれぞれ1位と、3部門でトップにランクされた。足の甲の疲労骨折が癒えて、今季は思い切りプレーできているのがきっちりと数字にも出ている。

――レギュラーシーズンで印象に残っているのが、開幕のトヨタ戦です。昨シーズン、ファイナルを戦った両チーム。ヘッドコーチがともに変わり、お互いに新生チームでの戦いでした。8カ月ぶりにコートに戻ってきた感触はどうでしたか。

アップしているときになんだかソクゾクしてきて、「ああ、この感じ、久々だなあ」と感激しました。開幕戦のセレモニーで名前を呼ばれてコートに出て行くときもワクワクで、テンションが上がりました。昨年1月のオールジャパン以降、試合から遠ざかっていましたから。相手は前シーズンのファイナルの相手。いい緊張感もあり、「ああ久々だなー」と思いながら、言葉にできないうれしさに包れていた感じです。コートに戻れたことが本当にうれしかったです。

――試合は先手をとったものの、トヨタの厳しい守りの前にタフなゲームになりました。特にマッチアップしてきた矢野良子選手の、姿勢を低くした守りはすごかったです。相当にきつかったのでは?

矢野さんのボックスアウトはすごかったです。低く構えて当たって守られてしまい、リバウンドに入りたいところで入れなかったのが悔しかったですね。トヨタの選手はなにげに身体をぶつけてくるのが上手いです。矢野さんと久々にマッチアップして、身体の使い方はさすがだなって感じました。私も練習ではトム(・ホーバス)コーチから「低く、低く」といつも言われています。身長が高い相手にはみんな低く守ってくるので、今季は自分ももっと低い姿勢を取ることで対抗していかなくては、と意識しています。

開幕戦のトヨタとの対決は、ベテラン矢野良子に執拗に守られて苦戦。それでも16得点、6リバウンドをマーク。2戦目は17得点、15リバウンドと仕事を果たした

――あの試合ではファウルがかさみ、第3ピリオドで矢野選手のしつこいディフェンスに対して、つい手をはらったことで4つ目のファウルを取られました。ただし、ダブルファウルの判定。その後、ファウルアウトせずに踏ん張り、勝ち切りました。試合後、「4つやったことで逆に吹っ切れて、何だか楽しくなった」という言葉が印象的でした。

そうなんです。それまでは「攻めなくては」とか「守らなくては」という気持ちでいっぱいいっぱいでしたが、4つ目のファウルで一気に吹っ切れて、「もう、いいっか」と開き直れました(笑)。自分は4つで矢野さんは3つ目。それまで思うようにプレーさせてもらえず、矢野さんの得点を何とか抑えようと必死でしたが、あの瞬間、逆になんだか楽しくなってきたというか(笑)。「相手に点を決められたら、自分も入れ返せばいいんだから」という思いに変わりました。そう思ったら、あとは楽にプレーができました。

――トヨタとの2連戦でもそうでしたが、今季はオフェンス・リバウンドに何度も跳んでゴールをねじ込んでいます。そこが昨シーズンと大きく違いますね。相手との接触プレーも平気ですか。

そうですね。足が完治した分、思い切りプレーできています。足を気にしなくてもいいから迷いがないので「もう1回、もう1回」とリバウンドに跳べるし、相手との接触も嫌じゃなくなりました。昨シーズンは「いつ、疲労骨折の部分が折れてもおかしくない」という状態で、調整しながら試合には出ていましたが、不安要素がいっぱいでした。でも、今季はその恐怖心がなくなりました。それだけに、思い切り走ったり、思い切り跳んだりできます。それが本当にうれしいですね。

――佐藤ヘッドコーチは「渡嘉敷は練習がしっかりやれている分、自信につながっている」と評しています。トムコーチも「今季のタク(渡嘉敷)は大丈夫。練習を重ねることでどんどんよくなっていく」と言っています。取材していても、今はバスケットができる喜びがプレーにも言葉にもあふれているように感じます。

今は練習にフルに参加できるのが、すごくうれしいですね。きついけれど、そのきつさがうれしいというか快感というか(笑)。この何年間で一番バスケットが楽しくやれているし、思い切ってプレーできています。
 

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