Wリーグ プレーオフに懸ける<3> [WJBL]

久手堅笑美トヨタ自動車アンテロープス

「次に目指すのはWリーグの優勝。“挑戦者”として戦います!」

Wリーグのプレーオフはいよいよ4強の対決。注目はオールジャパン初優勝に輝いたトヨタ自動車がどんな戦いを見せるのか。腰のケガから復帰してチームを引っ張るキャプテンに、皇后杯での勝利とともに、転機になったこの4シーズンについて聞いた。

インタビュー・文/舟山 緑  写真/一柳英男

「勝ちたいじゃなく、勝とう」――キャプテン久手堅の言葉のもと、チーム一丸となってオールジャパンを制した

「決勝前のチームの雰囲気がすごく良くて
『いけるかも!』と思っていました」

久手堅笑美(トヨタ自動車アンテロープス #25)

4強が出そろったWリーグのプレーオフ。
オールジャパンにおいて悲願の優勝に輝いたトヨタ自動車の戦いぶりが注目される
1月下旬から再開されたWリーグのプレーオフ・ファーストラウンドでは
JXに再び黒星を喫してしまったが、優勝候補の一角であることに変わりはない。
トヨタにおいて攻守でキーマンになっているのが、司令塔の久手堅笑美だ。
今季は自身初めてという腰のケガによって2カ月以上、戦列を離れていたが、
オールジャパンではそのブランクを感じさせない見事なゲームメイクだった。
初優勝の喜びと勝因、丁海鎰(チョン・ヘイル)氏から後藤敏博ヘッドコーチへの交代、
ベテラン矢野良子の存在、そしてセミファイナルへの抱負を聞いた。

◆関連記事――オールジャパン2013決勝
“ストップ・ザ・JX”を果たしたトヨタ、自主性への脱皮
 
 

オールジャパン初優勝への軌跡

「決勝を前に思ったことは、『何も怖いものはない』ということ。
いい意味で開き直ってリラックスしていました」

オールジャパンでJXを21点差で下したトヨタ自動車。涙、涙の初優勝だった

――オールジャパンの決勝は、立ち上がりに栗原三佳選手の連続3ポイントで波に乗り、JX対策として用意してきたディフェンスが効きましたね。

はい、完璧ではなかったですが、4種類のディフェンスは後藤さん(後藤敏博ヘッドコーチ)が春先から用意してきたもの。「開幕戦では使わないが、オールジャパンの決勝まで行ってこれを使いたい」と言って、シーズン中も練習を重ねて準備をしていました。

――優勝した瞬間、どんな思いがよぎりましたか。

正直、何が何だかわからなかったです。スコアを見ても大差で、それも信じられなかったし。名古屋に戻ってからビデオを見て、冷静になってからも「夢じゃないよね?」と言っていたぐらいです(笑)。

――決勝の日のミーティングでみんなに「楽しくやろう」「勝つバスケットをやろう」と声をかけたそうですが、それは今までと違っていたのですか。

3年前(2010年)に初めてオールジャパンの決勝に出たことで、翌年は自分にプレッシャーをかけてしまい、気持ちが空回りして富士通に敗れました。去年の準決勝(デンソー戦)は、前年に負けているので一人でピリピリして、試合直前までロッカールームから出ることができませんでした。一人で音楽を聴きながら、無理に「集中しよう、集中しよう」としていました。冷静に考えてみると、結局、それが自分を追い詰めていたんだなということに気づきました。

だから今季は春先から「楽しみながら真剣にやろう」と気持ちを切り替えました。ヘッドコーチが後藤さんになってチームの雰囲気もチョンさん(前ヘッドコーチの丁海鎰氏)の時の厳しい雰囲気とはまた全然違ってきたので、「もうちょっと笑顔でやろう」と思って今季は入りました。

――自分を追い詰めていることに気づいたのは、オフの期間でしたか。

そうですね。それと今季の成績を見てもJXは全勝なのに対して、うちは私が出た開幕戦でも2連敗。それを考えたら、逆に「怖いものはないな」と、いい意味で開き直れました。それに、オールジャパンから復帰して試合をやるごとに自分のプレーが出来ている手応えもあり、身体は大丈夫だから、あとは気持ちだけだなと思いました。ミーティングであの言葉が言えたのは、自分が緊張していなかったから。何年か前なら、先輩にそう言われても、結局、緊張していたかもしれませんが、今回は自然と言えました。

――「勝ちたい!」というのと「勝つバスケットをやろう!」というのでは、全く違うように思えます。

自分でも全く違うのかなと思います。ミーティングでどう言葉をかけるか、すごく考えました。今まではキラさん(池田麻美)やリョウさん(矢野良子)にすごく頼っていて、ミーティングでも2人に締めてもらっていました。でも、今回のオールジャパンでは自分の気持ちをみんなに伝えたい思いが強く、準決勝の前に言おうと思っていました。「“決勝へ行きたい”んじゃなくて、“決勝へ行こう!”」と。でも、タイミングを逃したので、副キャプテンのオウ(鈴木一実)だけには「こういう話がしたかったんだ」と言いました。それで決勝進出が決まった時に改めてオウに、「絶対にこの気持ちを話すから」と言って、決勝の日にみんなに伝えたんです。

――本当にいい緊張感で、今までのように変にリキまずにゲームに臨めたということですね。

はい、ゲームをするのがすごく楽しみでした。今までこんなことはなかったです。一人で勝手に自分を追い詰めていましたから。

――変にリキまなかったのは、2カ月半もの間、ケガで離れていたのも関係がありますか。

オールジャパンが始まる前は自分がどこまでプレーできるか、すごく不安が大きかったです。そんな不安を打ち消すために「出来ないのは当たり前」という気持ちもありました。口には出しませんでしたが。「ダメだったら、次がいる。レギュラーシーズンでも後輩たちが頑張ってくれたし、ガードには川原もいるし……」。それに準決勝で“チームが波に乗っている”という雰囲気を何となく感じていたんです、「いけるかも……」と。

――仲間への信頼が、自分を追い込まないということにもつながった訳ですね。

それもあるかもしれません。今までは「ポイントガードとしてチームを引っ張っていかなくてはいけない」というリキ味がすごくあったけれど、今回は「どういう試合になるんだろう」という楽しみのほうがすごく大きかったです。だから、すごくリラックスして臨めました。ゲーム直前に同期のマネジャーに「こんなにも緊張しないって気持ちがいいね」と話したぐらい(笑)。「もう、何も怖くないんだけれど(笑)」と言っていました。

――すごい心境ですね。そんな時は想像もできないパワーが出るのでは?

最初に栗原が流れを作ってくれたというのもありますが、あの決勝はずっと冷静でいられました。JXに点差を詰められたけれど、“取られても取り返す”という展開ができ、それがすごく大きかったです。

――決勝戦は、栗原選手の活躍で一気にチームがリズムに乗りましたね。

はい、新人のソウ(栗原三佳)の3ポイントが連続して決まり、波に乗れました。ソウは、9月のJXとの開幕戦で打っても打ってもシュートが入らなかったのが、すごく悔しかったと思います。春先から主力でやってきて、すごく調子がよかったのに、いざ開幕戦を迎えたら、入らない。自分でも納得がいかなかったと思います。でも、あの大舞台で出足から思いっ切り打てたのは、本当にすごいなと思いました。
 

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