2013年9月開幕!
「NBL」の全貌と未来への展望<後編>――審判の向上・選手獲得法・戦力格差問題

インタビュー・文・写真/小永吉陽子

初年度における一試合平均の集客目標は、企業チームは2,000人、プロチームは2,500人

山谷拓志インタビュー (新リーグ運営本部副本部長 兼 COO)
2013年9月開幕!
「NBL」の全貌と未来への展望
 <後編>
 
 
◆インタビュー前編「NBLの使命・概要・集客」について
 
 
初年度の重点施策は「審判の向上と集客」

 ゲーム内容の充実を図ることで、商品価値を高める

審判に「NBL所属」のカテゴリーとを設け、質の向上を目指す。写真は2012-13 JBLファイナルを担当したレフェリー。左より小澤勤、平原勇次、片寄達

――NBLが重点を置いて強化する「審判の改革と集客」について、具体的な改革案をお聞かせください。

これまでJBLでは所属審判がいませんでした。要するに、他連盟の審判員をお借りしていた状況です。今後はNBL所属というカテゴリーを設け、NBLを中心に活動いただく審判を置きます。また審判を評価・育成したり、チームからの異議申し立てを受ける専門のディレクターを雇用します。

育成を含めて、審判の質を高める目的としては、判定の基準を定めることはもちろんですが、選手を気持ちよくプレーさせ、能力を最大限発揮させることにあります。選手は一定の基準の中でプレーをしなければなりません。その基準を知ることでいいパフォーマンスを出せるようになります。ディフェンスを躊躇したり、曖昧な笛に悩んで思い切りプレーできないのであれば、選手本来の能力発揮を阻害することになる。コーチだって審判に対して矛先がいくのは無駄なエネルギーです。そのために、チームと審判の間に立って問題解決する人を立てなければなりません。専門ディレクターがその役割を担います。

集客施策については、テレビ放映をするとか、ガイドブックを作るとかそういうことも必要ですが、それよりも各チームがフランチャイズの中で365日、汗水たらしてポスターを貼ったり、イベントをやったり、地元に根付く活動をすることからスタートしなければならないんです。そこで集客ができるようになってからテレビに取り上げられたり、新聞に取り上げられたりすれば、地道な活動に対してレバレッジ(てこの原理)が効いてくると思うんです。

――選手獲得について。これまでJBLが行っていたように自由市場で選手を獲得する理由、ドラフトを行わない理由は。

選手獲得については、ファンの皆さんが一番懸念されている点だと思います。新規参入チームが果たしてやっていけるのかと。NBLとしてはいまのところ選手の分配を行うドラフト制度は設けません。自由市場の中で選手を獲得していくことが前提になります。イメージとしては野球よりもサッカーに近い形になります。

自由競争になれば、資金があるチームが有利になってくることになりますが、逆に言えば、自らの努力次第で選手を獲得できることにもなります。今回ドラフト制度を設けない理由は、まだ実態としてチーム間の経営格差がある中で、強制的に選手を分配するルールが果たして選手にとってどうなのか。経営格差がある中で自分が行きたくないチームに分配されるのは現状では望ましくないだろうと考えました。いずれのチームも経営規模が安定した時点で、ドラフト制度の導入について検討すればよいと思います。
 
 
当面は避けられない戦力格差の課題
ベンチ入り12名枠によって“選手の流動化”が起こることを期待
大学生についてはNBL入りを希望する選手をリストアップし、情報を共有する

JBL2で優勝した兵庫ストークス。MVPとベスト5を受賞した松崎賢人は、オールジャパンでJBL三菱電機と対戦し「来年度よりNBLに参入することで、全体的にスキルアップしなければならない」と感想を述べている

――現状ではJBLチームと新規参入チームの間にかなりの戦力格差があります。自由市場の中で戦力均衡化していくには時間がかかりますが、それを承知のうえで、新リーグのスタートに各チームが合意したのですか。

チームロスターがJBL時代の16名から15名に減り、試合に出場する人数はFIBAルールにあわせて12名にしているので、そのような環境変化の中で、自由市場であっても選手の流動化が促進することに期待しています。選手強化で大事なことは、選手ができるだけ試合の出場機会を得ること。その意味でチーム数が増えることは有効的でしょう。つまり、あるチームでなかなか出場機会がなかった選手が、移籍によって出場機会を得ることが重要なことで、それが起きるような制度設計のひとつとしてベンチメンバーを12名に限定しました。(※12名のエントリーは毎試合変更可能)

スタート時点では自由市場の中で強弱がついてしまうことになりますが、今は強豪であるトヨタやアイシンもトップリーグ参入当初は一ケタ勝星の時代もあったし、優勝するまでには長い時間がかかっています。時間は必要ですが、どのチームにも努力次第では強いチームを作れる可能性があるのです。

ただリーグとしては、移籍希望の選手がいれば、新規参入チームに優先的に契約交渉権を付与する制度を設けるとか、2007年に北海道が参入するときに行ったように、リーグとしての合同トライアウトを実施するなど、新規参入チームが選手を獲得できる可能性を高める制度を整えていきます。

プロチームであればおよそ2~3億円の売上規模を確保できれば、キャップをフルに使って選手を獲得できる余地が生まれてきますし、選手も安心して入団できると思います。そのような規模のチームが増えて経営の安定度が高まり、将来的にチームの合意が得られれば、ドラフトによって選手を分配していきましょう、ということも出てくるかもしれません。

――今年3月に卒業した関東の大学生に話を聞いたところ、NBLの情報をほとんど知りませんでしたし「新しいリーグは本当に大丈夫なの?」と半信半疑の声を聞きました。チーム数が増えるというのに、声がかからない時点でこれまでのJBLと同様、「NBLには入れない」という発想で止まっています。今年1月のトライアウトを受けた大学4年生もほとんどいません。現実問題として、有望な戦力となる大学生に対してどのようなアクションを起こすのですか?

おっしゃる通りで、大学生にはこれまで情報提供がなされてなかった部分なので、広告や学連を通じて大学生たちにしっかりと情報を提供していくことが大前提だと思っています。

来年、2014年に卒業する大学生に対しては、大学側からNBLやNBDLに入りたい選手をリストアップしてもらうことになりました。どの選手がNBL/NBDL入りを希望していて、その選手にコンタクトを取る方法をリスト化して、全チームが共有する。かつ、どのチームがどの選手に興味があるのかも共有する。それで交渉の結果、どこのチームに入るのか決まったらオープンにする。自由競争でドラフトがないから皆さんが選手に自由にコンタクトをとって交渉するしかないわけですが、大学生にはまず意思表明してもらい、かつコソコソやらずに情報のオープン化を図る。契約条件提示の開始日についてもルールを設けます。

トライアウトの開催は大学の公式戦がある間は無理だと思うので、必然的にインカレやオールジャパン明けになると思います。正直なところ、今年の1月に行われたトライアウトには、大学一部リーグクラスの選手はあまり集まりませんでした。これは告知が知れ渡ってなかったとの反省もありますが、トライアウトは継続していくことに意味があると思っています。トライアウトからNBLに入る選手が出てくることで、可能性が見えてくるからです。強豪大学だからとかではなく、どの選手にも門戸を開きチャレンジできる窓口を作りたいと思います。

――大学生でトップリーグにチャレンジする実力がありながらも、JBLは狭き門ということであきらめた選手たちは、bjリーグでもなく、JBL2でもなく、実業団に進む傾向があります。特に、関東実業団には大学で活躍した選手が多く所属しています。もちろん、働きながらバスケをしたい選手もいますし、現在の経済事情では一概に良し悪しを判断することはできませんが、能力ある選手の多くがトップリーグを目指さずに就職を希望する現状についてはどうお考えですか。

そのような状況はトップリーグとして真摯に受け止めなければなりません。結局はトップリーグに魅力がないということですから。それに現状はトップリーグであっても企業チームを希望する選手が多いのも事実です。選手の親御さんにしてみたら、「プロチームはよくわからない、プロチームは経営が不安定」という心配があるかもしれません。経営を安定化させて、安心して入団できるということを示さないといけません。

実感としては、栃木でトップリーグ(ブレックス)に昇格できるDライズ(JBL2)を作ったとき、JBLを目指したいという欲求を持っている選手が多くいることも感じましたし、実際にJBLに上がった選手もいます。選手の本音はプロになりたいし、トップリーグに行きたいと絶対に思っているはずです。だからこそ、情報がない中で将来を判断するのは非常にもったいないことなので、まずは情報を提供して、的確な判断をしてもらえるようにすることが必要です。
 
 

1 / 3123