鈴木貴美一ヘッドコーチに聞く
「大型化、若手育成、ディフェンスで勝負」

  構成・文/舟 山緑  取材/三上 太・小永吉陽子・舟山緑  写真/小永吉陽子  

キャプテンは昨年に引き続き、桜井良太。和のあるチームを目指す

鈴木貴美一ヘッドコーチに聞く
「大型化、若手育成、ディフェンスで勝負」

5月16日に韓国・仁川で開幕する第3回東アジアバスケットボール選手権。
男子日本代表は、今年度の代表候補19名から12名を選抜してこの東アジア選手権に臨む。
大会を目前に控えてメンバーは1名、入れ替えとなった。
ショーン・ヒンクリー(トヨタ自動車)がケガのために参加できなくなったため、
大学生のセンター永吉佑也(青山学院大4年)が急遽、召集されたのだ。
大会は中国や韓国など7カ国が参加。2つのグループに分かれて予選ラウンドを戦い、
各グループの上位2チームによって決勝トーナメントが争われる。
8月にフィリピン・マニラで開催される「第27回FIBAアジアバスケットボール選手権」への
キップは「5枚」だ。このアジア選手権は、2014年、スペインで開催される
「FIBAバスケットボールワールドカップの予選を兼ねている。
大会を前に、鈴木貴美一ヘッドコーチに、選手選考のこと、チーム構想、そして抱負を聞いた。
(取材日:5月10日)
 
◆第3回東アジア選手権 大会公式サイト(日本バスケットボール協会)

 

昨年から取り組んでいるガードの大型化。

さらに将来性を見据えて、若手メンバーを選考。
能力の高さに加えて、代表としてのメンタリティも重視

 今年度の日本代表は、昨年のアジアカップを戦ったメンバーから数名が入れ替わった。新たに選出されたのは、辻直人(東芝)と鵤誠司(青山学院大2年)の2名で、返り咲いたのは松井啓十郎(トヨタ自動車)と青野文彦(和歌山トライアンズ)だ。鈴木貴美一ヘッドコーチは、松井について「シーズンを通じてアウトサイドのシュートで非常に安定した力を発揮して結果を残した」と評価。辻についても「アウトサイドのシュートと共に、新人ながらパスセンスがある。1番(ポイントガード)として育てたい」と期待を語る。学生の鵤についても「身体があることと、海外のゲームに通用するプレーをもっている。1番としての才能を感じる」と期待を寄せている。

「将来性のある若手を育成しながら勝負できるチームを創る」と鈴木HC

――今年度の代表候補選手の選考でポイントにしたことはどんなことですか。

ここ最近はベテランを選んで、あまりいい成績を残していません。そこで、将来を見据えて、去年から若手を思い切って入れています。その若手が昨年9月のアジアカップ(東京で開催)でも活躍してくれました。アジアカップは、中国のベテラン、韓国とイランのガードとセンターが不参加でしたが、その他の国はA代表で参加してきました。その中で準優勝ができたことは若手の自信にもなりましたし、学生メンバーも控えで出て期待通りの活躍をしてくれました。ビッグマンに関してはベテランに頼らざるをえないですが、昨年から取り組んでいるガードの大型化を軸に、将来性のある若手を選びました。

学生については、とにかく大きくて可能性のある選手を選出しています。上手い選手は他にもいますが、将来、代表として戦っていける可能性のある選手という基準です。また、高校を卒業したばかりの渡邊(雄太)君は、201㎝と身長が伸びてガード的な動きができます。代表では3番をやらせていますが、現時点での戦力ではまだ物足りません。しかし、未来の代表のエースとなる逸材なので、今から慣れさせていくという点から選びました。

――若手を選びつつ、大会で勝っていくのは非常に厳しいことだと思いますが。

厳しいです。でも、やりますよ。

――それが、ヘッドコーチとなったご自身の使命と考えているのですか。

そうです。将来性豊かな若手を選抜して代表として鍛えていきたいというのは、ずっと考えていたことです。前回(2007年)は時間がない中で代表のヘッドコーチを要請されたので、鍛えるまでは出来ませんでした。でも、今はそれが可能です。かつて私は大学で7年間、指導しましたが、学生は4年間で非常に伸びていきます。極端なことを言えば、1日でも変貌する選手がいる。その経験があるからこそ、若い選手を集めて鍛えていきたいのです。

それをやらずして、日本の将来はないと思っています。アジアの状況は、北京オリンピックから中東勢が帰化選手を加入させて強くなっています。そうした中で日本が“伸びしろ”を出していくには、若いメンバーをガンガン鍛えるしかありません。東アジア選手権が終わったら、そうした練習メニューをやる予定でいます。ベテランの青野選手は別メニューにして、若手は鍛えていくつもりです。

昨年からポイントガードにコンバートした比江島。東アジアを相手に経験を積む

――ガードの大型という視点から言えば、ドイツのブンデスリーガ2部でプレーしている石崎巧選手(188㎝)がいます。昨年も代表候補に入り、途中で外れました。今年度は?

石崎君は、現在のビッグガードでは一番の選手だと思っています。昨年、アジアカップを控えて彼をメインガードに考えて選考しましたが、直前に「ドイツに戻る」ことになってしまいました。「今年は代表で出来るか」と打診したところ、ディビジョンⅠ(ブンデスリーガ1部)入りを目指しているので難しいかもしれない」ということでした。なので、今年度は候補から外しました。

――選考基準は、技術があって将来性があるプレーヤーということですか。

そうです。さらに、代表にふさわしいメンタリティをもった選手ということも考慮しました。そうしたメンタリティを持った選手を揃えてチームを作っていくことが、「日本代表の未来」へとつながると思っています。日本代表は厳しい練習をして、かつ代表にふさわしいメンタリティを備えた選手でなくてはならないと考えています。

――勝つことと同じぐらい、“チームの和”を重視しているということですか。

そういうことです。勝利するためにも、チームの和は非常に大事だと思っています。代表選手は常に周りから言動や行動を“見られています”。それは、ヘッドコーチである私自身も同じことです。代表というのは、それだけの覚悟を持って臨まないといけない存在だと思います。
 
 

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