東アジア選手権、国際親善を経て見えた課題
戦う先にマニラの戦場が見えるチームになることが大命題

文・写真/小永吉陽子  写真/細田季里

一戦一戦、経験を積み上げて自分たちの力にしていかなければならない

戦う先にマニラの戦場が見える試合を
することがジョーンズカップの課題

選手たちの戦う先に、マニラの戦場が見えなかった親善試合
本番で力を出すのは、常に目の前のプレーから精度や質を高めていってこそ

チームの軸となる竹内公輔。日本代表でいちばんキャリアのある選手

 フィリピンとの親善試合は日本の3連勝だった。だが、最終戦を除いては、まさしく“親善試合”な雰囲気の中で2試合を消化しただけにすぎなかった。1、2戦目のプレーの強度、精度、スピードでは、ワールドカップをかけた戦場、アジア選手権ではとてもではないが通用しない。

 東アジア選手権後は新しいオフェンスを構築中であることは理解している。司令塔の桜井良太が腰を痛めたことにより、1、2戦目にコートに立たなかった影響もあるだろう。決して手を抜いてやっているわけではないこともわかる。「若手がこういった国際ゲームを積んでいかなければ、駆け引きも覚えられない」という鈴木ヘッドコーチのコメントからも、今はキャリアが不足しているということも読み取れる。

 しかし、だ。アジア選手権の本番まで1ヶ月という中で、しかも日本のファンの前でお披露目する試合であるにもかかわらず、自分たちから盛り上げていく姿勢が見られなかったことはとても残念でならない。確かに東アジア選手権のときよりも連携が取れて沸いたプレーはあったが、全体としては淡々とゲームが進み、東アジア選手権での課題にトライしている様子はなく、その先に熾烈な戦いが待つアジア選手権を彷彿させることはなかった。日本が抱えている課題とは何か。鈴木ヘッドコーチは5月の東アジア選手権の最終試合が終わったときにこう述べていた。

「いちばんの課題は選手たちがものすごくおとなしいこと。真面目なのはこのチームの良さでもあるけれど、試合内容が悪くなると、選手たちが静かになってしまう」

 東アジア選手権では、コートでもベンチでもコミュニケーションが図れず、その姿は日本よりも若い韓国や中国と比較しても明らかな差だった。コンディションがベストではなかったことを差し引いても、同じ条件である韓国や中国と違いがあるのだから、これは根本的に改善しなければ“埋まらない差”であることを認識した者はいただろうか。指揮官みずからが発するこの言葉を聞いて、またか、と感じるしかなかった。

 前回(2011年)のアジア選手権の例をとって振り返ってみたい。史上最低、アジア10位からの脱却を図った日本は、トーマス・ウィスマンヘッドコーチのもとでオールコートのプレッシャーディフェンスを主体に強化に着手した。その成果が現れてアジア選手権前年(2010年)のスタンコビッチカップ(現アジアカップ)では準優勝、アジア競技大会では16年ぶりのベスト4入りを果たして躍進した。目標に掲げていた「アジア諸国からの尊敬を取り戻す」(ウィスマンHC)ことを一つ一つクリアしていく成長が見られた。

 しかし、翌年のアジア選手権。いざ勝負を迎えた日本は、2次リーグ最大の山場、フィリピン戦に痛恨の逆転負け。その敗戦によって、準々決勝では苦手としている韓国と戦う組み合わせとなり、完敗。5-8位決定戦のレバノン戦でも終盤に14点のリードをひっくり返される逆転負けを食らった。最終戦ではチャイニーズ・タイペイには勝利したものの、7位という成績に終わった。

思い切りのいいオフェンス、粘りあるディフェンスで期待される大学4年の田中大貴

 敗因は何だったのか。主力の一人、竹内譲次は「勝ち方を知らないとかそういう問題ではなく、単に実力がないから負けた」と自分たちの力のなさを口にした。2次リーグの中国と準々決勝の韓国には力の差があったとはいえ、チーム力が粗いフィリピン、若返り中だったレバノンには、これまでやってきたオールコートのプレッシャーディフェンスで勝負に持ち込めたはずだ。それなのに日本は「さあ、ここから」という正念場において、ディフェンスの当たりを弱めて引いてしまったのだ。

 勝負の場面で突然崩れてしまうのは自信がないからに他ならない。自信をつけるためには、一試合ごとに経験を積み重ねてチーム間で信頼を築いていくしか方法はない。今回来日したフィリピンはA代表が海外遠征後で調整がつかなかったこともあり、昨季5位のプロチーム「メラルコボルツ」を主体とし、2週間だけ練習を積んで結成されたメンバーだった。ポイントガードは帰化選手だったが、A代表には及ばない格下の相手ならばなおのこと、チームプレーを機能させる練習台にすることで、チーム間の信頼を高めていくチャンスにすべきだった。大舞台のコートに立てば、急にコミュニケーションが図れるようになって、力を出せるわけではない。チームカラーを染み込ませるまで、チームプレーが機能するまでやり込んでこそはじめて、大舞台のコートで発揮されるのだ。

 このチームの中でいちばんのキャリアを持つ竹内公輔は2戦目が終わった時点で「若い選手たちがなぜか硬い。僕も若い時はそうだったけど、日の丸を背負っているプレッシャーがあるのかもしれない。でも、こんな相手にあわせてしまうようなだらしない試合をしてしまったことには危機感がある」と反省しきりだった。

 竹内公輔が危機感を感じていたように、最終日の3戦目はコートに復帰したキャプテンの桜井良太みずからが率先してスピードあるプレーを展開し、ベンチからは後輩たちが声を出して盛り上げようとする姿があった。

「僕も外から見ていて、元気ないなと感じてました。今日はバカになってもいいから声を出して、ディフェンスから自分たちの全部を出そうって、試合前に話し合いました」(桜井)

 1、2戦とは比べ物にならないキレのある動きができた要因は、プレッシャーをかけたディフェンス。選手たちはようやく思い出した。得点のバリエーションが少ない日本にとって、武器となりうるのはディフェンスしかないのだ。
 
 

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