FIBA男子アジア選手権 日本代表:総括
「足りなかった“ボールへの強い執着心”」

取材・文/舟山 緑  取材・写真/小永吉陽子、三上 太

足が止まってしまった日本。勝負どころで攻めあぐねてしまうシーンが多かった

日本代表チーム:全結果

◆予選ラウンド(8月1日/8月2日)

 ●日  本 74 (25-21、16-14、20-18、13-22) 75 カタール
 ○日  本 76 (25-24、16-16、23-13、12-6) 59 ホンコン・チャイナ

◆2次ラウンド(8月5日/8月6日/8月7日)

 ●日  本 71 (14-17、22-29、15-29、20-15) 90 フィリピン
 ●日  本 76 (25-22、16-22、18-17、17-18) 79 チャイニーズ・タイペイ
 ●日  本 56 (13-15、11-15、11-15、21-20) 65 ヨルダン

◆9-12位決定戦(8月9日)

 ○日  本  73 (16-25、13-16、21-13、23-10) 64 イ ン ド

◆9位決定戦(8月10日)

 ○日  本  79 (17-16、21-13、15-9、26-12) 50 ホンコン・チャイナ
 
 
FIBA男子アジア選手権
鈴木貴美一ヘッドコーチ 大会総括インタビュー

「大会で浮き彫りになった課題を、
下の世代から徹底して鍛えていかないと、
日本はますます厳しい状況になっていく」

フィリピン・マニラで激闘を繰り広げたFIBAアジア選手権。
日本は2次ラウンドで勝ち残れず、決勝ラウンドに進めなかった。
優勝したのはイラン。開催国フィリピンの挑戦を退けて、2大会ぶり3回目の優勝を遂げた。
3位には韓国が手堅く入り、これら3カ国が来年、スペインで開催される
「FIBAワールドカップ」へと出場する。
日本は昨年から大型ガードの育成を掲げ、ガード、フォワード陣に若手を選出して成長を期した大会だった。
しかし、結果は9位の惨敗。
ディフェンスから崩壊し、チーム一丸となった姿勢を見せることが出来なかった。
アジアの舞台で上位へ食い込むには何が足りなかったのか、どんなことが課題として残ったのか。
最終戦の直後、限られた時間であったが、大会を総括して鈴木貴美一ヘッドコーチに聞いた。
 
 

9位の惨敗を招いた要因

「ディフェンスやリバウンドで足りなかった“ボールへの強い執着心”。
早い段階から妥協せず、徹底して養っていかなくてはならない」
 

いいディフェンスを見せても、最後にパワーで押し切られたり、セカンドショットを決められてしまった日本。そこでの踏ん張りが今後も大きなカギとなる

――9位に終わった今大会を総括すると?

ここのところ10位~7位の結果ですので、9位はほぼ変わらない成績になります。我々が目標としてきた成績(3位以内)ではなかったので、非常に申し訳なく思っています。ただ、最後のホンコン戦は、ディフェンスから走る自分たちのバスケットは出来ました。シュートは入る・入らないがあるので、ディフェンスでどうやってイニシアチブを取っていくかです。それを選手が分かってくれ、よかったと思います。しかし、あとの試合は全然ダメでした。「ああすればよかった、こうすればよかった」というのは結果論であり、(内容的に)先に進めない試合でした。よかったのは、最終戦だけです。

――自分たちのバスケットが出来なかったのは、対戦相手が日本をスカウティングしてアジャストしてきたからですか、それとも自分たちの問題でしたか。

いえ、相手ではなく、自分たちの問題でした。若いメンバーは乗れば強いのですが、国際試合をあまり経験していない選手たちが落ち込んだ時に修正ができませんでした。初戦のカタール戦で負けたこと(逆転で1点差の惜敗)で、2次ラウンドの試合時間が連日、あまりあかない状態が続き、懸命にプレーしようとしても身体が動かなかった。こうした国際試合では、最初から飛ばしていける(勝てる)ようにならないとダメですね。そこが非常に残念だったところです。

――鈴木ヘッドコーチにとっては6年ぶりのアジア選手権。アジアのレベルをどう受け止めましたか。

10チームぐらいが本当に強いチームになっています。北京オリンピックの時に各国が強化に本腰を入れ、ほとんどの国が帰化選手を入れました。今大会を見ても、チャイニーズ・タイペイは帰化選手が入ったことでアウトサイドが非常に生きていました。力の差がさほどある訳ではありませんが、毎年、どの国も強化をしてきています。日本は今、歯車が狂って相当頑張らないと勝てない状況です。バスケット界が一致団結し、頑張らないと難しいと思います。いがみ合って対立している場合ではありません。

高さとパワーのある相手に、インサイドではなかなか勝負出来ず。#10竹内のプレータイムが長くなり、後半戦は疲れからシュートの精度が落ちてしまった

――大会を通して見えてきた課題点とは?

リバウンドとフィジカルの強さはこれまでも言ってきましたが、もっと単純なこと、“ボールへの強い執着心”が出来ていませんでした。フィジカル面はもともと骨格の問題もありますが、ディフェンスやリバウンドでは、相手の手を叩いてでもボールを獲りにいくという執念です。ディフェンスがこう、オフェンス・システムがこう……」ということではなく、“ボールへの強い執着心”という当たり前のことを、徹底的に妥協せずにやらなくは、日本に勝ち目は絶対にないということです。

――“ボールへの強い執着心”は、代表の強化活動だけでは到底追いつけないと思いますが、どうですか。

そうですね。代表の活動時間は限られていますから、もっと育成の早い段階から意識して取り組まないとダメですね。日本チームは、全体的に激しさが足りません。少し前の世代だと、負けん気の強い選手が数多くいましたが、今はおとなしい選手が多く、それがプレーにも出てしまっています。ボールへの執着心は、トップリーグに入ってから鍛えるのではなく、中・高校時代、大学時代からやっていかないと追いつきません。ハングリーに戦っていく姿勢を身につけていかないとダメですね。勝負は甘くありません。下の世代からそうした基本を積み重ねていかないと、日本はどんどん遅れていってしまいます。

最終のホンコン戦で積極果敢な攻めを見せた最年少の#8渡邊。ディフェンス・リバウンドをもぎとってブレークに走った1本は、気迫にあふれ、爽快だった

――鈴木ヘッドコーチは、ゲームのたびに「気持ちの切り替え」とか「気持ちを全面に出して戦う」ことをたびたび言及してきました。ボールへの執着心も含め、次のメンバー選考ではそうした点を加味する必要があるのでは?

その通りです。上手いとか将来性があるだけではなく、代表として戦うメンタリティーを持っているかどうかも重要になってきます。この最終戦では最年少の渡邊(雄太)君が、身体がないにもかかわらず、ボールをもらったら積極的に攻めてくれ、間に合わなかったけれどリバウンド・チェックにも飛んでいった。そうした向かっていく姿勢を見せてくれました。このチームで一番彼にそれがあるかもしれない。

彼はまだまだ身体が出来ていませんが、球際に強いというか、ボールをもらったら全部攻めていく勢いでした。将来、代表の中心選手になってくれると思います。こういう選手ならば、若くても代表に選んでもいいと私は思います。私たちの現役時代も、「誰それはチャージングを取れない」とか、よく言われました。代表では、そういうことが出来ない(相手に向かっていけない)選手ではダメなのです。改めてそれを感じました。

――今回のメンバーは、代表のメンタリティーの部分が足りなかったということですか。

ライバル国には、相手をぶん殴るぐらいの勢いで戦っている選手がたくさんいました。それに対して日本の選手は優しいというか、いい人なんです。春先よりはだいぶチームで声が出るようになりましたが。口を酸っぱくして言っても、それは性格というのもあるので……。ものの考え方やプレーの質、ディフェンスという部分は成長できるけれど、性格はあまり変えられない。だけど、日本の若い選手に言いたいのは、相手に対して、ボールに対して強い気持ちをもってプレーしていくということです。声を出すとか気持ちを強く持つことは最低限のベースとして、ディフェンスをする、リバウンドを獲りにいくという姿勢。リバウンドは獲りにいく気持ちがなければ獲れないし、ファウルをしてでも守ってやるというようなところですね。そこは徹底してやっていかないと。
 
 

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