2大会ぶり3度目のアジア王者
成熟した組織力で、狙ってつかんだアジアの金メダル

文・写真/小永吉陽子

アジア選手権から探るライバル国事情
イラン、フィリピン、韓国は
いかにして世界への切符をつかんだか――

 ここ数年、アジアの激戦化は進む一方だ。アジアがここまで混沌と化したのは、2007年の徳島大会がきっかけである。アジアの盟主・中国が北京オリンピックの出場権を持っていたことで、中国以外の国にも切符獲得のチャンスが到来し、アジア各国が強化に乗り出したからだ。そして2013年の今大会は、フィリピンやチャイニーズ・タイペイといったこれまで“伏兵”だったチームの躍進と、イランと中国以外の主要国が帰化選手を擁したことで、激戦に拍車がかかった大会になった。その勢いは、王者・中国をも飲み込む凄まじさだった。連続してオリンピックに出場している国でさえも、一歩チーム作りを間違えれば地獄に突き落とされる。さらなるアジアの新時代が到来したといっていいだろう。

 イラン、フィリピン、韓国――アジアからワールドカップの出場権を勝ち取った3チームに共通して言えるのは「ワールドカップに出場する」と宣言して挑んだ覚悟と、勝利するための周到な準備があったことだった。上位3チームの世界への道のりとチーム作りをたどる。


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(※中国、チャイニーズ・タイペイの戦いぶりはこちらの記事を参照)
◆アジア選手権大会結果&ベスト5

 
 
優勝――イラン
成熟した組織力で、狙ってつかんだアジアの金メダル

主力メンバーはここ数年変わらず。大会ベスト5を受賞したPFオシン・サハキアン(左から3番目)のリバウンドとディフェンス、速攻、ムードメーカー的な役割など、堅実にチームを支える姿がチームの底上げを象徴していた

組織的な土台をもとに、若手育成から始まったベシロビッチ体制

 ジョーンズカップで優勝を遂げたとき、キャプテンのサマッド・ニックハ・バハラミ(198㎝、30歳)は「準備」という言葉を盛んに繰り返していた。

「ジョーンズカップはアジアのすべての国にとって弱点と強みを知るために非常に重要な機会。すべてのゲームに勝って満足しているけれど、問題がないわけじゃない。アジア選手権で優勝するために100%準備して、弱点の補強に取り組みたい。僕たちは2011年に武漢で何が起きたか忘れていない。どんなチームでも過小評価をすることはないだろう。チームの誰もが助け合ってプレーするのがイランなんだ」(サマッド・ニックハ・バハラミ)」

 イランは前回、準々決勝でヨルダンにまさかの敗退を喫した悔しさを忘れてはいなかった。当然、ジョーンズカップは通過点に過ぎない。

 準備はアジア選手権の前年から始まっている。昨年のアジアカップ(日本)から新ヘッドコーチ(以下HC)のメミ・ペシロビッチ(メフメット・ペシロビッチ)を招聘。ペシロビッチは2010年の世界選手権で母国スロベニアをベスト8に導き、予選リーグではイランとも対戦している。2007年と2009年にイランをアジア制覇に導いた2人のセルビア人HCが、ヨーロッパ式の組織力を生かす土台を作っていたこともあり、スロベニア人のベシロビッチHCはイランの要請をすんなりと受け入れている。

 最初にベシロビッチHCが手をつけたのは、若手の発掘と育成だった。

 昨年9月のアジアカップ前、8月末にモンゴルで開催されたU18アジア選手権では技術顧問に就任。ヘッドコーチの片腕となってチームを3位に導いてU19世界選手権の切符獲得をアシストすると、U18代表から有望な選手を3人引き抜いて、みずからが采配をふるうアジアカップのメンバーに入れた。高校生3人の起用についてペシロビッチHCは「イランの未来を考えての先行投資。経験こそが選手を伸ばす。しかもただベンチに座らせるだけでなく、育てるには使っていくことだ」と語っている。

 その言葉通り、アジアカップでのイランは高校生を含む経験のない若手を積極的に起用したことで、予選リーグではミスを多発。勝ち上がるのにとても苦労していた。しかし、キャプテンでエースのバハラミ、シューターのハメッド・アファグ(190㎝、30歳)、パワーフォワードのオシン・サハキアン(200㎝、27歳)ら代表のキャリアが長い選手たちが若手のミスをカバーすることで勝ち星を重ね、チーム力を底上げすることに成功。接戦ながら日本との二度の激闘を制してチャンピオンに輝いた。
 
 

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