16年ぶりにワールドカップのチケットを獲得
世代交代と切符獲得――2大使命を果たして世界へ

取材・文・写真/小永吉陽子  取材/朴 康子

16年ぶりにワールドカップ出場を決めた韓国。3決では75-57でチャイニーズ・タイペイを圧倒した

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3位――韓国
世代交代と切符獲得――2大使命を果たして世界へ!

「絶対にワールドカップのチケットを獲る!」と全員が言い切るメンタリティーの強さ

世代交代を迎えた中で、30代のベテラン選手がチームを牽引。キム・ジュソン(右)とイ・スンジュン

「16年」――という長い年月を示す言葉は、韓国にとっては屈辱ながらも、アジア選手権に向けての合言葉となっていた。7月のジョーンズカップで選手たちにアジア選手権の目標を聞くと、誰もが強い決意表明を示した。

「今回は一生懸命ではなく、一度、死んで来よう、死ぬ気でやろうと後輩たちに言っている。絶対にワールドカップのチケットを獲る覚悟です」(チームで唯一、16年前の世界選手権に出ているセンターのキム・ジュソン)

「僕自身、大きな舞台でプレーするために挑戦したいですし、選手全員がワールドカップに出なきゃいけないと思っています。それは来年の(韓国・仁川市で開催する)アジア競技大会までつながっていると思っていますから。世界に出ることが国内のバスケットのブームを起こすチャンスであり、実力向上のチャンスでもあります」(キャプテンのヤン・ドングン)

「僕たちは16年も世界選手権(ワールドカップ)に出ていない。だから今度こそ絶対に出場権を獲る。そのために今は猛練習し、チームを作っているところです」(前回の3位決定戦で3Pシュートを連発してオリンピック最終予選に導いたチョ・ソンミン)

 ここまで選手たちの目標が明確なのは、久しく世界の舞台を踏んでいない危機感からくるもの。そして、KBL(韓国プロリーグ)蔚山モービスを幾度も優勝させ、「万の戦術を持つ」という意味から「만수(マンス)=万数」との異名を持つユ・ジェハクHCのもとで、意思統一されたチーム作りが進められていたからだった。

 過去に韓国がアジア選手権のベスト4から落ちたのは2009年だけ。常にアジアでベスト4を保っていた強豪ながら、近年はワールドカップ(世界選手権)に縁がなかった。オリンピックがかかったアジア予選では2大会連続で3位になって世界最終予選には出場しているものの、97年のアジア選手権で優勝して切符をつかんで以来、ワールドカップからは16年間も遠ざかっていたのだ。
 
 

世代交代と国内での人気復活をかけたマニラでの戦い

若きセンター、キム・ジョンギュに指示をするキャプテンのヤン・ドングン。常にコートの内外でコミュニケーションが図られていた

 韓国は今、世代交代とバスケットボールの人気復活をかけて、過渡期の最中にいる。

 97年にKBLが設立した当時は人気も実力も兼ね備えたスター選手たちが多く、国内でバスケットボールの一大ブームが起きていた。KBLができる前から選手たちの人気が高かったため、アマチュア時代に開催されていた大会「ノング・デチャンチ=バスケットボール大祭典」の名前にひっかけて、「デチャンチ世代」と呼ばれる選手たちの全盛期のピークは、2002年に釜山で開催されたアジア競技大会で優勝したときだろうか。しかし以後、代表においては中東の勢力に押されてしまっている。この2、3年でKBL設立当時のスター選手がすべて引退。国家代表も、KBLも、新しいスターの出現を求めて世代交代の時期を迎えていたのだ。

 そんな中、一昨シーズンには安養KGCが若さとスタミナを武器に、オールコートを走り回る機動力のバスケットで初優勝。停滞していた韓国バスケ界に風穴を開け、新しい時代がやってきたことを予感させた。さらには、毎回アンダーカテゴリーの世界大会(U17、U19)に出続けていることで10代の選手たちが飛躍的に伸び、まさに今の大学界は黄金期を迎えている。8人の大学生を擁して優勝した5月の東アジア選手権での勢いはその最たる例だ。若手のタレントが出てきたこの機を逃してはならぬと一丸になったのが、今大会の韓国だった。

 強化の目はワールドカップ出場にとどまらず、来年に自国で開催するアジア競技大会(仁川市)まで向けられている。その世代交代の象徴となるのがインサイドを任された大学生コンビ、4年生のキム・ジョンギュ(207㎝、慶熙大)と1年生のイ・ジョンヒョン(206㎝、高麗大)だ。5月の東アジア選手権でも優勝の原動力となった2人は、今後10年間、韓国のインサイドを担っていく存在と言われている。

 だが、世代交代のためだけに、大学生にインサイドを任せているわけではない。選びたくてもKBLの選手を選べない事情もあった。221㎝の高さを誇るハ・スンジンは公益による兵役中で運動をすることができず、代表常連のパワーフォワードのオ・セグン(200㎝、26歳)や、ファイターのヤン・ヒジョン(194㎝、29歳)、長身シューターのチェ・ジンス(200㎝、25歳)らはケガでリハビリ中。3、4、5番の有望なフロントラインが欠けるこの困難な1年をなんとか乗り切らなければならなかったのだ。

 そうしたケガ人が多いことから、当初は異例ともいえるガードの選手を6人抜擢。そのうちポイントガードを兼任できるガードは4人。全体的に上背がないことから、40分間、フルコートプレスをするスタイルを打ち出した。

突破力が魅力のガード、キム・ソニョン。中国戦ではイー・ジェンレェンのブロックを避け、速攻からダンクを叩きつけてチームを勢いづけた。「僕たちの人気は自分たちの活躍で復活させる!」と宣言する

 しかし、ジョーンズカップでイランの高さに苦戦し、チャイニーズ・タイペイの帰化選手、クインシー・デイビスにリバウンドを支配されて敗れると、帰国してすぐにメンバーのテコ入れを図る。多すぎて的が絞れなかったポイントガードを一人減らし、ウィークポイントだったフォワードに大学生2人、しかも1、2年生の下級生を抜擢して世代交代の色を濃くしたのだ。これは国内のバスケファンも驚く異例の大抜擢であった。

 さらにジョーンズカップ終了後には、本番まで2週間しかない中で、急遽、外国人選手を4人招集して、弱点である高さ対策に絞った合宿を進めている。これは、中国とイランといった高さある国と1次ラウンドで対戦するためには避けては通れない強化で、コーチ陣がジョーンズカップ中に要求して、急遽、協会に手配してもらったものだという。「ジョーンズカップで私たちが高さに対して意識が甘いことがわかった。できるかぎりの準備をしていきたい。順位にはこだわっていないが、とにかくワールドカップのチケットを取る」とユ・ジェハクHCの決意もさらに強固なものとなったのだ。

 こう書くと、アジア選手権に向けては準備万端に映るが、韓国はここ数年の海外での対外試合がジョーンズカップだけで、「協会にマッチメイクする外交能力がない」と現場のコーチングスタッフたちは嘆いていた。だからこそ、コーチも選手たちも、危機感を抱えて目の前の対戦から無駄にすることなく、あれこれ試しながら試合をしていたのだろう。

 そして何より、選手たちの意欲が強かった。韓国はここ2回のオリンピック世界最終予選では、カナダとドミニカ共和国を相手に終盤まで競り合う善戦をしている。昨年の最終予選でチームをアップテンポなリズムに導いた司令塔のキム・テスル(180㎝、29歳)は「韓国は世界と対戦する経験があればもっと上達できると思うが、その経験がとても足りない。だからワールドカップに絶対に出て、世界と戦いたい」と強く訴えていた。選手自身が世界に出る経験を欲していたのだ。
 
 

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