選手会の設立に込めた決意
「選手会」誕生を実現させた“情熱と綿密な計画性”

文/鈴木栄一  写真/小永吉陽子

9月16日に行われた会見では、4人の理事が登壇。それぞれが「選手会」へ寄せる熱い思いを語った
左から竹田謙(リンク栃木)、朝山正悟(三菱電機名古屋)、岡田優介(トヨタ東京)、竹内譲次(日立東京)

「選手会」誕生を実現させた“情熱と綿密な計画性”

9月16日に記者会見を開き、その概要を発表した「日本バスケットボール選手会」。
会見では、設立のきっかけはどんなことだったのか、
また選手会が目指すところは何なのかが詳しく説明された。
NBLに所属する日本人の全選手が加入という見事な結束力を見せたこの会は、
今後は外国籍選手や海外でプレーする選手などにも門戸を開く準備をしていくという。
こうした概要に、多くのファンや関係者が驚いたことだろう。
しかも、呼びかけからわずか3カ月で会を発足させたことは、見事な手腕だった。
そこには、アルバルクの岡田優介を中心とした、選手たちの綿密な計画と熱い情熱があった。
日本の新たなトップリーグであるNBLが船出をするタイミングで、この会が誕生した意義は大きい。

◆「日本バスケットボール選手会」設立の記者会見の詳細
◆一般社団法人 日本バスケットボール選手会 サイト
 
 

日本バスケットボール界に初めて誕生した選手会

呼びかけからわずか3カ月で発足した「日本バスケットボール選手会」
労使交渉などの活動をしない姿勢を、強く強調

 今季から誕生する新リーグのナショナルバスケットボールリーグ(NBL)は、今夏に行われたアジア選手権ではこれ以上ないくらい組み合わせに恵まれながらベスト8進出を逃すなど、低迷が続く男子バスケットボール界の状況を変える起爆剤になってもらいたいと期待されている。ただ、昨季までのリーグ、JBLと何が違うのか。実際にスタートして数ヶ月が経ってみないことには、現時点では不透明な部分が少なくないという印象は拭えない。

 ただ一方で、新リーグでのシーズン開幕前、確固たる大きな変化がバスケットボール界に起きた。それは9月16日に設立記者会見を行った「日本バスケットボール選手会」の誕生だ。

 選手会の設立経緯、そして現時点で分かっている詳細についてはすでに本サイトで公開されている会見のレポートを見ていただくとして、ここでは選手会に関する筆者の考察と、これから期待する部分などを述べていきたい。

会見ではさまざまな質問に一つ一つ丁寧に答えていった岡田。その語りは理路整然、明快でわかりやすかった

 まず、今回の会見で最も印象的だったのは、冒頭で岡田優介(トヨタ自動車アルバクルク東京)会長が、選手会は「労使交渉といった労働組合的な活動をしない、リーグと対立するような行動を取ることはない」点を真っ先に強調したことだった。

 たしかに岡田会長の言う通り、選手会というと数年前のプロ野球界で起きたようなストライキなど、リーグと対抗する組織というイメージを持つ人々も少なくないかもしれない。しかし、リーグやチームと選手は、対等の立場であるべき。だからこそ、選手達が待遇に不満を持つことがあるのなら時にリーグと対立することがあったとして、もちろん内容にも拠るが、それは基本的に致し方のないことではないだろうか。

 それだけに岡田会長の最初の発言は、リーグへの配慮をかなりしている。そしてNBLがスタートするに当たり、少しでもネガティブなものと捕われかねない要素を排除し、選手たちもリーグと一緒になって盛り上げていきたいという強い思いを感じるものだった。

 また、選手会はNBLに所属するチームの全日本人選手が任意によって加入している組織で、これは企業チームに属する社員選手たちも含まれていることを意味する。そのため労使交渉やストライキの権利を有する労働組合にした場合、社員選手たちの加入は非常に難しくなる。

 「誰かが不利益を被る組織にはしたくないです。」(岡田会長)という選手会にとって、多くの人が抱く選手会の形である労働組合ではなく、非営利型の一般社団法人となったのは、当然の帰結だったのかもしれない。
 
 

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