アジア選手権アフターレポート
エースからチームリーダーへの進化

インタビュー・文・写真/小永吉陽子

アジアの表彰台の一番高いところに立った日本代表

エースからチームリーダーへの進化

大神雄子
(OGA , Yuko/171㎝/G/31歳/日本代表#13/WCBA山西#1)

43年ぶりのアジア選手権制覇を遂げた女子代表。
アジア女王に輝いた勝因と今後の課題、開幕を迎えたリーグでの戦いについて
女子代表選手12人全員にインタビュー。
また、内海知秀ヘッドコーチによる各選手への評価も聞いた。
インタビューのトップは、キャプテンの大神雄子。
キャプテンとして牽引した今大会と、
新たなステージとなるWCBA(中国女子プロリーグ)に臨む決意をロングインビューでお届けする。
 
 

【アジア選手権】アジアチャンピオンの要因

「苦しいときに我慢して、チームディフェンスをする仲間がいました」

若手の勢いを支えた大神雄子と久手堅笑美。優勝を決めて、ハーブ・ブラウンコーチは真っ先に2人をねぎらった

 優勝の要因を「チームディフェンス」と語った大神。しかし、そのチームディフェンスを“日本の武器”とするためには、アジア選手権の2週間前に開催された東アジア競技大会で攻めあぐんだ迷いを吹っ切る必要があった。

 前哨戦とはいえ、東アジア競技大会では若手の中国に1点差で辛勝し、チャイニーズ・タイペイには61-67で敗れている。このままではいけない――。脚が止まってしまった迷いを吹っ切り、チームを立て直すことこそが、キャプテンであり、ガードであり、国際大会のキャリアがある大神がやらなくてはならない仕事だった。大神はそれを「我慢」という言葉で表している。

 今大会の大神は、これまでのシュート率から比べれば、特に予選ラウンドでは大事なところでの当たりはこなかった。日本がインサイドを強調する戦いになった中で、打つべきところでのタイミングに迷いが生じ、得点力が低迷したことは事実だ。しかし、これはチームスタイルが変わっていく中で受け入れるべき試練であり、その変化に序盤こそ戸惑いはあったものの、やるべきことは見失ってはいなかった。

 ギアを一段階上げて戦う決勝トーナメント。準決勝のチャイニーズ・タイペイ戦では得意のジャンプシュートをきっちりと決めて流れを持ち込み、決勝の韓国戦では前から当たるディフェンスで走る展開へとつなげた。コート上ではチームメイトに率先して声をかけ、気持ちを一つにしている。今大会の大神の最大の貢献は、若いチームを迷いなき方向へと導くために、周囲を生かして支える役目を全うしたことだった。

 国際大会で勝利するチームというのは、ここぞという大事な場面で牽引し、苦しいところで踏ん張るプレーヤーが必ずいるものだ。自身の役割を受け入れながら、たどりたいたキャプテン像。エースからチームリーダーへ――。それもまた、コートで存在感を放つプレーヤーとしての進化なのだ。

――アジア選手権、優勝の感想を聞かせてください。

はい、やりました! でも、私が日本代表に入ってこの10年間、すっごい負けてきましたから。そのことを忘れちゃいけないと思います。43年間、ずっと先輩たちやヘッドコーチは負けてきたわけで、その先輩たちの状況を考えると、自分たちはすごく環境に恵まれて活動できていると思う。今回はこのメンバーで優勝できましたけど、先輩たちがいて、築いてきた日本の歴史があって、今につながっていることを、若いメンバーたちにしっかり伝えなきゃいけないと思います。それがあって今の日本代表です。

日本の持ち味であるプレッシャーディフェンスからの機動力が発揮された

――全勝で優勝できた要因は何だと思いますか。

日に日に良くなっていく、崩れなかったディフェンスだと思います。今大会はインサイドが確率のいい点数を取ってくれてオフェンスが安定しましたが、それ以上に、ディフェンスが良かった。一人で守るというより、チームでのヘルプラインとか、チームで守ることが徹底できましたね。決勝でも韓国に1Qで11点、2Qで5点しか取られていない。それがすべてだと思います。ディフェンスは大会を通して3クォーターやフルコートで当たってリズムをつかみ、ハーフコートオフェンスを少なくすることが戦術の一つでした。タイペイ戦も中国戦もそうでした。だからディフェンスの勝利です。

――東アジア競技大会(10月中旬)の時はオフェンスが重たく、得点が伸びなかった。この迷いが吹っ切れたことが躍進のポイントになったわけですが、それはやはり、ディフェンスが良くなったからでしょうか。

そうだと思います。ディフェンスが良くなったのでファーストブレイクの形を自分たちで思い出しました。

東アジア(競技大会)のときはインサイドを使う指示で、セット、セットと形を意識しすぎていました。脚が止まっているからディフェンスも重く、ディフェンスが悪いとシュートを入れられてしまい、エンドからの攻撃になると速攻は出ません。リバウンドを取ってからボールを出せば、たった3歩くらいの距離の違いながら、あんなにもファーストブレイクが出ることを実感しました。ディフェンスの意識を高めて大会に入り、タク(渡嘉敷)たちインサイド陣がリバウンドを取ってくれて、外回りの選手はデイフェンスで前から当たる。ここを修正したことで速攻の形を思い出したんです。

本当に、東アジアでの反省があったからこその今大会でした。東アジアがなければ、東アジアの戦いをバンコクでしていたかもしれません。

――やはり、国際大会の経験、積み重ねが大事ということ。今回は若手が多い中で、1カ月間に2つの国際大会をどう戦うか、東アジアの悪さからどう修正するかがポイントでしたが、経験ある選手としては、この難しい1カ月をどのように牽引していこうとしたのですか?

それはもう、すごい我慢、我慢の連続でした。チームというのは誰かが我慢しなきゃいけないし、誰かが辛抱しなきゃいけない。今の日本は若くて表現が好きな選手が多いので、そこは我慢、我慢、我慢だったんです。自分たちの流れがいつか来るというのはみんな思っていたけれど、東アジアでは流れが来なかった。だからこそ、ディフェンスから立て直すしかないと見直してきたんです。ディフェンスは我慢だよって、アジア選手権の前からみんなに言ってきました。

――もっと具体的に聞きたいのですが、「我慢」というのは、主にディフェンスのことを指すのですか。

練習でもそうでしたね。東アジアでうまくいかなかったあとの練習では、疲れてくると声が出なくなっちゃたし、勢いがなくなった時期もありました。そうすると、みんな練習で好き勝手やりたくなるものなんですけど、そんな時も我慢だよ、と言い合いながらずっと練習を続けてこられたことが大きいかなと。

自分もものすごく意識をして声をかけたつもりですけど、久手堅(笑美)や藤原(有沙)とか、自分を押し殺してでもずっとベンチで声を出し続けて、黙々と練習している選手がいました。そういう役割の選手がいるから、若い選手がノビノビできたんじゃないかなと思うんですよ。だから本当にチームの勝利でしたね。
 
 

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