43年ぶりにアジアの頂点に
「勝つことでチームも選手も確実にステップアップできた」

取材・文/舟山緑   取材・写真/小永吉陽子

予選ラウンドで延長の末に競り勝った韓国に、決勝では完勝。43年ぶりの優勝に大きな華を添えた

内海知秀ヘッドコーチ 優勝インタビュー

「武器であるスピードにインサイドで勝負できる強さが加わった。
勝つことでチームも選手も確実にステップアップできた」

女子代表が、高さの中国、上手さの韓国を退けて、遂にアジアチャンピオンになった。
43年ぶり2度目の優勝という数字に、その快挙が如実に表れている。
攻守で日本の要となった渡嘉敷来夢はMVPとベスト5賞を受賞。
ガードの吉田亜沙美、センターの間宮佑圭の2人もベスト5に入る堂々の活躍だった。
チームが一戦ごとに成長を見せた今大会。内海ヘッドコーチに決勝での采配、
勝ち続けたことでチームが得たものは何かを聞いた。
(試合後の共同インタビューより)
 
 
今大会、女子代表は確実に進化を遂げていった。序章は、予選ラウンドのチャイニーズ・タイペイ戦だった。東アジア競技大会で完敗を喫している相手に、69-57で完勝。第2章は韓国戦だ。堅い守りからゲームを支配していた日本は、土壇場で逆転されながらも#10渡嘉敷来夢が果敢にゴールにアタックしてフリースローで同点とし、その勢いにのって疲れの見える韓国を一気に突き放して逃げ切った。これまで試合巧者・韓国のしたたかさの前に屈してきた日本が、勝負どころでしぶとく食い下がってあげた貴重な1勝だった。

第3章は、絶対的な高さを擁する中国から奪った大きな1勝だ。日本はゾーンを仕掛けて相手のリズムを崩す作戦が功を奏して62-55と勝利。高さで勝る中国からインサイドで46得点も奪取した。まさにチーム・ディフェンス、リバウンドの勝利だった。こうして予選ラウンドを5戦全勝で抜けた日本は、準決勝でもチャイニーズ・タイペイを寄せ付けずに快勝した。

最終章は、中国を接戦の末に下してファイナルへと上がってきた韓国との対決。序盤から日本はリバウンドを制して厳しい守りを敷いてゲームを支配。第2クォーターを5得点に抑えた守りは見事だった。第3クォーターで相手のプレスに連続ミスを出してしまったが、そのピンチをもしのいで、65-43と勝利。終始、主導権をとって自分たちのバスケットを貫いての優勝だった。若いメンバー構成ながら、一戦も落とすことなく、全勝でアジアの女王の座を射止めた日本。選手もチームも「進化」を見せた優勝となった。

31本vs19本でリバウンドを制す

「相手の3ポイントを警戒しながら、リバウンドを獲って先行する。
渡嘉敷、間宮を中心に全員が集中して指示どおり頑張ってくれた」

――優勝おめでとうございます。今の気持ちを聞かせてください。

厳しい守りで相手のリズムを封じ込んでいった日本。チームディフェンスが決勝でも見事に機能。そこからリバウンドを制したことが勝利につながった

「うれしい」の一言です。今大会、「優勝」という目標を掲げてきたが、それを達成するにあたって予選から負けなしで優勝までこぎつけたことに、自分でもビックリしている。選手がゲームを通して一歩一歩大きくなってきた。それを肌ですごく感じる。試合をしていても、「あ、この選手たちは負けないな」というのを感じるチームになってきていた。

――そう感じられたのはいつですか。

東アジア(競技大会)の後に、練習を含めて選手の意識が変わってきた。あの大会は、「アジア選手権へ向けての通過点の大会だ」と伝えたのだが、その言い方がまずかったかもしれず、精神的に少し気の抜けた部分があって最終試合でチャイニーズ・タイペイに完敗した。あれがいい薬になったのかもしれない。その後の合宿では、「アジア選手権で優勝をめざす」という意識に変わってきたからだ。

――決勝は第1クォーターで一気にリードを奪いました。ゲームプランはどうでしたか。

ゲーム采配が冴えた内海ヘッドコーチ。試合後はいつも声が枯れていた

韓国は確かに3ポイントが怖いというイメージだが、3ポイントだけでなく、インサイドの1対1が強かったりする。3ポイントの確率も30~35%だとすれば、10本のうち7本は落ちる計算になる。選手には「その落ちたリバウンドをしっかり獲って、自分たちが先行していけ」と話した。これがまず一点。それから「オフェンス・リバウンドを獲って得点に結びつける」ことと、ディフェンス・リバウンドを制すること。この二点を選手に指示した。「韓国の3ポイントは確かに怖いけれど、リバウンドを獲っていけば大丈夫だ」と。

――その言葉どおり、立ち上がりから日本が流れをつかんだ展開でした。特にリバウンドは、日本の31本に対して韓国は19本。相手のオフェンス・リバウンドは2本に抑えています。この頑張りは大きかったですか。

渡嘉敷(来夢)がよくリバウンドに跳んでくれたし、間宮(佑圭)もよく獲ってくれた。終盤は、櫻木(千華)が結構いいところでリバウンドを獲ってくれた。そういう意味では、みんながリバウンドに集中して、指示した通りにしてくれたと思う。スタミナの点で韓国が相当、足にきているのが分かっていた。なので、相手の武器である3ポイントは、いい状態のときと比べたら落ちるだろうというのは想像していた。

――韓国はいつもなら決めてくる3ポイントだけでなく、ドライブインやゴール下シュートでもポロポロと落としてくれました。ディフェンスが効いていましたか。

そうだと思う。ディフェンスのプレッシャーがあったし、さらにゴール下に渡嘉敷がいることで、ドライブをしてもブロックされてしまう。韓国にとって彼女の存在は脅威だったと思う。そこはすごい影響力があった。そのためにいつもは入るシュートが落ちていた。
 
 

後半も崩れなかった日本

「途中、韓国のトラップに慌てた場面もあったが、よくしのいでくれた。
体力面を考慮して大神、吉田、宮元、櫻木の4人でローテーション」

――前半を37-16、21点リードで折り返しました。ハーフタイムでの指示は?

「21点リードはそんなに意識せずに、クォーターごとにしっかりしたバスケットをしていけ」と言った。第3クォーターは「失点を何点に抑えるか、オフェンスでは何点獲ろう」という話をして「クォーターごとにしっかり戦っていけば大丈夫だ」と伝えた。

――リードしながら優位に進めた試合でしたが、途中、パスを回してギリギリで攻める攻めも多かったです。それも作戦でしたか。

第3クォーターの途中で相手にトラップされて我々も少し慌てた部分があり、得点につながらなかったところがあった。ただ、第4クォーターの終盤は、残り時間と得点差を考えて「時間をかけてプレーしろ」と指示をした。(24秒をギリギリ使って)残り1秒でシュートにいったりしたのは、ある程度いい攻めだったと思う。

――ゲームは、櫻木(千華)選手を交代で起用しながら、主力中心で戦いました。そこの采配は?

3クォーターの途中で、相手プレスからのトラップで26点リードから10点差まで詰められてしまった。韓国はああいう力を持っている。あそこでリズムが崩れると、試合の流れが相手に傾いてしまう。決勝はしっかりした勝ち方をしたかったので、櫻木を含めて6人で最後まで戦った。

――ディフェンスではスリークォーターから当たるマンツーマンで通しました。体力的な心配は?

我々の体力よりも、韓国のほうが体力がなかったので、できるだけ相手に体力を使わせるような作戦で臨んだ。

シューターとして勝負どころで3ポイントを決めてくれた#8宮元。ディフェンスでの貢献も大きかった

――厳しい守りを敷いた展開の中では、体力的にはベテランの大神(雄子)選手のところの交代がカギだったと思います。そこは櫻木選手、宮元(美智子)選手、吉田(亜沙美)選手との交代でしのぎました。そこの交代も十分に考えていたのですか。

大神と吉田のところをどう交代させていくがポイントだった。大神は大神で、点数をたくさん獲らなくてもコートの中でいろんなことをやってくれる、そういう存在だ。彼女の影響力は大きいので、スタミナの面だけがカギだった。一方、吉田も前線からプレッシャーをかける厳しい守りで40分間を通すことはできないので、どうローテーションをしていくかを考えて4人での交代にした。

――シューターの宮元選手は徹底マークに遭いながら、前半はいいところで3ポイントを沈め、後半もナンバープレーから鮮やかに3ポイントを決めてくれました。シューターとしてどう評価していますか。

宮元は初めての代表入りで最初は少し心配したが、徐々に度胸もついてきて、「このチームのシューターだ」という自覚も出てきて、今大会も安定したシュート確率だったと思う。決勝戦は2本だけだったが、いい確率だったし、「ここぞ!」というときにほしい3ポイントを決めてくれた。チームにとってもすごく信頼感のあるシューターに育ってきたと思う。
 
 

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