全勝で決勝トーナメントへ
渡嘉敷来夢の独り立ちと、勝ち続けることで得た自信

文・写真/小永吉陽子

アジア選手権予選ラウンド総括と決勝トーナメント展望

渡嘉敷来夢の独り立ちと
勝ち続けることで得た自信

 
 
予選ラウンドで中国と韓国に勝利したのは初。攻め続けた末につかんだ勝利

韓国戦で27得点、10リバウンド、中国戦で20得点、12リバウンドをマークした渡嘉敷。勝負どころで強さを見せつけた

 過去のアジア選手権にて、日本が予選ラウンド1位通過したことは1999年アジア選手権以来。シドニー五輪の出場権がかかっていたその大会では、中国に負けて韓国に勝ち、三つ巴になったうえでの1位通過だった。90年代は日・中・韓が勝ったり負けたりのライバル時代で、それぞれの国が国際大会で結果を出していた。その後、一歩遅れを取ったのは日本だった。世界舞台での決勝トーナメント進出は96年のアトランタ五輪まで遡らなければならない。アジアでは3位が指定席になっていた。だからこそ、今回、中国と韓国の両方に勝利して決勝トーナメントに進出したのは賞賛に値する。

 予選ラウンドの全勝は、現在の決勝トーナメント方式になってから初のことだ。(95年まではリーグ戦の上位2チームが決勝進出。3、4位が3決に回る大会システム)

 快進撃の要因は何か。まず一つは最大のライバル・韓国に勝ち切ったことだ。残り3分を切って65-58と7点のリードを奪った矢先、韓国のベテランシューター、#10ピョン・ヨナに2本連続で3Pシュートを決められて67-68で逆転された。残り時間は44秒。

「ああ、やっぱり韓国ベテラン陣の巧さにやられてしまうのか」

 これまでの日本だったら、ここで終わっていただろう。韓国のしたたかさの前に、パスを回して攻めきれずに終わるシーンは何度も見てきた。

 しかし日本は攻め続けた。大神は残り時間と相手のファウル数を確認し「悪くてもファウルをもらえばいい。タク(渡嘉敷)がオフェンスリバウンドを取ってくれていたから安心して行けた」とドライブインを試みる。これはブロックされてしまったが、大神の攻め気を見た渡嘉敷が「あそこでシン(大神)さんが攻めたから、次は自分が行って決めなきゃいけないと思いました。最後はお前が行けと言われ、やるしかないと思った」とゴールにアタックする。

 残り9.6秒、インサイドで攻めた渡嘉敷がファウルをもらい、フリースローを2投とも決めて延長に持ち込んだ。延長戦は走った日本の勝利だった。韓国戦において、劣勢から2度も攻めて自分たちの流れに持ち込んだ事は、近年の日本にはない粘りと勇気だった。

 快進撃の要因はまだある。今大会当たっているシューターの宮元美智子やインサイドで仕事をこなす間宮佑圭が「みんながいいシュートを打つために、地道な役割を果たしている」と声を揃えて言うように、チーム一丸で戦っているムードの良さが日本の一番の武器だろう。そして、躍進の最大の要因といえるのは、渡嘉敷来夢が独り立ちしたことだ。これまで日本のウィークポイントだったインサイドにおいて攻め続け、どこからともなく跳び込んでもぎ取るオフェンス・リバウンドは各国の驚異の的になっている。しかも、終盤になると威力を発揮するリバウンドに、日本はどれだけ助けられたことか。

コート上でお互いを励まし合う姿が目立つ。全員で我慢のバスケットを体現している

 渡嘉敷にとって今大会は、本人が言うように、「実質、初の日本代表であり、初のアジア選手権」だといっていい。2年前の大村でのアジア選手権はケガを抱えたままで、納得のいくプレーができないままに終わってしまったからだ。

 渡嘉敷が痛みを抱えていた右足甲の舟状骨(しゅうじょうこつ)の手術に踏み切ったのは、2012年1月23日。その後はリハビリに明け暮れ、昨年のオリンピック最終予選はエントリーに入ることもできなかった。

 ケガから復帰後は段階を一つ一つ踏みしめ、確実なる手応えを欲していた。昨シーズンのWリーグではフルに動けるようになってJXの5連覇に貢献したとともに、プレーオフMVPを受賞。今度は日本代表でやる時がきたのだ。

 だが、それでもすぐに、というわけにはいかなかった。今年4月のアジアWチャンピオンシップ(日中韓台のクラブチームナンバーワン決定戦)では、優勝したウリ銀行のインサイド陣にダブルチームを仕掛けられて攻めあぐんだ。春のリトアニア遠征では「全然、自分のプレーができませんでした」と不完全燃焼。6月末のモザンビークとの親善試合の時も要所では良さを出しながらも「タクはもっとできるはず。私たち上(先輩)から言われなくてもやる選手になってほしい」と司令塔の吉田亜沙美は注文を出していたほどだ。

 傍から見れば、192㎝のサイズと身体能力ゆえに、すぐにできてしまうように見られがちだが、日の丸をつけてからの渡嘉敷来夢は「ここは、自分で攻めていいんだよね」と言い聞かせながらここまできたという。そこへ来て10月の東アジア競技大会では、若手ながら高さのある中国に対して、渡嘉敷の果敢な攻めが残り1秒での逆転勝利に結びついた。コンディションの調整がうまくいかずに、重いムードで戦っていたチームの中で「自分がやるんだ」と決意した瞬間だ。

 そして今、足の痛みを気にせずに、毎日バスケットボールができる楽しさこそが渡嘉敷を輝かせている。

「今は毎日発見があって練習が楽しい。試合はもっと楽しい!」

1 / 212