準優勝・明治大
止まった時間を動かし、刻み出した先に見えたもの

文・写真/細田季里  

積み重ねてきたディフェンスの威力を発揮し、決勝までたどりついた明治大 (写真/一柳英男)

止まった時間を動かし
新しく刻み出した先に見えたもの

――明治大応援サイトの記者から見たインカレ――

(準優勝・明治大)

35年ぶりにインカレ決勝の檜舞台に立った明治大。
ここ数年、ディフェンス強化をしてきている成果と、現3年生を主体としたチームの成長もあり、
2年前に入替戦をしのいで1部に残留してからは、粘りあるチームへと変貌を遂げていた。
昨年のインカレ・準決勝で青山学院大に喫した屈辱的な49点差敗退から歩んできた1年間と
インカレでのさらなる成長を追う。

【試合結果】

決勝 東海大 73(19-24.14-6.21-13.19-11)54 明治大
準決勝 明治大 59(18-21.19-7.8-13.14-15)56 青山学院大
3回戦 明治大 69(15-31.14-15.27-7.13-10)63 筑波大
2回戦 明治大 80(21-12.18-14.16-22.25-19)67 国士舘大
1回戦 明治大 82(19-11.25-5.20-19.18-15)50 北海道教育大岩見沢校

 
 

~「39-88」での大敗 その時彼らの時間は止まった~

「止まった時間を動かそう」

 この1年間の合言葉だった。彼らの時が止まったのは昨年度のインカレ準決勝。青山学院大に対し「39-88」――49点差という大敗を喫した瞬間からだった。

 昨年は青学大の激しいディフェンスに攻めることはおろか、ボールを回すこともままならず。徐々に気持ちも体力も削られ、一度かかったディフェンスの網に対して犯したターンオーバーは20。ボールを奪われると華麗に速攻を決められ、どんどん点差は開いていった。「準決勝へぎりぎりのところで這い上がってきたチーム」と「頂上決戦が目標のチーム」ではトーナメントの駆け上がり方も違い、明治大に追いあげる体力など残ってはいなかった。

 自分たちのバスケが何もできず、為す術もなく完敗。そして、この時から明治大の時間は止まってしまったのだった。この時の主力は2、3年生。彼らは誓った。1年後、もう一度この「準決勝」という舞台に戻ってこよう。その時こそは、勝利をつかみ「止まった時間を動かそう」と。明治大はその次の日の3位決定戦を2013年のチーム幕開けと決め、スタートを切った。そして、彼らは3、4年生となった。

~待ちに待った大会の1週間前 そのチーム状況は…~

インカレ前の練習では精彩を欠いていたが、気持ちだけは前を見据えていた

 準決勝の大敗が心に残っていた彼らはインカレ3位という結果に甘えることなく、厳しい練習や試合を休みなくこなした。その努力は結果として現れ、関東大学リーグ戦を3位(昨年度は入替戦回避ぎりぎりの7位)という好成績で終え、待ちに待ったインカレにシード枠を獲得してのぞむこととなる。あとは初戦に向けていい練習をこなしていくだけだった。

 しかし、開幕の約一週間前のこと。練習試合で見た彼らは「なんだかぱっとしない」。リーグ戦終盤に見たチームとは違い、シュートは精彩を欠き、要であるチーム・ディフェンスも機能せず、どこか集中力がないように見えた。大会前にチームが完成してしまっても仕方ないとは思うが…本当にこのまま大会にのぞんでいいのだろうか。選手たちも同様な危機感を感じているようだった。だが、どうしたらいいのかわからない。頂点を目指そうとしているチームにとって今はどういう状況であればいいのか。

 その時、高校2年時に明成高(宮城)でウインターカップを制した経験を持つ司令塔の安藤誓哉(3年)がこう言った。

「あの時は優勝候補の延岡学園戦(準々決勝)を乗り越えたことで、チームが一気に一つになったんですよね。だから、この大会でも何かそういうきっかけがあれば」

 このチームに何か「きっかけ」がやってくるのだろうか。少し不安に思いながらも、インカレは幕を開けた。

~「きっかけ」をつかめず 追い込まれた準々決勝~

 少しでも早く「ぱっとしない」チーム状況を改善してほしかったが、ベスト8決定戦の国士舘大に最大20得点差から2点差にまで追い上げられる場面も見られ「きっかけ」をつかめないまま、彼らは準々決勝・筑波大戦を迎えることとなる。

 試合は明治大ディフェンスの連携ミスによる筑波大の得点から始まった。これは序章にすぎず、明治のディフェンスはその後、すべて後手に回り、ボールマンへの反応も遅く、他4人によるカバーリングを意識したオフボールディフェンスもどこか一体感がなかった。それがオフェンスにも影響してか攻撃は単発に終わった。その間、筑波大のシュートが面白いように決まり、前半が終わった。

「29-46」の17点ビハインド。このまま終わってしまうのだろうか。あの日から1年間、彼らが練習や試合をほぼ休みなくこなしてきたのを見てきた。去年よりもチーム力が上がっているはずなのに十分に発揮できることができず、悩み苦しんだリーグ戦を見てきた…このままで終わってほしくない。

~追い込まれた先につかんだ「きっかけ」~

筑波大戦は17点ビハインドからの大逆転劇だった

 そう願いながら、迎えた後半。最初の得点は前半とは逆で筑波大ディフェンスの連携遅れから生まれた明治大・目健人(4年)の3Pだった。そして目が連続となる3Pを決めると流れは明治大へ。

 大きな変化が見えたのはディフェンスだった。前半とはまるで別チーム。ボールマンへの反応も素早く、さらにはカバーリングに備えたディフェンスも連動し、コートに出ているメンバー全員が集中しているのがわかった。それは、「去年はディフェンスの練習しかしていない」という言葉が聞かれるぐらいに2年間かけて作ってきたチームディフェンスが戻ってきた瞬間だった。

 それが“きっかけ”となりオフェンスで見られていた硬さもなくなると、ボールが回り始めた明治。気づくと17点差をひっくり返し56-53の3点リードで3Qを終えた。3QのTO数は明治大が1に対し筑波大が9、得点は27-7。効果的なディフェンスだけでなく、自分たちもミスなく攻め続けた結果がこの大逆転劇を生んだのだった。

 あとは勝利するだけ。筑波大に逆転を許す場面もあったが、中東泰斗(3年)、目健人(4年)が連続3Pを決め、さらに残り23.5秒で田中成也(4年)が放った3Pが決まると69-63。これが勝負を決めるシュートとなり、明治大は勝利した。
 
 

1 / 3123