SGのポジションを制するのは誰か!?
JBL得点王は誰の手に

文/渡辺淳二  写真/(C)LINK SPORTS ENTERTAINMENT INC. 撮影:中村斗音

一巡目終了時点、得点ランキング1位・川村卓也と3位・金丸晃輔の注目マッチアップ!(写真/(C)LINK SPORTS ENTERTAINMENT INC.撮影:中村斗音)

日本を代表するスコアラーとして君臨してきた折茂武彦は今年の誕生日で41歳を迎えた。彼は今、レバンガ北海道のトップ(社団法人の理事長)のポストにつきながらもコート上での役割を必死に果たし、得点ランキングにおいても上位(11月20日現在、7位)につけている。そして長きに渡り日本代表としても欠かせない存在だった折茂のもう一つの功績。それはシューティングガードのポジションで有望視される若手に、刺激を与え続けていることだ――。

川村卓也──3年連続得点王としての使命感

これまで3年連続得点王を獲得しているリンク栃木のエース、川村卓也(写真/加藤誠夫)

ゴール脇に用意されたプレス席に腰を下ろすと、背後から可愛らしい声が聞こえてきた。

「あ、川村だぁ」

ウォーミングアップ中、ずっとリング下にいる川村卓也(リンク栃木ブレックス)を見て喜んだのは地元・ミニバスケットチームの女の子たち。だが、その10月15日のトヨタ自動車アルバルク戦で川村がコートに立つことはなかった。「詳しくは説明できませんが、昨年からのケガが完治していない状態…」(川村)だという。リング下でボール拾いをする川村を凝視するミニバス少女たちはさぞかし残念だったに違いない。開幕直前に中国で開催されたアジア選手権では、大会ベスト5にも名前を連ねた川村の、ウォームアップスーツの姿しか見られなかったのだから…。

JBL3年連続得点王。そして今シーズンの開幕戦で「40得点」という驚異的な数字を記録し、早速周りの目を引き付けた。

「4年連続の得点王はやはり川村か」

そんな関心が向けられる度に川村は思う。

「得点王を狙いますか? って言われますが、毎年狙って取っているわけではない。自分がベースにしている20得点というラインは切りたくないけど、良い時もあれば悪い時もある。だから最終的にそこに(平均で)達しているのが、自分の仕事なのかなと」

ビッグマウスという印象を持たれがちだが、有言実行する力、言い換えると、相手が川村で来るとわかっていても得点できる力が、彼にはある。1984-85シーズン(※当時は日本リーグ)で得点王になった北原憲彦氏(元日本鋼管)以来、日本人の得点王が出ていないことからも、3年連続得点王という川村の実績がどれほど賞賛に値することかがわかる。たとえ外国人選手がコート上に一人しか立てない「オン・ザ・コート1」のルールにおいてであっても、である。それだけに、彼を中心にJBLを見るのが実に興味深いのだ。

川村はいかに相手をかわしているのか。相手は川村にどう立ち向かうのか。そして川村に4年連続の得点王を許してしまうのか。だが、そう簡単には許しそうもない面子が、川村と同じガードフォワードのポジションには揃っている。

シューティングガードたちの壮絶なやり合い

トップを走るトヨタ自動車。勝負強いシューター、岡田優介(写真/小永吉陽子)

序盤戦はケガに苦しんだ川村とともに低迷したリンク栃木ブレックスとは対照的に、抜群の選手層の厚さで勝ち星を重ねるのがトヨタ自動車アルバルク。そのトヨタの3ポイントシューターである岡田優介に、川村に得点王を続けさせていいものか、ストレートにぶつけてみた。すると変化球ではない回答が返ってきた。

「同じポジションとして自分も(得点王を狙いたい)、というのはあるけど、チームの中での役割が違うかな、と」

得点を取ることを自分の仕事だと言い切る川村に対し、岡田が置かれている状況はどうやら違うようだ。

「シュートをたとえ外してもヘッドコーチには何も言われない。ただしディフェンスでやられると怒られる。そういう意味では相手のエースに得点を取らせないことを意識して、プレイしていると言えるかもしれません」

もちろんそれは相手が川村に限った話ではないだろうが、「川村選手だったら15点以内に抑えたい」と即答するくらいだから、彼を意識しているというのは察しが付く。20得点のラインを意識する川村と、15点以内の失点を意識する岡田。およそ5点の誤差を巡り壮絶なやり合いが繰り広げられているわけか!?

「シューターだったら、1本シュートを決めたら、2本連続で決めたい。だからシュートセレクションが多少早くても打ってくる。そこでディフェンスは絶対に相手にボールを持たせないようにする」

また、こんな心理も働く。

「自分がディフェンスで相手にやられたら、絶対にやり返したいと思う」

こうした気持ちを時には我慢し、ある時には前面に出して攻撃を仕掛ける。我々の想像を絶する領域でやり合う駆け引きを、イメージする楽しさが彼らのマッチアップにはある。

期待の若手スコアラーたち                           

開幕戦で41歳の折茂武彦をマークする2年目の小林大祐(写真/高野 洋)

昨シーズン、そうしたツワ者たちに挑戦し、新人王という形で高く評価されたのが日立サンロッカーズの小林大祐だ。11月中旬現在はケガをしてベンチを温めているが、試合に出れば川村をはじめとする日本代表の主力組に対しても、気持ちを前面に出して戦う姿は今後の可能性を十分に感じさせる。彼自身は開幕戦を迎えたときに現在地をこうとらえていた。

「自分のほうができるというのもあるし、自分がまだ劣っているというのもある」

自らの中で葛藤を繰り返しながら、周りを感動させるような壮絶なマッチアップを、先輩スコアラー相手に展開していたわけだ。そしてレバンガ北海道との開幕戦でチームは勝利こそしたものの、個々のマッチアップでは折茂にいなされた感が強い。

「強化してきたフィジカルで折茂さんを抑えようと思いましたが、ファウルがかさむ結果となりました。国際大会(今年出場したユニバーシアード)と同じようなイメージでコンタクトしたのですが、それをファウルとするレフェリーに対応できなかった自分の未熟さが出ました」

矛先を自身に向ける強さを持つ小林だが、次の質問を向けた時、ほんの少しだけ心の揺れが垣間見えた気がした。福岡大附大濠高の後輩でルーキーながらスコアラーとして期待される金丸晃輔(パナソニックトライアンズ)とのマッチアップについてである。

川村卓也と金丸晃輔の得点王争いも見どころの一つ(写真/(C)LINK SPORTS ENTERTAINMENT INC. 撮影:中村斗音)

「高校に入って来た当初は、体が細くてヒョロヒョロという感じでしたけどね。インサイドだけだったのに、シュートタッチを備えて、どんどんうまくなりました。でも、絶対に負けるわけにはいかないですよね(苦笑)」

小林は後輩・金丸の挑戦をどうはねのけるのか。そして折茂と川村にどう挑むのか。そんなマッチアップを楽しみにしているファンのためにも、練習中に負ったケガを早く完治させてもらいたいものである。

さて、現在JBLの得点ランキングは混戦模様となっている。

10月下旬までは、ケガをしていた川村に代わってルーキー・金丸晃輔が得点ランキングのトップを爆走。その後、ケガから復帰した川村が盛り返し、11月20日現在はアベレージ20.15でトップに躍り出た。

11月20日現在、1巡目を終えての得点ランキング(一試合平均)

1 位/川村卓也 (リンク栃木)20.15
2 位/桜木ジェイアール(アイシン)17.79
3 位/金丸 晃輔(パナソニック)16.29
4 位/ロン・ヘール(三菱電機)15.43
5 位/竹内 譲次(日立) 13.93
6 位/ジュフ 磨々道(レバンガ)13.64
7 位/折茂 武彦(レバンガ)13.62
8 位/ティロ・キレット(レバンガ)13.43
9 位/フィリップ・リッチー(トヨタ)13.07
10 位/ジャイ・ルイス(レバンガ)12.64

古田悟(右から3番目)の引退セレモニー。この日対戦チームだったリンク栃木からは、日本代表で戦った仲間として、川村卓也と網野友雄が感謝の気持ちを述べた(写真/小永吉陽子)

10月15日の取材当日、試合でコートに立てなかった川村卓也が試合終了後、コートの中央に歩いていく。昨シーズンをもって引退し、この日、引退セレモニーで登場した元日本代表キャプテンの古田悟(元トヨタ自動車アルバルク)に深々と頭を下げるためだった。

「古田さんのバスケットに対する気持ちや魂は、僕ら(年齢が)下の人間が受け継がないといけない。国際大会でどんな選手が相手でも激しくぶつかり合う姿、そしてキャプテンとしてチームを引っ張るという責任感が感じられました。自分もキャプテンをする時が来たら、ああいうプレイヤーになりたいと思える、理想のキャプテンでした」

そう言いながら古田から目を離さないでいる川村はこれから先、どこまで上り詰めるのだろうか。4年連続得点王につながる「20点」という平均得点に加え、古田が見せてくれたような、数字に表れないプレイをもきっと見せてくれるに違いない。高校を卒業して7シーズン目の川村はすでに、折茂や古田が背負ってきた日本を代表するプレイヤーとしての責務を引き継ごうとしているのだから――。