男子総括レポート
ビッグショットを制した東芝が8年ぶりの歓喜!

文/渡辺淳二  写真/一柳英男

準決勝、決勝と劇的な勝負を制した東芝が8年ぶり3度目の歓喜

ビッグショットを制した東芝が
8年ぶりの歓喜!

――オールジャパン2014 激闘を追う――

 
 
JBLからNBLへと様変わりして初めて迎えたオールジャパン(全日本総合選手権)。東西2つのカンファレンスで分かれて行われているNBLの前期・上位2チームがそれぞれ準決勝に勝ち上がった。そのうちイースタンカンファレンス1位の東芝ブレイブサンダース神奈川と、同2位のトヨタ自動車アルバルク東京が決勝で激突し、東芝神奈川が82-79で優勝を飾った。東芝が8年ぶり3度目に迎えた歓喜の裏には、勝利に導いたいくつもの“ビッグショットがあった”――
 
 

いくつものビッグショット

決勝では3P5本含む20得点。最後はスティールからの速攻で勝利を決定づけた辻

 準決勝、決勝と、どちらが勝つか予想がつかないデードヒートが続く中で、いくつものビッグショットが炸裂した。そのうち優勝へと直接的につながる2発のシュートが同じ選手の手から放たれた。東芝神奈川のセンター、ニック・ファジーカス(211㎝)である。準決勝の和歌山トライアンズ戦、ブザービーターのシュートで決勝進出を決めた後、記者会見席上でこう語った。

「昨年のオールジャパンで(準々決勝で)負け、JBLファイナル最終戦では4点差で負けて悔しい思いをした。でもそこでチームに自信が付いたし、何より経験を手にすることができたんだ」

 決勝残り20秒でトヨタ東京に逆転を許したチームを救ったのも、このファジーカスのビッグショットだったわけだが、2本のシュートに共通していることがある。それは外れてもおかしくない難しいシュートだったということだ。準決勝残り0.7秒でのスロインでは、ショートコーナー付近からのクイックモーションによるシュート。そして決勝ではポイントガード・篠山竜青との2メンゲームでパスを受け、フリースローライン近辺からのミドルシュートを体が前に流れながらも沈めた。元NBAのセンターである彼のテクニックの高さであり、シュートレンジの広さではある。準々決勝では東海大に苦しめられ、ファジーカスに助けられる内容だったが、その後の試合では、彼のビッグショットを成功させたことこそ「東芝神奈川のチーム力」として映った。

 選手時代に優勝を2度経験し、8年ぶりに指揮官として優勝を手にした北卓也HC(ヘッドコーチ)が「選手の時にはうれしかったですけど、今はホッとしています」と明かして、こう続ける。

選手と指揮官の両方で優勝を果たした北卓也ヘッドコーチ

「私が(指導者として)若くてチームを勝たせられず、選手に苦しい思いをさせました。でも勝てない中でも一生懸命練習し、試合に挑んでくれた。そこに昨シーズン、ニック(ファジーカス)、辻(直人)、(ジュフ)磨々道という攻撃の核が加わり、彼らとともにまわりも成長したということです」

 準決勝、決勝と最多得点、最多リバウンドを記録したのがファジーカスなら、2試合とも最多の3ポイントシュートとアシストを記録し、優位なゲーム展開を作ったキーマンがシューターの辻。特筆すべきは準決勝で9本中6本、決勝では10本中5本という3ポイントの成功率の高さである。強烈に印象に残っているのが決勝のトヨタ東京戦の第3ピリオド、トヨタ東京のファウルを受けながらも沈めた3ポイントによる『4点プレー(バスケットカウント)』だ。辻がそのシーンを振り返る。

「トヨタがゾーンに切り替わった時、別の選手にパスをさばいたニックに、『こっち(僕)も見て』って言ったんですよ。その直後、トヨタのディフェンスがボールを持つニックに引き付けられた。パスが来ると思ったし、絶対に打てると思いました」

 そのポジションの取り方が絶秒だった。「マンツーマンに近いゾーンディフェンス」(トヨタ・ベックHC)とはいえ、形としては2-3ゾーン。そのギャップとなる位置、コーナーとウイングの中間地点で辻がパスを受けたことにより、トヨタ東京のディフェンスを混乱させた。辻にファウルしたトヨタ東京・松井啓十郎も「自分が守るエリアではないと思った」と明かす。その一瞬の迷いを引き出すゲーム勘を辻は、ディフェンスでも垣間見せるのだ。

 試合終了間際、ファジーカスが逆転シュートを決めた直後、ラストチャンスを狙うトヨタ東京のボールをスティールしてそのままレイアップシュートを沈め、チャンスの芽を摘んだのである。

「岡田さん(優介/トヨタ東京)のシュートが決まっていたので、そこにパスしようとするだろうなと読み、ギャンブル(イチかバチかの)のディフェンスをしました」(辻)

東芝は大西、山下、宇田、鎌田らベンチメンバーが貴重な働きを見せることも強み(写真は劇的勝利を収めた準決勝より)

 その時点ですでにタイムアウトを使いきっていたトヨタ東京。試合終了が刻々と迫る中、「とにかくプッシュして(ボールを運んで)攻撃をクリエイトしようと思った」という司令塔・伊藤大司。「パスを展開して、ホットだった(シュートが当たっていた)岡田さんに、パスをつなぎたい」――。

 当然湧き上がるその思惑を決勝終了間際の土壇場の状況で、辻に狙われたということだ。

 この辻に対する警戒心によってトヨタ東京のディフェンスはファジーカスに的を絞ることができず、また彼をベンチに休ませられるだけのパフォーマンスをベンチメンバーが見せた。特に昨シーズンをもって休部したパナソニックトライアンズから移籍してきた大西崇範(196㎝)や、ルーキー・鎌田裕也(197㎝)らのインサイドのつなぎがファジーカスの体力を維持させた、という見方もできる。昨年に続きオールジャパン優勝を手にした大西が冗談交じりに言う。

「チームの一員として認めてもらえているか分かりませんが、30歳を超えて2回も優勝できるとは思っていませんでした。いいチームに移籍できたことをうれしく思います。どこでチャンスが巡って来るかわかりませんね」

 昨季までのチームメイトが多く所属する和歌山トライアンズに準決勝で勝利した大西。「ロッカールームから出てくるとトライアンズのメンバーがいて同じチームのようななつかしさがあった」という。おそらく今回の優勝に大きく貢献したことで、自身の居場所をしっかりと認識できたのではないだろうか。
 
 

1 / 3123