アジア選手権アフターレポート
「PGとして“自分がやるんだ”と、この大会に懸けていました」

インタビュー・文・写真/小永吉陽子

「表彰台の一番高いところで国歌を歌いたい」――その目標が達成された(写真は笑顔で国歌斉唱中)

「ポイントガードとして“自分がやるんだ”と
この大会に懸けていました」

吉田亜沙美
(Asami , YOSHIDA/165㎝/PG/26歳/日本代表#12/JX-ENEOS #12)

「最後まで気持ちが強いほうが勝つ」――。
韓国や中国の怖さを知る者として、その言葉を体現したのが、吉田の前線から当たるアグレッシブなディフェンスだった。
ポイントガードとしては、間宮佑圭、渡嘉敷来夢、王新朝喜というインサイドを操り、みずからも果敢に攻めた。
攻防ともに、誰も吉田を止められるガードはバンコクにはいなかった。
代表歴8年でアジア№1ポイントガードに輝いた吉田が語るアジア選手権の勝因。
そして、これからの日本と自分。
 
 

「勝ち方がわかった」アジア選手権

「予選リーグで韓国に延長で勝ったことで、気持ちが一つになって最後まで突っ走れた」

ガードとしてインサイドにパスを配給し続けた。「どこを使うか考えてゲームを作るのが楽しかった」

――優勝の感想を聞かせてください。

このチームで優勝できたことがうれしい。このチームでなければ優勝できなかったと思うくらい、本当に一つのチームになりました。私が代表に入ってからは8年間勝てなかったんですけど、この8年は絶対に無駄ではなかったと思うし、これまで経験したことが今ここに出たのだと思う。みんなで優勝という目標を決めてこの大会に臨んだので、それが達成できて本当にうれしいです。

――決勝進出を決めたとき、「明日は表彰台のいちばん高いところで国歌を歌って帰りたい」と言ってましたが、実際に表彰台の一番高いところで国歌を歌った感想は。

いやあ…なんかこう、鳥肌が立ったというか、歌っていて本当に涙が出てきそうでした。これを何回も経験して、連覇している中国っていうのは本当にすごいなと肌で感じたし、日本の国歌が流れたときに胸を張って歌っている仲間たちを見て幸せだなと思ったし、これまでのバスケット人生はすごく長かったんですけど、あの瞬間が自分にとって印象的なものになったし、自分の財産として一生残るし、本当に最高の瞬間だったかなと思います。

――表彰台では全員で大声を出して歌ってましたね。

いきなり音楽が始まったので、みんなで急いで歌い始めました(笑)。すっごく大きな声で歌ったのでみんな音痴だったと思うんですけれど(笑)、テンションが爆発して、それが選手一人一人の喜びだったと思います。

――決勝の韓国戦は「厳しい戦いになる」と準決勝が終わったあとに言っていましたが、出足でペースをつかんで、差がつきました。どのような試合展開をしようとゲームを作ったのですか。

決勝では韓国の巧さと3ポイントに対してどうなるかわからない思いがありましたが、最初から飛ばしていこうと思っていました。ものすごく厳しい試合になると思っていましたが、ミーティングでも「自分たちのバスケットをやれば勝てる、気持ちで負けちゃいけない。最後は勝ちたいという気持ちがあるほうが勝つ」と言い合っていました。ディフェンスを前から当たったことで、前半で突き放せたのが勝因です。3Qにちょっと詰められたときも追いつかれるとは思っていませんでしたし、自分たちのバスケットをしていれば大丈夫だと思いました。

――予選ラウンドでは中国と韓国に勝ちましたが、プレーオフで両国と再戦するにあたって「プレーオフは別物」という怖さはなかったですか? それとも、予選ラウンドで勝ったことで、これまでの対戦とは違う気持ちで臨めたのでしょうか。

これまで中国には高さでやられ、韓国には巧さでやられてしまったのですが、脚力で勝つことができたのが今までと違う点だと思います。予選で中国とやったときに脚が動いていて、「あ、これなら中国には勝てるな」と出足から思いました。韓国に対しては予選リーグでは追いつかれて接戦になり、一回逆転されて、追いついて延長になって勝ったので、韓国の粘りというか、韓国の怖さを全員が知ることができました。宮元選手とかは、韓国と対戦するのがはじめての選手もいて最初は怖さがわからなかったと思うのですが、予選で延長を経験できたのはよかったと思います。互いに体力が余っていたときの予選リーグで勝つことかできたので、私は予選の韓国戦が決勝だったと思ってます。

――今大会、全勝することができた要因は何だと思いますか。

ディフェンスです。脚を動かすディフェンスを徹底したことでした。スタートのメンバーだけでなく、ベンチメンバーもいろんな気持ちがあったとは思いますが、それでも我慢して勝利のために全員がやるべきことをやったと思います。試合をするごとにディフェンス力がついたと思います。それにプラスして、インサイド陣の渡嘉敷と間宮の存在は大きかったです。

ジャンプシュートやドライブなど、自分から突破口を開いて得点を取る展開も増えた

――今まで、アジアではもう一歩のところで負けてきました。勝つことでわかったことはありますか。

自分たちのバスケをやれば、どこにも負けないとは思っていました。でも本当の意味でわかったのは、予選リーグの韓国戦で勝った時。自分たちの我慢強さだったり、自分たちのオフェンスがダメだったときにディフェンスを頑張ろうというのが、コートにいる5人もそうだし、ベンチもそう思って出せたと思います。予選リーグで韓国に勝ったことで何かこう吹っ切れたものがあったので、あそこで気持ちが一つになって最後まで突っ走れたと思います。ディフェンスを頑張っていれば自分たちに流れがくると、あの韓国戦でみんなが感じることができたので、あの一勝が大きかったなと思います。

――それは、我慢してディフェンスできたことで「勝ち方がわかった」という手ごたえですか。

はい。苦しいところで我慢することが勝ちにつながるんだと、全員がわかったと思います。我慢することによって流れがきました。大会に入って毎日毎日集中して、向かっていく姿勢がブレなかったことで、一戦一戦やっていくことで本当に一つのチームになった実感がありますね。

――今大会の自分自身の出来は。

この大会に懸けていました。この大会では今までの代表にはなかったアウトサイドを積極的に打って点に絡んでいこうと思っていました。最初から飛ばして、ジャンプシュートや3Pシュートを打てたし、躊躇なく打てたので、以前とは違う自分を出せたと思います。

ポイントガードとしては「絶対に自分が崩れちゃいけない、絶対に自分がやるんだ」と思っていました。誰を使うかという点でも、考えただけでも楽しかったです。渡嘉敷や間宮、ワン(王)のように中で構えてくれる選手がいる。あわせてくれる宮元選手のような3ポイントシューターがいる。ジャンプシュートを打てるシンさん(大神)のような選手がいる。ポイントガードとしてはどこにパスを出してもいいので、楽しんでやれました。

あの……これは書いてほしいんですけど、決勝で会場入りするとき、バスに乗って向かっていたら、同期のクゥ(JX-ENEOS寺田弥生子)から電話がかかってきて「前半から積極的に攻めるんだよ」と言われたんです。「前半から攻めたら疲れるけど頑張るよ」と言ったら、「自分から攻めてリズムを作っていくんだよ!」と強く言われました。もちろん決勝も攻めようとは思ってましたが、試合前は緊張していて決勝ということで頭がいっぱいで、自分で攻めにいくことを忘れていた部分がありました。あの電話がなかったら、前半は様子を見てゲームを作ることに集中していたかもしれません。

――バスに乗っている時というのが、話せる時間としてはナイスタイミングでしたね。

はい。さすが親友だと思いました(笑)。自分としては、攻め続けることは今回だけじゃなく、続けなくてはいけないです。ポイントガードなのでアウトサイドを打つ本数は限られるかもしれませんが、その点は自分の課題として追い込んでやっていきたいです。
 
 

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