シーズン序盤の戦いから戦力分析
“波乱”の東と“順当”な西

文・写真/鈴木栄一  Text & Photo /Eiichi Suzuki

10月8日に通算7シーズン目がスタートしたbjリーグも、各チームがレギュラーシーズン全体の約5分1を消化し、いよいよ各チームの戦力も見えてきた。そこで今回は、11月27日終了時点におけるリーグ戦を振り返り、今シーズンの戦いを占ってみたい。

【イースタン・カンファレンス】
王者・浜松が失速と秋田の躍進。健闘目立つ新規チーム勢                

王者・浜松のつまずき 

太田敦也(浜松)

 東カンファレンスには岩手ビッグブルズ、信州ブレイブウォーリアーズ、千葉ジェッツ、横浜ビーコルセアーズと新規参入4チームがすべて所属。また、昨季上位につけていた東京アパッチが活動休止となるなど、大きく陣容が変わった。そんな中でも代表的な出来事といえば、リーグ2連覇中の王者である浜松・東三河フェニックスの出遅れだった。オフシーズンに長年チームを率いてきた中村和雄HCが退任し、同カンファレンスの秋田ノーザンハピネッツの指揮官に就任するという大きな出来事があったものの、昨季のレギュラーシーズン、ファイナルのダブルMVPであるジェフリー・パーマー、抜群の勝負強さを誇るシューターのウェイン・アーノルドと2人の主力外国人選手が残留。そして日本人も夏に行われた五輪アジア予選で代表に選出されたセンターの太田敦也に大口真洋、岡田慎吾と安定したパフォーマンスを見せる両ガードが在籍しており、中心メンバーのタレントはカンファレンスで頭1つ抜けていると見られていた。
 
 しかし、外国人選手を同時に3人起用できるオン・ザ・コート3(第2Qのみ2人)の中、開幕直前に開催された日韓戦では、パーマー、アーノルド、ジェームス・ピータース、オーダルティ・ブリンクソンと4人が在籍していたが、日韓戦後にブリンクソンを解雇。その結果、シーズン開幕戦にはパーマー、アーノルド、ピータースの3人で臨まなければならなかった。その後も故障したピータースとの契約を解除するなど、ロースターの整備に失敗。開幕週の終了後、東日本大震災が起こる前までチームに在籍していた司令塔ジャーメイン・ディクソンが加入したものの、サイズ不足によるゴール下の弱さは補えず。

 また、守備では豊富な運動量を武器にダブルチームの仕掛け役、攻撃では空いたスペースに走りこんでミドルシュートを決めるなど攻守で貴重な脇役としてチームを支えていた岡田が開幕戦以降はケガで戦線離脱と(腰椎椎間板ヘルニアの治療に専念し、プレイオフでの復帰を目指している)マイナス要素も響き、横浜、千葉と新規参入チームとの連戦となった開幕4試合でまさかの3敗。そこから外国人選手の補強などで持ち直したものの、昨季40勝6敗と圧倒的な強さを誇ったチームは、12試合を終えた時点ですでに5敗。勝ち試合にしても相手を圧倒するような勝ち方は少なく、平凡なスタートに終わっていた。シーズン開幕戦の試合後、河合竜児HCは、「中村さんの真似をしたところで中村さんには勝てない。僕のチームになっていかなければ先はないと思っています」と語っていたが、現時点ではまだまだ河合色というものは見えていない状況だった。

 しかし、11月26日、27日に敵地で行われた因縁の中村HC率いる地区首位、秋田との2連戦に連勝。王者の意地を見せており、これからの巻き返しが楽しみだ。

秋田が好調な理由

マイケル・ガーデナー(秋田)

 一方、申し分のないスタートを切ったのが、中村HCが新たに就任した秋田ノーザンハピネッツ。リーグ参入1年目の昨季は18勝32敗だったのが、今季はここまで10勝4敗。すでに昨季の半分以上の勝ち星を稼いでいる。中村HCの就任を受けて外国人選手をすべて変更。かつて2008-09年シーズンに古巣の浜松でプレイしていたマイケル・ガーデナー、スタンリー・オシッティの両選手と契約。抜群のボールハンドリングとアウトサイドのシュート力を持つガーデナーは、浜松時代と同じく個人プレイに走りがちではあるが、波に乗った時のスリーポイント連続成功など爆発力は健在。また、シーズン途中にかつて大分ヒートデビルズに在籍し、1試合52得点を挙げたこともあるリッキー・ウッズを獲得。ウッズは、198センチと決して大きくはないが、力強いドライブと体勢が崩れてもシュートをねじこむボディバランスの持ち主。外のガーデナーに加え、ゴール下のウッズと2人の強力なスコアラーは、他チームにとって脅威だろう。
 
 また、ここまで秋田がスタートダッシュに成功したのは外国人選手だけでなく、日本人選手の貢献もあってこそ。37歳のベテラン庄司和弘は、ここまでリーグ上位の50%近いスリーポイント成功率をマークするなど、ここ数年では最も状態が良い。また、秋田といえば名門、能代工業高を思い浮かべるバスケファンは多いだろうが、同校出身で田臥勇太(リンク栃木)らと一緒に高校9冠を達成したメンバーである菊池勇樹。そして同じく能代工出身の信平優希は、昨季よりも多くのプレイタイムを与えられ、1年前とは見違えるようなキレのあるプレイを見せている。彼ら“ご当地選手”が試合に出ることは、観客動員アップに向けての大きなアピール材料にもなるはずだ。浜松との対決では連敗を喫してしまったが、エースのガーデナーが欠場というマイナス要素がある中で2試合目はオーバータイムに持ち込むなど、やはり昨季とは全く違う手強いチームになっていることを改めて証明したと言える。

新規チームの健闘、仙台の奮闘
 

モーリス・ハーグロー(千葉)

 新規参入の4チームは、ここまで千葉が8勝6敗、信州が7勝7敗、横浜が5勝7敗、岩手が1勝13敗と、岩手以外は健闘している。特に千葉は11月の頭に秋田との4連戦がありながら(1勝3敗)、貯金を作っているのは見事だ。エーススコアラーで10月の月間MVPを受賞したモーリス・ハーグローは、エリック・ガードーHCとカタールでのクラブ時代から師弟関係にあり、チームの芯がしっかりしている。また、ガードーHCが、開幕までの短期間でよくまとめ上げ、新規チームでありながら統率の取れた戦いを展開しているのが強みだ。
 
 そして最後に忘れてはならないのが、震災によるチーム解散の危機を乗り越えた仙台89ERS。

 震災の影響から総年俸の削減を余儀なくされたことで、大幅なチーム力の低下も危惧されたが、昨シーズンから日本人選手は揃って残留。外国人選手もともに1試合平均で20点近くを挙げるインサイドのオニール・ミムズや、206センチの長身でスリーポイントを得意とするダン・フィッツジェラルドの活躍が光り、ここまで9勝5敗と好スタートをきっている。また、外国人だけでなく、日本人でも地元・仙台出身の志村雄彦、日下光のガード2人が合計で平均15得点以上を挙げるなど、これまでにない奮闘を見せているのが大きい。

2011-2012 シーズン順位(11月27日現在)

1位 秋田(10勝4敗)
2位 浜松(9勝5敗)
3位 仙台(9勝5敗)
4位 千葉(8勝6敗)
5位 新潟(6勝6敗)
6位 長野(7勝7敗)
7位 富山(6勝8敗)
8位 埼玉(5勝7敗)
9位 横浜(5勝7敗)
10位 岩手(1勝13敗)

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