日本に不足していたものは何か
戦いきれなかったチャレンジャー。7位で終わった2つの要因

文・写真/三上 太 Text ・ Photo/Futoshi Mikami


準々決勝で韓国に敗れた時点で日本のロンドンへの道は途切れた。
順位決定戦(5-8位決定戦)ではレバノンに大逆転負けを喫し、
最終戦ではチャイニーズ・タイペイを下して7位で大会を終えた。7位に終わった原因は何か。
日本に足りなかったものは何か。大会を総括する。

蔓延する「勝ち切れない」のメンタリティ                      

「ケガ人が出た中で自分がもっとやらなければならなかった」と竹内公輔

男子日本代表のアジア選手権7位という成績は上出来ではなかったか。主力選手の相次ぐ故障、相手と戦い、そして勝負に勝つためのメンタリティ、フィジカル、スキル、チーム作り…すべてにおいて日本は甘かった。それでも2年前の大会からは3つも順位を上げているのだから――。

ベスト4に入り、ロンドンオリンピックの世界最終予選の出場権を得る3位までには入りたい。その意気込みで臨んだ「第26回FIBAアジア男子バスケットボール選手権大会」。日本は予選1次ラウンドを3連勝、続く2次ラウンドの初戦も勝利し、4連勝と目標に向けて好発進を切った。しかし2次ラウンド2試合目のフィリピン戦で逆転負けを喫すると、翌日の中国戦も敗れた。それでも予選グループを3位で通過し、決勝ラウンドには進んだが、初戦の準々決勝、韓国戦ではなすすべもなく完敗し、ロンドンオリンピックへの道を完全に断たれてしまった。さらには翌日のレバノン戦も逆転で落としてしまい、なんとか最終戦でチャイニーズ・タイペイに勝って7位の座を手に入れたが、結局はこれが現時点での男子日本代表の実力だったと言わざるをえない。

「スピリット(精神)という面では日本人はいいものを持っている。激しくやることも、強度の高いものをやる力も持っている」

5月におこなわれた第6次合宿で、トーマス・ウィスマンヘッドコーチは日本人の精神力についてそう言っていた。その一方、ゲームで戦うためのメンタリティについては「9月までに向上しなければいけないところだ」とも。つまり目的に向かって進もうという気力はあるが、それを実践で体現できない弱さがあるというわけだ。

「だから大会(アジア選手権)前にはあまりアジア諸国とは戦わず、でもアジア選手権の準備として、ほかのいろんな国と戦いたいと考えている。そこでよりタフなチームと対戦することによって、9月までにメンタルタフネスを身につけなければいけない」

「大事な試合で得点が取れなかった」と悔やんだ川村卓也

しかし4ヶ月後、準々決勝で韓国に敗れたあとに指揮官から出た言葉は「選手のメンタリティが不完全」であり、「現状の(メンタルの)弱さが、敗れたフィリピン戦、中国戦、韓国戦ではっきりと露呈してしまった」なのである。

指揮官の言葉どおり、今大会でも日本の肝心な試合で「勝負に勝ち切るメンタリティの欠如」が目に付いた。しかしそれは選手個々の問題だけでない。個々のメンタリティは当然個々が改善すべきことであり、逆に言えば、気の持ち方次第でいかようにでも改善できる。現に大会途中でケガをして、そのパフォーマンスを最後まで発揮しきれなかったが、竹内譲次は中南米遠征を経験したことで自分がもっと攻めなければいけないと感じたことで、これまでにはない強い意志をプレイに込めることができていたのだから。しかし今ここで日本が克服し、手にしなければならない「勝ち切るメンタリティ」とはチームとしてのそれである。

大会を通じた反省点として挙げたキャプテンの網野友雄の言葉にもそれが表れている。

「悪いプレイが続くとそれが乗り移ったかのように周りに伝染してしまう状況があったので、そこを断ち切るような精神力はもっともっと鍛えていかなければいけない」

一人ひとりが戦う意志を持つことはむろん重要だが、誰かが崩れそうなときにバックアップし、また同じステージに引き上げなければならない。負の連鎖はバスケットではよくあることだが、その「バスケットではよくあること」をいかにチームで消していくかが今の日本代表には求められるのだ。たとえば「シュートは水物だ」とよく言われる。だがそれを言っていいのは――極論だが――上位に位置するチームだけであり、チャレンジャーとしてその上位チームを倒し、自らが上位チームとして名を挙げようとするのであれば、そういったバスケットの格言めいたものはすべて排除して考えなくてはいけない。

ウィスマン・ヘッドコーチは大会総括として「今後は他のチームが脅威だと思うチームになっていかなければいけない」と言っているが、そのためにはまずメンタリティが重要になってくる。もちろん戦略・戦術、スキル、そしてフィジカルも重要である。現状、日本がいい流れをつかめば対戦国はフィジカルの優位さを使ってその流れを断ち切りに来るわけだから、「フィジカルが向上すればより自信につながって、メンタルタフネスも育っていくと思う」というウィスマンヘッドコーチの言葉も一理ある。だがフィジカルは一朝一夕で身につくものではない。戦略・戦術、スキルもまた然り。だから、まずはメンタリティ、簡単に言ってしまえば戦う気持ちを前面に押し出して、ベンチメンバーを含めた全員が一体となって、それを相手に誇示していくことから始めるべきではないか。スタッフも含めたチームが一体となって相手に立ち向かわなければ、チームとして「勝負に勝ち切るメンタリティ」は手に入れることができない。

機能不全に陥ったフルコートバスケット

ディフェンスが武器だったが、大事な場面で引いてしまった

メンタリティと合わせて、今大会の敗因として「準備不足」が挙げられる。もちろん春から準備を重ねてきたし、もっといえば昨年からウィスマン体制となり、ウィスマンのバスケットを多くの選手が理解しつつある。しかし結果として田臥勇太を筆頭に、木下博之、青野文彦らがケガで戦線離脱。柏木真介、川村卓也がケガから復帰したものの、最終メンバーにグループ2から昇格組、正中岳城と松井啓十郎、太田敦也をギリギリで入れる布陣になってしまった。彼らのパフォーマンスが悪いと言っているわけではない。だがチームで戦うことをベースとする日本にとって、ギリギリで入ってきたメンバーとチームケミストリーを調和させることは難しかったはずだ。

特にフルコートバスケットを展開したい日本にとって司令塔ともいうべきポイントガードの存在は特に大きな意味を持つ。そのポジションにおいて、田臥が抜け、木下が抜け、戻ってきた柏木が2試合目のヨルダン戦で負傷してからは実質、昇格組である正中がオフェンスをコントロールしなければならなかった。だがしかし、それは正中個人にとっても大きな負担であった。5-8位決定戦のレバノン戦に敗れた後、正中はスタメンに抜擢されたことに対して不安はなかったと言いながら、こう続けている。

「自分のなかでそういう(スタメン起用の)準備ができていなかった。(バックアップメンバーとして)チームを勢いづかせたり、アップテンポなリズムを作るという気持ちでは準備してきましたけど、40分間、チームオフェンス、チームディフェンスのデザインをする用意は自分の中ではできていなかったです」

これは正中個人の問題ではない。柏木がケガをしたとき、たとえば石崎巧をポイントガードとして使う手はなかったのか。ウィスマンヘッドコーチは「今年はボールをプッシュすることを強調したいと考えていた」と言い、だからクイックネスのない石崎はポイントガードとしての構想からは外れていたという。確かに石崎には柏木や正中のようなクイックネスはない。しかし柏木が韓国戦のあとに吐露したように「走って点を取れているときはいい。でもそれがダメになったときに、メリハリをつけるためにもしっかりとコントロールするバスケットがあってもいいのではないか。そのあとにまた走ればいい」。

野球で100キロのストレートのあとに140キロのストレートを投げ込めば、その球が150キロにも見えるように、テンポにメリハリを利かせることが、より日本の速さを強調できる。多少のスピードダウンも全体を通して見れば、いい流れにつながる可能性は十分に秘めているわけだ。その準備をしておくべきだった。

積極的に攻めていただけに、竹内譲次の戦線離脱は痛かった

むろん選手起用はヘッドコーチが決めることであり、石崎をポイントガードとして使うのも使わないのもヘッドコーチの一存で決まっていい。石崎ではなく、ほかの誰かを起用するのでもいいが、中国戦で起用した桜井良太はあきらかにポイントガードとしてフィットしていなかった。そういったことも含め、さまざまな準備をして――それは相手が準備している以上の準備をして大会に臨まなければ、チャレンジャーである日本が勝機を見いだすことは難しい。所属チームとの兼ね合いなど、練習時間の制限もあるだろう。それでも今の日本は多くの引き出しを持つ必要がある。「相手の試合に乗るのではなく、戦うこと、自分たちが主導権を握ることがもっともっと必要になってくる(ウィスマンヘッドコーチ)」のであればなおのこと、常に先手、先手を打たなければ、日本の未来はない。

ヘッドコーチだけはなく、選手もまたすぐに次への準備を始めなければならない。今シーズンのJBL、bjリーグが間もなく開幕するが、国内での勝敗に一喜一憂せず、常に“世界基準”で自らのプレイを判断してほしい。今大会で殻を破りつつあった竹内譲次は最後にこう言っている。

「今後、自分が成長していく中で、他国も成長していくと思う。その他国の成長スピードに負けないように、他国の成長スピードよりも上げていかないと(他国には)到達できないと思うので、そこを意識して取り組んでいきたいです」

ロンドンオリンピック出場の夢は潰えた。しかしこれですべてが終わったわけではない。この経験をいかに捉え、反省点をどう克服していくか。ハヤブサたちに羽を休めている時間はない。