インカレ因縁の対決
オーバータイムの死闘――東海大vs明治大

文/清水広美  写真/加藤誠夫  Text/Hiromi Shimizu

 大学ナンバーワンをかけて争われた第63回全日本大学選手権大会。今年のインカレもドラマがたくさん生まれた。試合の数だけ、チームの数だけ、いやそれ以上のストーリーがある。
 大会一の激戦になった東海vs明治戦をレポート。この試合が今大会の大きなキーポイントとなったのだ。

東海大 77 (13-11. 13-15. 19-23. 22-18. 10-8) 75 明治大

 
熱すぎる結末。オーバータイムの死闘!                                          

明治はリーグ戦終盤から入替戦にかけて、4年生の佐藤、田村、岸本を中心にようやくチームの形ができた

 コートを出た通路の奥では、明治大・塚本ヘッドコーチが涙をこらえることができない選手たちを集め、叫んでいた。

「進化したんだ!  4年の力だ。よくやったって誇りに思え! 相手はリーグ2位のチームだよ。オーバータイムまでいった。これだけの能力があるんだ。田村攻めてた! (佐藤)卓哉、(岸本)行央、頑張った! これを来季につなげていこうよ。泣いてるだけじゃだめ。次の行動をどうするか考えよう、つなげよう。NICE GAME! NICE GAME! NICE GAME !!!」

 称えられてなお、すすり泣きは一層大きくなった。

 男子2回戦の会場となったのは墨田区総合体育館。いわゆる、スイート16からエリート8に絞られる戦いは、オールジャパン出場権がかかった試合となる。負ければ4年はこれがラストゲーム。下位回戦とはいえ、熱い試合になるのも当然のことだ。

 館内のアナウンスが、「観客席となっている両サイドの柵にもたれると危険」、という警告を何回も繰り返す。すでにエンドラインの観客席は満員御礼だ。予想された“入場制限”も16時55分にかけられることになった。そんな殺伐とした中、繰り広げられていたのがBコートの東海大対明治大の一戦だった。

仲間に声をかけながら、インサイドで奮闘した満原。21得点、15リバウンド

 かたやリーグ2位の東海、かたや入替戦で中央大を3戦目にもつれこんだ末に辛くも降格を免れた明治。しかし、いったん試合か始まってしまえば、そんなランキングは関係ない。

 さかのぼること、2か月半前のリーグ戦開幕日。明治・塚本ヘッドコーチは「下級生を使っているから、うちは時間がかかる」とぼやいていた。ディフェンスは相手チームにさくっとベースラインを明け渡してしまうほど、“ザル”ディフェンス。ルーキーたちを多数起用しているとはいえ、チームディフェンス一つとっても、これでは時間がかかる。案の定、試合が終わってからも大学に戻って練習があることもしばしば耳に入ってきた。

 早々に入替戦も決まった。だが、そんな明治もリーグ終盤からは上昇気流に乗る。入替戦も初戦こそ敗れたが、したたかな粘り強さを発揮するようになり、2、3戦と連勝。その原動力となったのが、佐藤、田村、岸本の4年の3人の奮闘だ。田村が意欲的にゴールに挑み、皆川、土井、西川、中東ら下級生を押し上げる。バックコートの佐藤、岸本がルーキーの安藤とともに3ガード体制になった時の迫力は、東海大に一歩も引けを取らない。

 東海も明治の起点となる佐藤に対し、森田がピタリとフェイスガード。他の選手がフリースローの時も、対峙するその森田の執拗なマークがよっぽど嫌だったのか、避ける佐藤がしまいには逆側のエンドラインまで下がったほど。さらに三浦を投入し、明治のボールマンにダブルチームを仕掛けて成功。“ディフェンスの東海大”の意地がある。もっとも、佐藤自身もバックコートで待ち構え、三浦からテイクチャージを奪い、したり顔を見せる。

 最初から最後までクロスゲーム。勝負の行方は最後までもつれ、どっちに転んでもおかしくないゲームだった。

延長へ持ち込む同点弾を決めた田村。渾身のガッツポーズ

 4Q、残り7.8秒、安藤からのアシストを受け、左45度から田村がスリーを沈めて、明治が同点に追いつく。どよめきと喚声が沸き起こる。東海67-67明治。ついに延長に突入だ。

 デッドヒートは続く。狩野が放ったスリーのこぼれ球を田中がタップで押し込めば、田村がベースラインドライブで返す。鍛え上げられた肉体、インサイドがぶつかりあう壮絶なるリバウンド争い。ここで明治は岸本が入り、3ガードと必勝スタイルに打って出る。佐藤のリードからルーキー土井が決めれば、東海は田中のこぼれ球を満原がタップで押し込む。スコアは73オール。 ルーキー安藤が堂々のゴールを決め、ガッツポーズ。残り40.4秒。東海は、森田からゴール下の満原へとホットラインが通り、34.4秒には振り出しに戻す。ここで明治がタイムアウトを請求する。 

 このまま明治が金星をつかむのか。いや、ここで終わる東海ではないだろう。両チームのベンチ、応援席、観客席でさまざまな思いが交錯する。

 そして、この場面で東海大は賭けに出た。身体を張ってゴール下で相手を蹴散らしていた坂本を下げ、この試合まったく当たっていなかったキャプテン三浦が交代を告げる。

 明治のラストオフェンスは、この日両チーム最多の24点をねじ込んでいた田村。そのシュートがこぼれ、満原がリバウンドをもぎ取った。もうラスト1チャンスしかない。

劇的な幕切れで死闘にピリオド。シュートを決めた三浦のもとにチームメイトが駆け寄る。いちばんに駆けつけたのは満原

「(三浦への)ラストパスは自分でした。リバウンドを取ったものの、ディフェンスが当たってきていて、本当ならば自分がそのまま突っ込んでいくしかない。でも、時間がない。前に洋平(三浦)が走っているのが見えました。ギリギリの時間の中で、『洋平だったら何とかしてくれるんじゃないか』って一瞬よぎったんです。案の定、決めてくれて、オオオ!!  って叫びながら、一番に飛びつきましたが、洋平は何が起こったのかわからないような、ポカンとした顔をしてました(笑)」(満原)

 ためらいなく放たれたブザービータージャンプショットで、さよなら勝ちを決めたポカン顔の三浦に、コート外からシーガルスたちがいっせいにコートになだれ込み、三浦に駆け寄った。このとき、スコアは77-75を示していた。

 

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