準優勝・東海大
全力で挑み続け、成長した先に見つけた答え

文/松原貴実  写真/一柳英男  Text/Takami Matsubara

 インカレ2011  準優勝 東海大

明治大戦で一度死にかけたチームは、試練を乗り越え、さらなる結束を生んだ。写真は2回戦・明治大戦より(写真/加藤誠夫)

 今大会の決勝戦は誰もが認める名勝負だった。個人技、経験値を含めた総合力ではやや分があると思われた青山学院大に真っ向から挑んだ東海大。「勝ちたい」気持ちでは一歩も退かなかった気迫が決勝にふさわしい白熱戦を生んだ。

 主力の故障からスタートした春、そこから全員で目指してきたインカレ決勝の舞台。敗れはしたものの、東海大はそこで確かなチームの『成長』を披露した。
 

 

 

真っ向勝負したからこその大黒柱の言葉。「全力で戦ったことに悔いはない」            

青学との決勝は、技術と気持ちがぶつかり合った真っ向勝負

 昨年、圧倒的強さで4冠(新人戦、春のトーナメント、秋のリーグ戦、インカレ)を制した青山学院大は、今年も危な気ない戦いぶりで3タイトルを奪い、当然のことながらインカレ優勝候補の筆頭に挙げられていた。それも卓越したチーム力を誇る『抜きん出た筆頭』として「インカレは青学で決まりだろう」という声があちこちから聞こえてきた。

 だが、同時にその声のあとにはもう一つの言葉が続く。「もし、青学大の優勝を阻むチームがあるとすれば、それは東海大しかないだろう」

  春のトーナメント準決勝で青学大に82-62の大差で敗れた東海大は、大黒柱である満原の長引く腰痛、キャプテン三浦のケガなどでチーム状態は夏を迎えても万全とは言い難かった。だが、その状況が「自分たちが頑張らねば」という意識を生み、選手それぞれの発奮につながる。オールラウンドに高い能力を発揮する2年生エースの田中、精度の高い3Pに定評がある狩野、さらには「センターの坂本がたくましくなったこと、ポイントガードの森田が我慢を覚えたこと、この2人の成長が何よりより大きかった」(陸川監督)

  満原が調子を取り戻したリーグ戦では青学大を相手に前半15点のビハインドを覆して大逆転勝利、2戦目は4点差で敗れはしたもののつかんだ手ごたえは大きかったはずだ。

4年間で我慢を覚えた司令塔・森田

 ただしチームにはリーグ戦を通しての懸念事項もあった。4敗のうち3敗が慶應大(リーグ10位)、日本大(同7位)、早稲田大(同6位)といずれも下位チームから喫したものであったこと。「相手をなめているとかいう気持ちはなかったが、どこかに気の緩みがあったかもしれない」(満原)、「リードされてもどこかで逆転できるだろうと思っていた。が、そのうち流れに乗った相手の勢いに押されてしまっていた」(田中)。個人技で相手をねじ伏せるのではなく「チーム力で戦うのがうちのバスケット」(三浦)という東海大だけに5人の気持ちが揃わなかった時には思わぬもろさを露呈することがある。トーナメントゆえに起こり得る『番狂わせ』、それがインカレの怖さだ。「道程の落とし穴に気をつけろ」それは言葉にしなくともチーム全員がわかっていたはずだった。 

 ところが、その落とし穴は2回戦(対明治大)に待ち受けていた。明治大とは昨大会でも対戦し、延長戦のブザービーターで敗れている。その苦い経験が『リベンジ』という気負いを生んだのかもしれない、あるいはリーグ9位ながら死闘の入替戦を勝ち抜いた明治大に新たな勢いが生まれていたのかもしれない。

 リーグ2位と9位、『力差』があるはずのゲームは最後までもつれた。東海大が3点をリードした残り13秒、明治大は田村が見事に同点3Pを決めて延長戦に突入する。その5分間も両者譲らず75-75。勝負を決めたのはノータイムに放ったキャプテン三浦の執念の1本だった。77-75。まさに薄氷を踏む思いの勝利。だが、「これでチームの目が覚めた」という陸川監督の言葉どおり、この激戦を制し、落とし穴を回避したことで選手たちの顔つきは目に見えて変化した。

 続く準々決勝の日本大戦、準決勝の拓殖大戦は立ち上がりから終始主導権を握り、相手に反撃の糸口すら与えない集中力でともに快勝。「決勝戦では絶対うちが勝ってみせます!」と言い切る選手たちにはこれまでにないエネルギーがみなぎっているように見えた。

すでにエースとしての働きを見せる2年生の田中。青学・比江島とのマッチアップは見ごたえがあった

 そのエネルギーは決勝戦での好プレイにつながる。スタート直後、坂本が連続2つのファウルでベンチに下がったことが響き、1Qは9点のリードを許すが、2Qに入ると持ち味である執拗なディフェンスで青学大の攻撃を5分間沈黙させ逆転に成功。3点のリードを奪って前半を終了した。各ポジションに現在の大学バスケットボール界を代表する選手がそろう青学大はどこからでも攻められる高いオフェンス力を誇る。中でも図抜けた身体能力を持つ比江島と高確率シューター辻を抑えるのは至難の業だ。だが、前半、この2人にマッチアップした田中、狩野の粘り強い守りが光った。青学大インサイドの2大看板、永吉と張本に対しては満原、坂本が4年生の意地を見せた。3Q6分、45-36とリードを広げた時点まで流れは確かに東海大のものだった。

 だが、その6分過ぎ、田中が立て続けに3つ目のファウルを犯しベンチに下がると、青学大のエース比江島が覚醒する。ファウルから得た6本のフリースローを正確に沈めた後は豪快なダンクで東海大の流れを断ち切り、一気に主導権を奪い返した。息を吹き返した青学大は4Qに入っても先を走りリードを広げる。後手に回った東海大は、それでも残り3分に3点差まで詰め寄る粘りを見せ場内を沸かせるが、反撃もここままで。66-77でタイムアップのブザーが鳴り響いた瞬間、東海大のインカレ5年ぶり優勝の夢はついえた。

「立てたゲームプランに沿って選手たちはよく戦ってくれた。ただ誤算は田中のファウルトラブルだった」と陸川監督。惜しまれたのはゴール下のイージーシュートミス、フリースローの失敗。普段なら決めている1本、あそこで決まっていたら…と悔やまれる1本のミスは決勝の舞台に初めて上がった『気持ちの揺れ』が招いたものだったかもしれない。

 試合終了後の記者会見場でうなだれる選手たちの姿は痛々しかったが、裏を返せば優勝に懸ける気持ちがそれほど強かったということ。そして、その気持ちはコートの上ではっきりと示され、観る者の胸にしっかりと届いた。

ベンチも応援団も部員が一体となって戦うのが東海大

「学生のスポーツはただ勝った負けただけではない。勝つことはもちろん重要だが、もっと重要なのは勝つことを目指したチームがどう成長していけるかということ。選手たちが技術だけでなく、人間としてどんなふうに成長していけるかということ」――いつか陸川監督が語った言葉を思い出す。

 ならば、学生最後の大会を終えた今年のチームの成長は? 聞き忘れた問いの答えは満原の最後の一言にあった。
「優勝できなかった悔しさはありますが、自分たちは全力で戦った。そのことに悔いはありません」