U17世界選手権開幕
世界に挑戦し、育成世代の強化体制を構築する大会に

文・写真/小永吉陽子

ドバイ出発前にナショナルトレーニングセンターに集合したU17代表チーム。福岡大附大濠の牧隼利選手は試合後に空港に直行したため、集合写真には写っていないが、選手団は元気に出発した

U17世界選手権開幕

世界に挑戦し、
育成世代の強化体制を構築する大会に

8月8日~16日まで「第3回U17世界選手権」がアラブ首長国連邦(UAE)のドバイにて開催される。
U17世代としては初出場。A代表が世界の舞台に立てない今、日本にとっては待望の檜舞台となる。
インターハイ決勝戦の前日に決戦の地・ドバイに出発という悪条件の中で戦うU17代表。
1ページ目には「アンダーカテゴリーのチーム作りの背景」を、
2ページ目で大会に向けた「井手口孝ヘッドコーチ(福岡第一高)のインタビュー」を紹介する。
 
◆FIBA公式サイト(英語版)◆大会特設サイト(日本バスケットボール協会)
 
 

「世界に出る僕らから、日本の環境を変えていかなくてはならない」
(井手口ヘッドコーチ)

ドバイに出発前、ナショナルトレーニングセンターで決意を表明するキャプテンの前田悟(山形南)

 日本は世界からはるか遠ざかっている。自力で世界の切符をつかんだのは、A代表では98年の世界選手権。U18代表では99年世界選手権まで遡らなければならない。

 2年前にU18代表が佐藤久夫ヘッドコーチ(明成高)を中心に、緻密なチーム作りで3枚の切符をかけて世界進出にチャレンジしたが、惜しくも4位に終わっている(イランとの3位決定戦は83-87で惜敗)。2年前のU18アジア選手権は、中国、韓国、イランの3強が、主力選手を即ナショナルチームに送り出すようなハイレベルな大会だった。アジアの力関係からみれば、大健闘の4位だったといえるが、それでも、U18世代以降のカテゴリーでは世界から遠ざかっている現状がある。U16世代がこじ開けた世界への扉を、今大会から続けていかなくてはならない。

 しかし、世界の檜舞台に出場するチャンスだというのに、今大会に向けては万全な強化体制が取れなかった。4月にU18アジア選手権(8月19日~28日/カタール・ドーハ)の選考を兼ねたドイツ遠征を行ったのと、インターハイ予選とブロック予選の合間に3~4日の合宿を2回行ったのみで、直前合宿はできなかった。理由は8月2日~7日までインターハイが行われていたからだ。

 夏休みに大会が多い日本の高校生と、9月始まりの諸外国ではスケジュールが噛み合わない。これまでも、インターハイ前後にアンダーカテゴリー男女の国際大会があることは数えきれないほどあった。1999年~2000年代にU18代表のヘッドコーチを務めた佐藤久夫コーチ(明成)は常に「将来につながる経験が大切」というモットーを持ち、国際大会を優先して戦うシステム作りを努力して築き上げてきた。しかし、その理解を各高校に得るには苦労した背景がある。

 今回、インターハイと会期が重なるということで、U17代表は日本協会を通じて、インターハイの日程変更を高体連に申し出た。2002年には、男子のU18アジア選手権(当時のアジアジュニア選手権)が重なったために、ウインタ―カップの日程を年明けにずらして行った前例もある。しかし、全競技が行われる高校総体では、バスケットボール競技だけのために日程を変更することは不可能だった。

粘り強いディフェンスと団結で世界選手権の切符をつかみ取った(写真はU16アジア選手権より/写真提供 日本バスケットボール協会)

「U17に出る選手のほとんどの選手がインターハイに出場することを考えれば、やはりインターハイに出させてあげたい。明成の佐藤久夫先生は、これまで自身がU18世代を預かっていた経験から『(明成高の)八村や納見はインターハイはいいから、世界選手権に向けて強化してほしい』という言葉もかけてくれました。高校界の先生方は理解を持って結束しています。

 しかし、公式戦は心身ともに成長できる機会でもあります。選ばれたチームの選手はどこもしっかりと練習するチームですし、学校側もインターハイに出場したい思いがある。FIBAの大会は前日の代表者会議までに選手がパスポートチェックを受けなければなりませんが、これはコピーを提出すれば可能だという知らせを受けました。日本協会と協議の結果、U17代表はインターハイも国際大会も両方を経験し、決勝を終えてからドバイに出発しようと決断しました」と井手口ヘッドコーチは状況を説明する。コーチングスタッフにとっても苦渋の決断だったのだ。

 しかし、今年の5月に大会組織委員会から、「パスポートチェックにおいてコピーは不可能。パスポートは本人が持参しなければならない」という通達が入った。そのため、準決勝を終えた8月7日に出発日を変更せざるを得ないスケジュールになったのだ。

 確かに高校界はインターハイと世界大会の両方を選び、そのために万全な強化をしてU17世界選手権に臨めなかったかもしれない。2020年東京五輪に活躍する選手を生むには、国際大会優先が望ましい。だが現状は、U18世代の強化は高校界の先生方に任せっきりである。今後、本気でオリンピック出場を目指すのであれば、日本協会が指揮して高校生の大会スケジュールを考慮し、育成世代の環境作りから始めなければならない。これは、日本全体の育成の問題として考えなければならない最重要課題だ。

今大会はジュニアエリートアカデミーを指揮するトーステン・ロイブル氏がスポーツ・ディレクターとしてU17世界選手権に同行する

 ドバイに出発前、ナショナルトレーニングセンターに集合したU17の選手たちは、ジョーンズカップに向けて練習する日本代表の練習を見学していた。日本代表の長谷川健志ヘッドコーチは言う。

「インターハイは総合大会なので日程がずらせない理由はよくわかります。でも、インターハイの会期を変更できるだけの声を一丸になって出していけるバスケット界にしていかなければならない。またアンダーカテゴリーの強化スケジュールも考慮しなければなりません。アンダーカテゴリーから強化が必要だということを理解してもらうためには、日本代表が強くなって結果を出さなければならないし、日本におけるバスケットボールの位置を多くの人が把握して、危機感を持って強化をしなければならない」と声を発する。井手口ヘッドコーチも同じ思いだ。

「今、日本ではU17のカテゴリーしか世界に出ていません。世界の強豪とこういうふうに戦ったという姿を残して、世界に出る僕らから環境を変えていかなくてはならないのだと思います。今回は全員で世界の舞台を感じて、日本のバスケットホール界全体に伝えることから始めたいと思います。日本の良さであるファミリーのような団結力で戦ってきます」(井手口ヘッドコーチ)

 今大会はスポーツディレクターとして、平成24年度から行っているジュニアエリートアカデミー(ジュニア世代の長身者・長身者候補を育成するトレーニングキャンプ)を総括・指揮するトーステン・ロイブル氏がドバイに同行する。欧米事情に詳しいロイブル氏の参加は心強い。世界に挑戦することはもちろんのこと、世界のアンダーカテゴリーの事情を把握し、育成環境の基盤を作る大会としたい。
 
 
◆次ページは井手口孝ヘッドコーチに「U17世界選手権に向けて」のインタビュー
(取材日/8月5日)
 
 

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