桜花学園高 井上眞一コーチ
「力がない」と言われ続けたチームが見せた“勝利への執念”

取材・文/舟山緑    写真/一柳英男

「今年の桜花は力が落ちる」という周りの評価をバネに見事に優勝を飾った桜花学園。チームに脈々と流れる「気持ちの強さ」を見せつけた

 女子決勝戦 桜花学園(愛知)vs 昭和学院(千葉)

「力がない」と言われ続けたチームが見せた“勝利への執念”

 
184㎝のエース#12赤穂さくらを擁し、機動力のあるガード陣を揃えた昭和学院。
対する桜花学園は、「今年はディフェンスのチーム。エースがいない」と
井上眞一コーチはどこまでも控えめに語っていた。
しかし、終わってみれば桜花学園の3年連続20回目の優勝でインターハイは幕を閉じた。
「エース不在」の中、高さを誇る昭和をねじ伏せたのは、
桜花の選手一人ひとりの“勝利への執念”だった。
桜花の戦いぶりを振り返るとともに、次ページには井上コーチのインタビューを紹介する。
 
 
■第4クォーター、拮抗した場面で光った#7加藤、#4高辻の勝負強さ

決勝戦が行われた千葉・八千代市市民体育館には、「地元・千葉で悲願の優勝を」と、昭和学院を応援する大歓声が試合前から響き渡っていた。そんな“完全アウェー状態”を跳ね返すかのように桜花学園も、1年生の#15馬瓜ステファニーが音頭をとり、大きな円陣を組んで自らを奮い立たせるような雄叫びをあげていた。

試合は前半、桜花が主導権を握り、10点のリードを奪う。立ち上がりこそ昭和が#12赤穂さくらの連続ゴール、#6渡部友里奈のドライブで10-4とリードしたが、第1クォーター半ばからは桜花がしだいにペースを握っていった。その中心にいたのは、ガードの#4高辻真子(まこ)とセンターフォワードの#7加藤優希だった。高辻はブレークに走り、加藤はローポストやハイポストからのシュートでチームを牽引した。

決勝戦でチームハイの24得点をマークした#7加藤優希。大事な場面での踏ん張りがチームを勝利に導いた

今年の桜花は、昨年の主力がごっそりと抜けてスタートが一新した。センターの#15馬瓜ステファニー(181㎝)はまだ1年生。U-17日本代表ではディフェンス要員として2番に起用されたが、ポストプレーでは昭和の3年生センター赤穂さくらとの実力差は歴然だった。

3年のセンターフォワードの#7加藤(178㎝)は1年次から控えとして試合には出てきたが、「今年のエースは加藤」と言えるまでには至っていない。井上コーチは「ムラがある。まだまだ自覚と責任感が足りない」と言い続けてきた。爆発的に点が獲れる選手ではないし、チームを強力に引っ張っていくタイプでもない。持ち味は、競った中での球際に強いことだった。

その加藤が、決勝戦では態勢を崩しながら何度も難しいシュートを決めた。ローポストではディフェンスにチェックされながらもねじ込むようにゴールをゲット。1対1からのターンシュートやドライブイン、ブレークからのレイアップと、多彩なシュートを見せた。特に第4クォーターの残り5分、56-56で昭和のタイムアウト明けに3連続ゴールを奪取したのは見事だった。ドライブからのジャンプショットにゴール下シュート、速攻に走って62-56と一気に昭和を突き放した場面だ。

その後、#12赤穂に1ゴールを返されたが、さらに加藤がハイポストから放ったジャンプショットが決まって64-58。時間は残り2分52秒。昭和が少し息切れしている場面だっただけに、この1本は大きかった。加藤はチームハイの24得点。昭和の赤穂(さ)と同じ得点をかせいで優勝に大きく貢献した。

加藤とともに活躍が光ったのが、キャプテンであり司令塔である高辻だ。立ち上がりにはスティールからの先制点を挙げ、ブレークからのジャンプショットでチームを牽引した。試合の終盤、昭和に逆転を許し、6点リードをされても高辻の集中力は切れなかった。自らブレークに走り、昭和の#6渡部友里奈がドライブインを決めれば、高辻も果敢にドライブで切っていき、56-56とイーブンに戻している。終盤、加藤の連続ゴールも高辻の好アシストから生まれ、残り58秒で#6若原が決めたゴール下シュートも高辻のパスからだった。井上コーチは「高辻がうまくゲームをコントロールしてくれた」と高く評価した。

■1年生センター馬瓜の踏ん張りと昭和の動きを封じ込んだディフェンス力

昭和の大黒柱である#12赤穂さくらを守る1年の#15馬瓜ステファニー

「今年はディフェンスのチーム」と井上コーチが語るように、桜花のディフェンスの足は第4クォーターまで衰えなかった。高辻も加藤も「自分たちの強みはディフェンスからのブレーク。高さでは相手が上だが、走れば大丈夫だと思っていた」と語る。その言葉どおり、桜花は前半も後半も大事なところで粘り強くディフェンスでプレッシャーをかけ続け、「ここぞ!」という勝負どころで自分たちが得意とするブレークに走って粘る昭和を突き放した。

昭和の大黒柱である赤穂にマッチアップした1年生センターの馬瓜も、要所でいい働きを見せた。馬瓜は前半で3ファウル。第4クォーターも4ファウルまで追い詰められたが、加藤やガード陣の的確なヘルプもあって、最後まで踏ん張りを見せ、赤穂に簡単にポストプレーをさせなかった。ディフェンス面だけでなく、1対1からフェイクをかけてのドライブは見事だったし、第4クォーターで加藤のこぼれ玉を決めたリバウンドシュートも貴重な2点となった。

リバウンドやルーズボールなど地味なところでがんばっていたのが、#6若原愛美だ。どの試合でも身体を張ってリバウンドに飛び込み、ゴールにアタックした。昭和の鈴木親光コーチに「想定外だった」と言わしめたのが、第1クォーター、残り1分を切って若原が決めた3ポイントだった。さらに#9遠藤桐も3ポイントを沈めて23-13と第1クォーターをリード。さらに若原は、第2クォーターでも2本目の3ポイントを決めている。後半もディフェンスでプレッシャーをかけ続け、昭和ディフェンスのスキを突いて“ダメ押し”のゴール下シュートを決めた。

前半、2本の3ポイントを決めてチームを波に乗せた#6若原愛美。身体をはったリバウンドでも貢献

キャプテンの高辻が言う。「先生からも周りからも『今年は力がない』と言われ続けてきました。だからこそ、みんなの気持ちの中に『絶対に優勝したい!』という気持ちが強かった」と。その言葉通り、決勝戦の桜花からは「勝利への執念」が強くにじみ出ていた。高辻、加藤がその中心にいたが、若原や2年の遠藤、控えセンター#8脇梨奈乃のプレーにも、そして1年の馬瓜にもその気持ちの強さがよく出ていた。昭和の粘りに遭いながらも相手を突き放したのは、そんな気持ちの強さだった。

超高校級のセンター赤穂さくらに思うようなプレーをさせなかったディフェンス力と気持ちの強さ。「エース不在」の中でも、歴代の選手が代々、つないできた「桜花の強さ」を自分たちもまた体現してみせた瞬間だった。
 
 
◆次ページは、桜花学園高の井上眞一コーチのインタビュー
 
 

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