トーマス・ウィスマンHC総括インタビュー
露呈されたメンタルの弱さと日本のこれから

取材・文・写真/小永吉陽子  取材/松原貴実、三上 太  Interview /Yoko Konagayoshi Takami Matsubara Futoshi Mikami 


ロンドンへの道は遠かった――。
日本は2次リーグに入ると勝負となったフィリピン戦にミスから崩れ、
中国には26点差で敗れてグループ3位。
準々決勝では韓国との対戦となったが、韓国の前に抵抗できずに67-86で完敗。日本のロンドン行きは途絶えた。
 準々決勝後と、7位決定戦後に現地で聞いたトーマス・ウィスマンHCによる総括インタビュー。
【1】では「失望」という言葉がさかんに出た韓国戦後の談話。

 

準々決勝で韓国に完敗。選手のメンタリティが不完全だった

67-86──。19点差で完敗だった韓国戦

――勝負できなかった準々決勝・韓国戦を振り返って。

この大会でいちばん重要な試合だったのに、一言で言うと「失望」しています。本当に残念でしかたないということに尽きます。今回私たちは4位内に入ること、もしくはオリンピック最終予選のチケットを確実に手にすることが目標だったのに、ここで断たれることになったのは残念でしかたありません。出足からかなり受け身な状況で試合を始めてしまって、本来の私たちの動きができなかったし、全体を通してシュートをきっちり決めることができなかったのが問題だったと思います。

「これだけのパフォーマンスしかできないのか」という点は今でも疑問ですし、それに関しては残念でしかたありません。しかも、韓国相手に私たちはたったこれだけの点数しか取ることができないのか。いったい、この状況をこれからどう改善していけばいいのか、ハッキリと原因はつかみきれていませんし、ここからどう学べばいいのか、頭の中で整理できていません。

1Qで22点も取られ、試合を通してはオフェンス・リバウンドを20本取られたことはまったく言い訳はできません。私たちが相手に乗るのではなくて、試合で戦うこと。点を取られたら取り返すように、私たちが試合の主導権を握ることが必要になると思います。それには、フィジカルも大切ですけれど、メンタルの強さとタフさを持つことも課題で、それは今だけの問題ではなく、ずっと強化活動をしていく中での課題です。私たちの現状の弱さというのが、このフィリピン、中国、韓国の3戦でハッキリと露呈され、課題がハッキリと表に出てきました。

あとひとつ残念なのは、この大会を通して感じていたことですが、選手たちのメンタリティが不完全だったという気がします。今日の試合に関しては、竹内、柏木がケガで万全ではなかったといっても(※)、今日の試合でいちばんのベストを尽くしていたのはこの2人です。実際、私としてはケガをしている選手がいるからこそ、チームとしてもっと強い姿勢を示してもらいたいにもかかわらず、ケガをしている選手たちのほうが頑張っている。ケガをしていない選手たちがケガをしている選手のことを心配して、影響を受けてしまって、弱い状態になってしまったのが問題。今後はそういうことは起こってはならないことです。

ただ、私が言いたいのは、日本の選手たちは素晴らしい選手ですし、素晴らしいグループですし、選手たちの可能性を信じています。ですから、ここから何を学ぶか、改善していくかを見つけていく必要があります。ここで落ち込んでしまうのではなく、現実を受け入れて前へ前へと改善していかなくてはなりません。私たちは改善できるだけの才能と努力ができるチームだと思っています。

※柏木真介は1次リーグのヨルダン戦で右太ももに肉離れ、竹内譲次は2次リーグのフィリピン戦で左側胸部挫傷(左側のアバラの打撲)を負った。竹内は骨に異常はないため2次リーグの中国戦には出場したものの、痛みがひどくなり、1Q終盤にベンチに退いた。

韓国の仕掛けたオールスイッチに惑わされたうえに、自分たちのすべきディフェンスも狂ってしまった

――1Qからビハインドの状況になって、具体的な指示を出したのか。どのようなゲームプランで逆転しようと試合に臨んでいたのでしょうか。

指示はディフェンスをしっかりすることでした。相手のシュートが落ちたあとのセカンドプレイをしっかりすること。リバウンドを取ること。ひたすら、いつもやっているバスケットをどれだけやれるか、ということでした。

――そのディフェンスができなかった点については、どう考えていますか。

ディフェンスに関しては韓国のディフェンスが良くて思うように点を重ねられなかった。私たちはディフェンスからオフェンスを作っていく流れがあるのですが、それが特に前半に機能しなかったのは立ち上がりの悪さが原因だったと思います。3Qから流れができたのですが、流れを作り出すことが遅かった。とにかく、今日はいつも通りの試合をしようということだけで精一杯だったと思います。

――プレッシャー・ディフェンスをかけることができなかった理由は?

ディフェンスの運動量、ボールに対してのブレッシャーはなかった。このチームは最悪でも20点以下に抑えるクォーターを3つ作ることができると思っていたが、ゾーンにしたときに運動量はなかった。自分たちはボールに対してプレッシャーをかけてやろうとやってきたのに、プレッシャーはかかっていませんでした。その原因は一つではないので、わかりかねるところはあります。今はそれができなくて失望しているとしか言いようがない。ただ、これを受け入れて、乗り越えていくしかない。このチームはもっとより良いところに行けるものを持っているので、その潜在能力があるところまで自分たちを高められるか見ていかなくてはならない。

――その潜在能力のあるチームを高めるには、今は何が足りないのでしょうか?

その答えはこれから見つけていかなくてはならない。でもそれをやるためには、今抱えている問題に対して気持ちを高めていくことと、フィジカルの対応が必要。フィジカルに対しては、気持ちが落ちてしまったところからアタックすることができませんでした。

フィリピン戦はフリースローミスが響いた。16/28本、57%の低い確率では勝てない

――2次リーグのフィリピンに敗れてから、チームのメンタルを向上させていくのは難しかったのでしょうか。

もちろん、負けたあとは難しい。負けたあとでも答えを見つけていくのがいいチームだと思いますが、自分たちはそれができませんでした。このチームがいいチームになるには、そういうことを自分たちで変えて、大きな失望から乗り超えて克服していくことをやっていかなきゃいけない。自分たちが負けた3チームはタフであったことは間違いないですし、それを自分たちが3回できなかったから大きな失望なのです。今回はケガ人が出たというものもありましたが、言い訳するつもりもありませんし、ケガも含めてチームとしてまとまっていかなければなりません。ケガ人が出ても他のプレイヤーがそのプレイヤーをカバーして、ステップアップをしていかなくてはならない。それがいいチームだと思います。

――主力が相次いで故障して、当初から考えていたゲームプランを修正していかなくてはならなかったが、そのプランはあったのでしょうか?

1人、2人、3人、4人…とケガをしたとしても、自分たちはスタイルを徹底することをやらないといけないですし、それをやり切れることができればもっといい結果が出てくると思っていました。それに対して遂行し、機能させることをやらなければならないが、それはできなかった。流れを作るためには、いいディフェンスから作らなくてはならないが、ディフェンスの強度、運動量を出せずに、自分たちのフルコートでアタックするスタイルを作っていけなかった。ただ、自分としては、このスタイルを貫き通すことができると思っているので、できないとは言うつもりはないです。

――中国と韓国には完敗。これが現状の実力として捉えていますか。

これが今の実力と言わざるを得ない。今、東アジアの中で中国と韓国が準決勝に上がることを考えると、少なくても日本は東アジアで3位ということを受け入れています。

このトーナメントでもヨルダンを倒すことはできました。今年に関しては中南米やドイツに遠征をして、フィジカル強化をしてきました。もしかしたら、フィジカルのレベルをより高い相手のもとで強化したことによって、東アジアで勝つべきことを見落としていたところもあったかもしれません。そうだと言い切れるわけではないですが。

自分としては韓国にはこんなに大差をつけられる相手ではないと思っているので、今日の結果には大きな失望があります。今ここでできなかったことは自分の責任です。このまま、このグループ(強化方針)を継続して道を見つけていきたいと思っています。

――なぜ、韓国にそんなに長い間、勝てないのか。(中国メディアからの質問)

韓国には技術的にそんなに劣っているとは思いません。及ばない点はメンタルの差。力はおそらく互角だけど、韓国が日本に対して自信を持っている強いメンタルがある。試合への気持ちの持ち方が、韓国のほうが日本よりも上回っている。そこの差。課題が明確になったので、これを改善していかなければなりません。

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