ますます“カオス”と化したアジアの現状
大会は、チームは、選手は、いつの時代も生きている

文・写真/小永吉陽子 Text&Photo/Yoko Konagayoshi 

アジアチャンピオンを決める11日間は山あり谷あり。
「オリンピックに行きたい」という思いが強い選手が多ければ多いほど、苦しい戦いにもなる。
刻一刻と大会が進んでいく中で、一丸となって、タフに生き抜いたチームだけが頂点に上りつめることができる。
アジアは、大会は、チームは、選手は、いつの時代も生きている。
武漢の地で起きていた、険しくもアジア制覇までを綴った「11」のロングストーリー。

 
INDEX                                                        

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STORY【1】2007年徳島から始まったアジアの「多国籍選手権」
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STORY【2】アジアに蔓延する「帰化・年齢詐称」問題
STORY【3】エースのアクシデント
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STORY【4】熟しきったアジア王者が犯した過ち
STORY【5】ヨルダンは死なず
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STORY【6】重苦しい「事実上の決勝」──中国vs韓国
STORY【7】3決の明暗をわけたのは「経験」という名の底力
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STORY【8】不屈のバイプレイヤーが思い出させた“お家芸”
STORY【9】武漢で躍進した若者たちよ!
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STORY【10】アジアの野望が生んだ「本物の決勝」──中国vsヨルダン
STORY【11】アジア一の“バスケファミリー”中国

 
STORY【1】 2007年徳島から始まったアジアの「多国籍選手権」                           

 

中国の今大会にかける意気込みはファンも同じだった

アジアの混沌は4年前、北京オリンピック行きをかけた日本の徳島大会から始まった――。

2000年初頭からカタールやレバノンが帰化選手を加えて強化を始めていたが、2007年ほど混戦となった大会はない。2007年の徳島大会は、イランとヨルダンがヨーロッパからコーチを招聘して本格的に強化に乗り出し、身体能力を持つカザフスタンが初のベスト4に進出。アマとプロリーグの内紛が正常化したフィリピンがFIBAアジアに戻ってきた大会だった。2007年にアジアがカオス化したいちばんの理由は、アジアの雄である中国が自国開催のオリンピックにおいて出場権を持っていたこと。最大のチャンスが巡ってきたとばかりに、各国が野望を抱きだした。

前哨戦は2006年のアジア大会から始まっていた。ドーハ(カタール)が開催地だったこともあり、優勝した中国に次いで、カタール、イラン、ヨルダンら中東勢がベスト4を占めた。環境的にも地元優勢とされていたが、中東が勢いだけのチームではないということを翌年の徳島大会で証明したのだ。

徳島大会ではイランがレバノンを破って優勝したことは驚きのひとつだったが、次の2009年大会の内容を見れば、それはもう驚きではなく、高さ、組織力、選手層からいって中国をも凌ぐ存在になっていた。ヨルダンは徳島大会では日本に敗れて決勝トーナメントに進出できず5位だったが、2009年には堅いディフェンス力で3位へと躍進している。

アジアの可能性を信じて、欧米から指揮官が続々と就任。手前はイランのヴァセリン・マティッチHC(セルビア)、奥はヨルダンのタブ・ボールドウィン(アメリカ)

徳島大会での中国はというと、翌年に北京オリンピックを控えて出場権を持っていたため、「Bチームにも満たない」(当時のヘッドコーチ談)若手が出場して10位に終わっている。このときA代表および候補選手のB代表は独自で強化を進めており、北京オリンピックではヤオ・ミンを擁して決勝トーナメントに進出した。おそらく、この頃が中国のピークだろう。中国にしてみれば、徳島でアジアのカオス化を肌で感じられなかったことも、2009年にイランに惨敗した一因かもしれない。

帰化選手を交えて高さと能力を全面に出すカタールやレバノン。ヨーロッパ流の組織力を目指すイラン、ヨルダン、カザフスタン。古豪フィリピンのアメリカンバスケ。高さの中国やシュート力を誇る韓国、運動能力の高いチャイニーズ・タイペイといった東アジアのライバルたち。そして、世界中から招聘された指揮官。2007年を境に、アジアはまるで“多国籍選手権”へと変貌を遂げたのだ。

そして迎えた2011年――アジアにまた新しい顔が登場した。それは他でもない。アジア選手権開催地である中国だ。世代交代の時期に差し掛かったうえに、2009年には地元でイランに52-70で惨敗。危機感が芽生えた大陸は、今大会どこよりも一丸となってアジア制覇に挑んだ。武漢の夏が熱くならないはずがなかった――。

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