日本代表展望
鍵となるのはリバウンドとアーリーオフェンス

取材・文/舟山緑  写真/日本バスケットボール協会

今年は国際試合を数多くこなしきた日本代表(親善試合から:写真提供:日本バスケットボール協会/JBA)

FIBA女子世界選手権<1>展望

女子世界選手権が9月27日(土)開幕する。グループAの日本は、予選ラウンドでスペイン、チェコ、ブラジルと戦う。代表チーム結成のときから「目標はベスト8以内」を掲げてきた内海ジャパンの鍵となるのは、どんな点かを探ってみたい。第1弾は、内海知秀ヘッドコーチ、大神雄子キャプテンが語る決意。第2弾として、渡嘉敷来夢、髙田真希、栗原三佳の3人のインタビューをお届けする。

■予選ラウンドの突破は、3位以内に抜けることが条件

相手の高さ、当たりの強さの中でいかにリバウンドを奪取できるか

今年、女子代表はこれまでになく海外チームとの対戦をこなしてきた。7月にはFIBAランク5位のチェコ代表が来日。合宿地である味の素トレーニングセンターにて3試合(非公開)を戦い、2勝1敗と日本が勝ち越した。7月下旬には、世界選手権に出場するオーストラリア(2位)、モザンビーク(38位)を招待して東北3県で国際親善試合を戦った。さらに8月下旬からは2週間にわたってヨーロッパへと遠征。トルコ(13位)、チェコ(5位)、ベラルーシ(10位)、スペイン(6位)、セルビア(29位)、アンゴラ(20位)、フランス(4位)と戦い、4勝5敗の成績で帰国した。

国際親善試合から(JBA)

ヨーロッパで手合わせしたのは、いずれも世界選手権に出るチームだった。予選ラウンドで戦うチェコとは7月に既に対戦しているので、4戦やったことになる。
本番を前にライバルチームとこれほど対戦したことはなかった。相手をスカウティングもできたが、逆もしかり。あえて本番を前にこれだけの実戦をこなした理由を、内海ヘッドコーチはこう語る。「世界との差を肌で感じることが目的だった。ヨーロッパの1位~5位の強豪と対戦ができ、さらにオーストラリアとの試合ができ、それは十分にできたと思う」

では、今回の遠征で通用したこと、また課題として見えてきたことは何か。

内海ヘッドコーチは「日本の弱点はリバウンドだったが、この遠征ではその差が少し縮まってきた。渡嘉敷来夢、間宮佑圭、王朝新喜らの高さが効いた」と言う。ただし、「ヨーロッパの上位、スペインやフランスに対しては、前半は3点差など戦えたが、後半になると身体の当たりのダメージが効いてきたリバウンドを取られて一気に突き放された。相手の当たりの強さに1試合を通してどれだけ我慢ができ、センター陣が弾いたリバウンドを外角の選手がいかに取るかが鍵」と語る。キャプテンの大神も「髙田(真希)や長岡(萌映子)らが3番になってサイズアップした分、フォワードにリバウンドをがんばってほしい」と話す。

親善試合では間宮や王らがリバウンドに果敢に跳んでいたが、ティップしたボールを取りきれない場面が目についた。いかにそこを自分たちのボールにできるかが、今大会も大きな鍵となる。

渡嘉敷を擁しての初の世界大会。いかにアーリーオフェンスが出せるか

「今回の遠征では渡嘉敷が、195㎝ぐらいの選手にマッチアップされても引けをとらなかった」という内海ヘッドコーチ。ドライブ、ゴール下のターンシュート、中間距離のジャンプショットなどでオフェンスの中心になった。渡嘉敷にとっては初の世界大会だ。代表にとっても192㎝でスピードある渡嘉敷の存在は大きい。時折、“様子見”のように消極的になってしまうクセが出るが、ヨーロッパの強豪を中心に今季17戦も戦った経験は大きいはずだ。どれだけ初戦からエンジン全開でいけるか。渡嘉敷が果敢に攻めることで、間宮や王のインサイドも生き、3ポイントも生きてくる。「自分がこの代表を引っ張って行きたい」と語る渡嘉敷の決意に期待を込めたい。

渡嘉敷の高さとクイックネスを生かした攻めを期待したい(JBA)

内海ヘッドコーチは「10点以内というのがボーダーライン。それ以上離されずに相手についていき、勝負にもちこみたい」と語る。リバウンドが弱い日本がめざすのは、アーリーオフェンスからの得点だ。今季のどの試合も、セットからの得点は相手の高さや強さがある分、厳しい。だからこそ、「動きの中で点を取っていきたい」と内海ヘッドコーチは強調してきた。「それが少しヨーロッパ遠征で出てきた」と話す。間宮(184㎝)や髙田(184㎝)らは中間距離からのシュートが上手い。それを生かすにも、動きの中で相手を崩していかにシュートを決め切っていくかが大事になってくる。

また3ポイントを担うのが、宮元美智子と栗原三佳、山本千夏らだ。昨年のアジア選手権では宮元の3ポイントが効果的に決まった。今年はさらに栗原がいる。2人のシューターを同時に使う作戦もある。渡嘉敷、間宮らのインサイド陣に宮元、栗原らの3ポイントがうまくからんでいく展開がほしい。

そして懸念されるのが、試合の中でどれだけ駆け引きができるかだ。キャプテンの大神は、「ヨーロッパの上位チームはどこも対応力が高かった。前半通用したことが、後半はアジャストされてしまう。それに対して自分たちもどれだけオプションをもって攻めていかるかがポイントになる」と話す。親善試合でオーストラリアに2連敗したのもそこだった。自分たちの攻めのパターンが読まれて、すべて止められたのだ。ヨーロッパ遠征では「本番用に」と使わなかった戦術もあるというが、単調な攻めに終始してしまうと、日本に勝機はない。相手の厳しい守りの前に、どれだけ個人が冷静にかつ果敢に相手に向かっていけるかも重要になってくるはずだ。

目標はベスト8入り。「チェコ戦に照準を」と語る内海ヘッドコーチ

内海ジャパンが掲げている目標は「ベスト8入り」だ。そのためには予選ラウンドで3位以内に入らなければならない。世界ランク6位のスペイン、同5位のチェコ、同7位のブラジルとの決戦。内海ヘッドコーチは「チェコ戦に照準を当てている」と語った。「スペインは別格に強い。ブラジルもWNBAでプレーする3人がいて、それ以外は若い選手だが、フィジカルが強いと思う。チェコはブラジルに比べるとフィジカル的には少し劣るので、そこを突いていきたい」と話している。

ヨーロッパで対戦したときは、「7月に来日したときよりもチームが数段よくなっていた」(内海ヘッドコーチ)という。ベテランガードが抜けたが、インサイド陣と190台のフォワード陣は国際試合の経験も豊富で、確率の高い3ポイントを放つ。7月に来日した時には、渡嘉敷と同じ23歳の#7アレナ・ハヌソヴァ(190㎝)の攻撃力が光っていた。このチェコをどう攻略できるかだ。

初戦のスペインには3人のWNBAプレーヤーがいる。ヨーロッパ1位に日本がどう立ち向かっていくか、初戦が注目である。

代表チームで前回の世界選手権(2010年)を経験しているのは、大神と髙田の2人だけ。大神は得点王に輝いた。渡嘉敷来夢を擁して初の世界選手権に挑む女子代表。アジア選手権で一皮むけたチームのさらなる成長を、この世界選手権では見てみたい。

■内海知秀ヘッドコーチ

トランジションの中から、動きのある展開から得点を重ねていきたい

8月下旬からのヨーロッパ遠征では、選手たちが世界のレベルを肌で感じることを目標とした。トルコ、スペイン、フランスと移動して9試合を戦う中で、選手たちの慣れ、対応力はついてきたと思う。リバウンドの差も少しは縮まってきた。ただし、前半は強い気持ちでリバウンドに向かっていけるが、196㎝ぐらいの黒人選手とゴール下で競っていくと、次第に体力が消耗して跳べなくなってしまう。本番ではチーム・リバウンドとしてがんばり、メンバー交代を考えながらうまく乗り切っていきたい。

インサイドは渡嘉敷、間宮、王らがある程度、勝負ができるという手応えをつかめた。間宮も中間距離のシュートが上手いので、動きの中でシュートチャンスを作るプレーをさせたい。宮元、栗原、山本らのシューター陣にもしっかり仕事をして欲しいと思っている。3ポイントもトランジションの中でガードが仕掛けて、外にさばいて3ポイントのチャンスを作っていく。こうしたゲーム展開にしないと勝ちにつながっていかない。

来年のオリンピックアジア予選につなげるためにも、この世界選手権で日本のバスケットがどれだけできるかだ。ベスト8入りを目標に、一戦一戦を大事に戦っていきたい。

■大神雄子キャプテン

短期決戦の予選ラウンド。初戦のスペイン戦の戦い方が重要!

内海さんは「リバウンドで対抗できるようになった」と言ったが、10本の差はあると思う。特にオフェンス・リバウンドで2ケタはやられている。そこがやっぱり課題になると思う。そして、ヨーロッパのチームは修正力がすごく速い。スペイン戦は前半1ケタ差で折り返したが、後半はアーリー・オフェンスを全て止められてしまった。また、オンボールのスクリーンに対してのアジャストも本当に速い。自分たちもそれに対応していかなくてはいけないと思う。

プレーの確認をする大神(中央)。左は宮元、右は栗原(JBA)

また、相手のフィジカルの強さにどう対抗するかだが、レフェリーへのアジャストも求められてくる。トルコとスペイン、フランスではジャッジが違った。国際舞台では、レフェリーにどう対応するかも課題になってくる。さらに、アウトナンバーからの攻めを展開するには、リバウンドを取らないと意味がないので、そこはインサイド陣がボックスアウトをして、フォワード陣が取るのを徹底したい。

ガードとしてゲームを作りながら、個人としても10点以上は点を取っていくことにこだわりたい。

短期間の予選ラウンドになるので、初戦のスペイン戦が重要になると思う。世界選手権は「優勝すればオリンピック出場の第1号」になる大会なのだから、そこはねらっていくべき。そういう気持ちがないといつまでたっても日本はこのままになってしまう。渡嘉敷や間宮らが記者会見で「ベスト8が最低条件」と言ったが、本当にそう。ヨーロッパ遠征で見えた課題を修正し、最高のパフォーマンスができるように臨みたい。
 
 
◆大会特設サイト(日本バスケットボール協会)
◆大会公式サイト(FIBA )