最後のインカレに挑んだ3人の4年生
キャプテンたち

文/松原貴実  写真/一柳英男

61年ぶりの優勝を遂げた筑波大。左から4年生の笹山貴哉、坂東拓、越智大輝、山田侑樹

最後のインカレに挑んだ3人の4年生
キャプテンたち

 新チームとして初めて挑む春のトーナメントが終わると、地獄の夏合宿が待っている。そこで磨いたチーム力を試す秋のリーグ戦。2ヶ月に渡る戦いの先に待ち受けるインカレを見据え、日々の練習は続く。毎年、毎年、同じ道のりの繰り返し。

 だが、その道の途中に去年と同じものは何一つとしてない。1年前に失ったものを補い、新しく得たものを育て、チームは変化していく。そのことを一番よく知るのは4年生たちだ。だからこそ背負うものは大きい。

 ケガ人続出のチームを引っ張り、孤軍奮闘しながらもまさかの2回戦敗退に泣いた青山学院大のエース野本建吾、攻守の柱である安藤誓哉が海外挑戦でチームを去ったあと、弱音を吐かないリーダーとして走り続けた明治大の中東泰斗、2011年以来、3年ぶりの1部の舞台で躍動し、すべての試合ですばらしいキャブテンシーを見せつけた慶應大の伊藤良太…。それぞれのコートにはそれぞれのドラマがあった。

 悲願の優勝に輝いた筑波大、3連覇の夢破れた東海大、強敵を次々撃破し3位に躍り出た大東文化大、今大会の上位3チームが演じたドラマはなおのこと印象深い。春から冬へ、4年間続いた道を歩き、最後のインカレに挑んだ3人のキャプテンたち。5日間の戦いを振り返りながらその姿を追った。
 
 

2回戦で青山学院大を下し、ベスト4へと駆け上がった大東文化大。その中心にいたのはキャプテンの兒玉だった

兒玉貴通(大東文化大)

「入替戦の時のように最後に消極的になりたくなかった。
最後は自分が攻めると決めていました」

兒玉貴通(こだま・たかゆき/165㎝/PG/宗像高)

 3位決定戦で拓殖大を破った大東文化大のキャプテン兒玉貴通は笑顔でミックスゾーン(インタビューを行う場所)に現れた。晴れ晴れとした、気持ちの良い笑顔だった。

「最後に勝って終われて良かったです。3位という結果を残せたことも嬉しいですが、何より楽しんでバスケができたことが嬉しい」

 1部昇格を目指して戦った2部リーグで優勝を果たし、専修大と対戦した入替戦では1勝1敗で第3戦にもつれこんだ。結果は68-69で敗退。1部の舞台にあと一歩届かなかった無念さはそう簡単には晴れなかった。

「下級生たちは結構早く切り替えてくれたんですが、自分は引きずりました。最後の場面でショットを選ばずパスを出してしまった。なぜ自分が積極的に行かなかったのか。それを考えると後悔しかなくて。チームを1部に牽引できなかったことに対して自分を責める毎日でした」

 だが、キャプテンが暗い顔をしていたらチームのムードも暗くなる。「この悔しさは絶対インカレで晴らそうと心に決めた時、やっと吹っ切れたような気がします」

 快進撃の火ぶたを切ったのは2回戦。関東リーグ2位の強豪青山学院大との一戦だった。スタートから主導権を握り、前半を39-23の大量リードで折り返すと、後半4点差まで詰め寄った青山学院大を再び大きく突き離し、74-59で勝利。続く慶應大もまた1部リーグ8位という、いわば格上のチームだったが、44-51とリードされた4Qに山崎渉真の連続シュートで逆転すると粘る慶應大を振り切って70-65でベスト4進出を決めた。

 さらに準決勝では優勝候補の一角に名が挙がる筑波大と手に汗握る白熱戦を展開。結果は65-67と1ゴール差での敗戦となったが、キラ星のごとく有力選手が揃う筑波大を相手に2-2-1のゾーンプレスで対抗した大東文化大の『熱量あふれるバスケット』は観る者の心を躍らせ終始会場を沸かせた。相手の高さにひるむことなく、果敢にドライブを仕掛ける165cmの兒玉の姿がなんと頼もしかったことか。

「身長についてはよく聞かれますが、昔からずーっとチビだったので特にどうこう思ったことはありません(笑)」

 とは言うものの、大学に入って間もない時期は自分のサイズに苦しむことはあった。
「相手の大きさ、当たりの強さが高校までのレベルと全然違っていて、それまで打てていたシュートが止められてしまうとか。それはやっぱりショックで、どうしよう、どうしょうと悩むことはありました」

 切り替えられたのは「ないものを欲しがっても仕方ない」という考えに行きついてから。

「サイズに囚われるのではなく、スピードだったり、クィックネスを生かしたジャンプシュートを打つことだったり、自分の持ち味をもっと磨いて武器にしていこうとプラス思考になったら、少しずつ目の前の道が見えてきたような気がします」

 当時キャプテンだった田中将道(富士通)や2年先輩の岸本隆一(琉球ゴールデンキングス)とともに練習することで、『小さくても生きるプレー』を数多く学んだ。それは今も自分の財産だと言う。

「隆一さんはずっとあこがれの存在です。まだまだ全然及びませんが、ディフェンスと泥くさいプレーを頑張りながら、隆一さんのようにアグレッシブなオフェンスも展開できる選手になりたい。それはこれからも自分の目標です」

 1点ビハインドで迎えた筑波大との最後の場面、逆転のチャンスはまだ残されていた。「全てを兒玉の判断に託した」(西尾コーチ)という残り28秒、思いがけず早いタイミングで放った兒玉のシュートは筑波大・杉浦にブロックされゴールに届かず、その瞬間、勝利の女神はくるりと背を向けた。

「あのタイミングで打ったことが良かったのかどうかはわからないですが、入替戦の時のように最後に消極的になりたくなかった。最後は自分が攻めると決めていました」

 そんな兒玉の気持ちを西尾コーチは誰よりもわかっていた。

「うちはこれまで兒玉のシュートで何度も救われてきたチーム。託した彼のシュートが決まらず結果は負けになりましたが、それを後悔する気持ちは全くありません」

 敗戦は全て悔しい。どんな形でも悔いは残る。だが、全力を尽くし、全員で戦ったのだと胸を張れる敗戦もある。

「互いになんでも言いあえる大東文化は本当に楽しいチームでした。一緒にチームを牽引してくれた副キャプテンの高橋(諒太・4年)と山崎(3年)には感謝しかありません。練習でも試合でもいつも全力でサポートしてくれました。そんなやつらがいたからこそ僕はキャプテンでいられたんです」
 
 

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