NBLカナダ ハリファックス・レインメン
安藤誓哉――カナダで得た日本にはない“プッシュ”する意識

文/小永吉陽子  写真/西口ようこ

カナダで得た
日本にはない“プッシュ”する意識

安藤誓哉
(ANDO , Seiya/180㎝/PG/22歳/ハリファックス・レインメン#3)

日本代表に入るため、オリンピックに出るため。目標のために逆算して行動を開始した大学生

「もっと厳しい環境でやらなければ追いつかない。
僕は予選で韓国を破ってオリンピックに出場したい!」

今、安藤誓哉がカナダの地で成長を見せている。

「NBL CANADA」(※)という日本人が誰も踏み入れたことのないプロリーグに、安藤は大学のバスケ部を退部して飛び込んだ。所属するのはカナダ本土の最東端、大西洋に面した港町にあるハリファックス・レインメン(Halifax Rainmen)。安藤は主力のポイントガードとして平均29.16分、平均10.33得点、4.0アシスト(NBLカナダは48分ゲーム、2月22日現在)のスタッツを残し、チームの勝利に貢献。現在、カンファレンス2位(※)の好成績で3月からのプレーオフを迎えようとしている。

 ※NBLカナダ = National Basketball League of CANADA
 ※全8チームを2つのカンファレンスにわけてリーグ戦を行っている

4年の李相佰盃ではキャプテンを務めた。「目標はオリンピック出場とNBAでプレーすること」とキッパリ言う。(写真/小永吉陽子)

なぜ、安藤は大学を退部してまで海外に進出したのか。昨年5月の李相佰盃(日韓学生選抜大会)で韓国に3連敗を喫したあと、こう答えている。この時すでに海外挑戦を決意して準備を始めていた。

「日本でやっているだけでは、韓国との埋まらない差をハッキリ感じています。バスケが強い環境で揉まれることが、うまくなる一番の方法だと思う」

エースとして出場したU18アジア選手権(2010年)では準々決勝で韓国に敗れ、大学生になっても韓国の名門・高麗大との定期戦や李相佰盃で一度も勝つことができず、その差は高校時代から埋まっていなかった。埋まっていないどころか、試合をするたびに「韓国の選手は自分たちの意志でゲームを動かしている。日本はその部分でまず負けている」と危機感を感じていた。

さらに安藤の言葉は、NBLとbjという、二分化している日本のトップリーグが魅力に映らない大学生の本音も言い表していた。

「日本ではバスケで上(トップリーグ)に行きたいと思っている大学生は一握りしかいないけれど、韓国の大学生は全員がプロでやりたいと思っていて、この時点で差がある。今でさえ差があるのに、韓国は日本以上に練習をしているのだから、このままでは平行線で行くだけ。もっと厳しい環境でやらなければ追いつかない。だって、この国を倒さないとオリンピックに出られないじゃないですか」

これほどまでに日本代表への思いを口にする大学生はいない。もっと言えば、現日本代表を含めてもそうはいない意識の高さを持つ。この強気な姿勢こそが安藤誓哉の最大の魅力であるが、本人もポイントガードとしてのスキルをもう一段階上げなければ、代表に呼ばれないレベルであることも理解していた。

ミニキャンプ(トライアウト)とトレーニングキャンプを経て、レインメンのロスターを勝ち取った。メンバーが激しく変わる中でも主力を務めている

幼い頃から「NBAでプレーした」という夢を持っていた安藤だが、海外挑戦を考え始めたのは、U18代表に選出された高校3年生の頃からだという。だが、どうすれば海外進出できるのかわからないまま大学に進学し、「青学や東海のような強豪を倒して日本一になる」という目標のもとで練習に励んでいた。異例ともいえる2年生でチームのキャプテンを務め、3年の夏には海外挑戦の一歩目として、渡米してワークアウトを行った。その後のインカレでは青山学院大を倒して準優勝までたどりつき、敢闘賞を受賞。海外挑戦の道を模索し始めたのは、卒業後の進路選択が迫った3年生のインカレ終了後だった。

海外挑戦を決意してからはみずから動き回って情報をつかみ、最終的にはエージェントを通じて、夏にロサンゼルスで開催されるドリューリーグ(Drew League、アメリカの独立リーグ)に参戦することを決めた。そこで、思ってもみないチャンスが巡ってきたのだ。

「緊張して何もできなかった」という3試合を経て、帰国前日に背水の陣で挑んだラストゲームでようやく持ち味を発揮する。出場時間は4分にも満たなかったが、ドライブ2本と3ポイント1本の7得点を獲得。短い時間で畳み掛けるように得点したことが認められ、現場に訪れていたハリファックス・レインメンのGMに声をかけられたのだ。そこからは無我夢中だった。トライアウトを兼ねたミニキャンプ、トレーニングキャンプ、プレシーズンマッチと選手が絞られていく中で結果を出し、ついには開幕12名のロスターに残った。背番号は「3」。カナダでプレーするの日本人第一号になった。
 
 

1 / 3123