トヨタ自動車アルバルク東京――逆転で覇者をめざす!
ファイナルのキーマン トヨタ東京・菊地祥平インタビュー

取材・文/舟山 緑   写真/一柳英男

菊地のマッチアップは、今季、安定感が抜群のアイシン#14金丸晃輔。第4戦でどう守るかが大きなカギになる

◆アイシン三河に王手をかけられたトヨタ東京。逆転から「王者」をめざす!

ファイナル第1戦は、アイシン三河が#32桜木ジェイアール(203㎝)と#21ギャビン・エドワーズ(207㎝)の高さを生かし、インサイドを制して86-82で先勝した。桜木は攻撃の軸となってミドルやフック、バンクショットと多彩なシュートで30得点と大活躍。エドワーズも16得点、15リバウンドと奮闘。トヨタ東京にペースをつかませない見事な試合展開だった。

第2戦は一転して、トヨタ東京が序盤から主導権を握って69-66で逃げ切った。「うちらしいスタイルが出せた。インサイドでのディフェンスを少し修正し、うまくいった」と、満足げに語ったドナルド・ベッグ・ヘッドコーチ。その言葉どおりリバウンドでは46本vs 34本と制し、ペイント内での得点もアイシンを上回った。

第1戦、第2戦でアイシンの得点源である#14金丸晃輔を徹底マークしたのが、トヨタの#13菊地祥平だった。金丸は、レギュラーシーズンの得点部門では平均19.7得点で5位にランクイン(日本人選手最高)。得意とする3ポイント部門では45.3%で、堂々の1位に輝いている。プレーオフに入ってからも4試合で21本の3ポイントを沈め、平均23.75得点をマーク。チームをファイナルに導いてきた。

そのエース金丸を、菊地は初戦からフェイスガード気味に守り、シュートチャンスをなかなか与えなかった。ファイナル1戦目で11得点に終わった金丸は、第2戦では2得点とさらに失速。シュートも5本しか打っていない。まさに、トヨタ東京のディフェンスの勝利だった。特に#13菊地は、控えの#88張本天傑と交代しながら、徹底してアイシンのこのスコアラーを封じ込んだ。

「このファイナルでの役目は、金丸へのディフェンスが第一。“自分も死んで、金丸も死んで”というぐらいの気持ちでいる」と、第2戦に勝利して語った菊地。“金丸と心中する”ことでチームに貢献したいと、自分の仕事を明確に語った。

だが、第3戦はその金丸に大爆発を許してしまう。立ち上がりからゴール下で2連続ゴール。3本目のドライブは外れたが、それをアイシンの#21エドワーズにリバウンドでねじこまれてしまった。さらにこの2人の怒濤の攻めはやまず、ドライブからのバスカンや3ポイントも決まって、開始5分過ぎには8-20と完全に主導権を握られてしまった。この一戦、トヨタは一度もリードを奪えず、アイシンのリズムを崩すことができなかった。第3戦は69-81でトヨタの完敗だった。

前の2戦でディフェンスが光った菊地だったが、第3戦は金丸を止めることができずにファウルトラブルで、後半は出番がないまま悔しい一戦となる。金丸は、前の2戦のうっぷんを晴らすかのように29得点と大車輪の活躍。対する菊地は、10分25秒のプレータイムで0得点に終わった。

高さでアドバンテージがあるアイシン三河。トヨタ東京が第4戦を制して逆転から「王者」になるには、アイシンの金丸を再びどう抑えることができるかにかかっている。

ディフェンスのキーマンである菊地は、豊富な運動量でチームに貢献するプレーヤーだ。トヨタに移籍して2シーズン目の今季は、さらにトヨタのバスケットを理解し、信頼される一人として、その存在感を示している。

菊地の持ち味は、フィジカルの強さから繰り出されるアグレッシブな守りと攻撃だ。金丸をフェイスガードで守ったタフなディフェンス力に加えて、運動能力の高さを生かして果敢な攻めができるのも大きな魅力。第2戦は、スピードあふれるドライブで相手ゴールに切れ込んで、チームにチャンスを呼び込んだ。さらに今季は、チーム全員が取り組んでいるメンタル・トレーニングのお陰で、「試合中に熱くなっても、それを引きずることなく、うまく切り替えられるようになった」と語る。フィジカルの強さとバスケットスキルに加えて、「熱くクールに戦うメンタル」をも手に入れたのだ。

アイシンのエース金丸を、第4戦ではどう守っていくのか。キーマンである菊地に、優勝に懸ける思いを聞いた。
(取材日:5月24日、5月25日)
 
 

◆トヨタ東京アルバルク東京のキーマン◆#13菊地祥平インタビュー
(191㎝/GF/日本大/30歳)

「金丸選手に29得点。ひと言で言えば「さすがだな」ですかね。
でも、次の試合では0点に抑えるぐらいの気持ちで行きます!」

―第3戦はアイシンが一度もリードを許すことなく逃げ切りました。

僕自身もチームも、本当に完敗でした。

――アイシンの金丸(晃輔)選手がドライブで切ってきて連続ゴール。序盤でペースを握られてしまいましたね。

「熱くなる自分をコントロールできるようになった」と語る菊地。ハードワーカーとしてその存在感はさらに強くなっている

第3戦はやってくるとは思っていたけど、まさかインサイドから始めるとは。そこで虚を突かれた部分がありました。僕がもう少し早めに対応できていたら、こういう展開にはならなかったかなと思います。前半で20得点、終わってみれば29得点だから、その分がそのまま点差になった感じです。

――金丸選手の第1戦は11得点(2本の3P)。第2戦は2得点なので完全に封じた試合でしたが、第3戦は3ポイントねらいではなく、ペイント内のプレーからペースをつかんできました。そこは金丸選手が対応してきたということですか。

そうですね。それと金丸自身、(スコアラーとしての)プライドがあるから、この試合は気持ち的にも入っていたと思います。ひと言で言えば、「さすがだな」ですかね。でも、僕も負けず嫌いなんで、次の試合では0点に抑えるぐらいの気持ちでいきます。

――1戦目、2戦目で金丸選手に思うような仕事をさせなかったからこそ、彼の闘志がさらに燃え上がったとも言えますね。

まあ、そうですね。今日は本当にさすがだなって思いました。「さすがだな」と思った分、逆に「やりかえしてやりたい」とも思ったので、僕自身もさらに火がつきました。

――そのからどう守りを立て直していこうと思いましたか。

完全に抑えるのは無理なので、1試合を通して長い目でみて、相手を抑えようと思っていました。ここで熱くなっても仕方がないと思ったので。ただ、そこがうまくいかなったというか……。もう少し苦しめることができたらと思いますね。(第3戦は)好き勝手にやらしてしまったなと。

――第1クォーターで31-17。失点31はチームとしてもダメージが大きかったですが、どう反撃し、逆転にもっていく作戦でしたか。

まず金丸選手に点を取られていたので、そこは僕ががんばらなくてはいけないなと思いました。あとはリバウンドを全員でもう1回、意識しようという指示でした。

――しかし、ディフェンスもオフェンスも第2戦のようにうまく機能しませんでした。第2戦は終始、トヨタペースでしたが。

そうですね。各々がこの状況を打破したいという気持ちが強すぎて、チームとして戦えなかった面はありますね。後半、ちょっと単発になってしまいましたから。長いシーズンの中ではそういう試合もいくつかありますが、こういうファイナルの舞台になると、おのおのが焦る訳じゃないけど、(劣勢の)この状況を打破したいという気持ちがなおさら強くなってしまったのかなと思います。

――気持ちの強さが空回りしてしまったと?

そうですね。そこでちょっとずつ歯車がかみ合わなくなってしまい、後半、チームとして戦えない状況に陥ってしまったかなと思います。

――後半、出番がなくなった中で、ベンチではどのように試合を見ていましたか。

今日はファウルトラブルから、後半は自分の出番が少ないと分かっていたので、気持ちを切り替えていました。コートに出て行く選手は思い切りやるだけですが、ベンチに戻ってくる選手は少なからずフラストレーションをためて帰ってくるので、再びコートに出て行くときにイライラがないように、声をかけるようにしていました。
 
 
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