アイシンシーホース三河――優勝に王手!
ファイナルのキーマン アイシン三河・比江島慎インタビュー

取材・文/小永吉陽子  写真/一柳英男

1戦目の出足から積極的にドライフを仕掛けたことで、このファイナルではいい流れが作れている

シーズンを通して各自が役割を果たすチームへと仕上げてきたアイシン三河。優勝へ王手

2年ぶりの王者まであとひとつ――。

金丸晃輔がエースへと成長し、桜木ジェイアールがインサイドの柱として構え、司令塔の橋本竜馬が勢いを作り、膝のケガから復帰した柏木真介が豊富なキャリアを生かしてチームを支える。移籍やルーキー選手が加わって噛み合わなかった昨シーズンを経て、今季はシーズンを通して控えを含めた総合力を高めてきた。途中で柏木や比江島といったガード陣にケガ人が多発したが、プレーオフに合わせて調整してきたあたりは、さすがに経験豊富なチーム。クォーターファイナル、セミファイナル、ファイナルと、プレーオフを通じて試合巧者ぶりを見せつける“強い”アイシンが戻ってきたといえる。

そんな王者復活を目指すチームの中で、オフェンスに、ディフェンスにと、キーマンとなる役割を果たすのが、2年目の比江島慎である。

「金丸さんのマークが厳しくなると思うので、自分が得点を取らないといけない」と果敢にドライブを仕掛けたかと思えば、日本代表でのポイントガードの経験から、タイミングのいい好アシストを繰り出している。鈴木貴美一ヘッドコーチも「シュート力もアシストも期待に応えてくれている」とファイナルの比江島の出来には満足している。金丸がエースならば、比江島はキーマン。トヨタとしてみれば、このアウトサイドの2枚看板を抑えるのは至難の業なのである。

そして、何より比江島が心がけているのはディフェンスだ。トヨタのエースとして成長中の田中大貴を抑えることが課された命題でもある。今シーズンの比江島はオールジャパン前に左足首に重度の捻挫を負い、オールジャパン明けには膝にひびが入る骨折を伴い、「自分のキャリアの中でここまでケガしたことなかった」というほどの度重なるケガで12試合欠場。不完全燃焼のシーズンを送ったことにより、ファイナル前にはこのように決意を語っていた。

「シーズンの出来には全然満足してないので、挽回できるとしたらこのファイナルの舞台。立て続けにケガをしたことで、どうやって調子を上げていけばいいのか調整が難しかったけれど、プレーオフに向けて上げてきたつもりですし、今は体のキレもいいです。トヨタは田中大貴のチームになっている。正直、今の自分がまさっているところは一つもない。でも、田中大貴に勝てばアイシンが勝てると思うので、そこはしっかりと抑えたい」

トヨタでは主に金丸のマークは菊地祥平が担っているために、終始、比江島vs田中という大学時代からのライバル対決が実現しているが、3戦目までは、ドライブやアシストにと、要所でアグレッシブな攻防が目立つ比江島に軍配が上がっている。

優勝まであとひとつ――。王手をかけた中で、王座奪回へのキーマンとなる比江島の手応えと胸中はいかに。
(インタビュー:5月25日)
 
 

◆アイシン三河のキーマン◆#6比江島慎インタビュー
(190㎝/G/青山学院大/24歳)

「今はチャレンジャーの気持ちで田中大貴を守っている。
ケガをしてシーズンがダメだった分もプレーオフで頑張りたかった」

――3戦目は快勝でした。チームの出来をどう評価しますか?

レギュラーシーズンにやってきた形が出せたと思います。金丸さんが得点を取ってこそ、やっぱりアイシンの形になると思う。オフェンスで悪かったところを選手で話し合って、金丸さんが外からだけでなく、ポストアップをしたり、いろんな形で攻めやすいようにとチームで動きを作れたのが良かった。

――その金丸選手の出来はどう思いますか?

1、2戦はダメだったかもしれないけれど、レギュラーシーズンでも今日のようにあれだけ気持ちの入っている金丸さんを見たことがなかったので、頼もしかったです。

――自分自身の3戦目の出来は?

オフェンスは金丸さんがやってくれるので、その分、ディフェンスで体力を出してやれたので、そこはしっかりと自分の役割ができたと思います。田中大貴が休んだ時に1対1はできたんですけど、でも、まだまだできると思います。

――NBLのファイナルは初。トヨタのスカウティングの中で金丸選手が抑えられたら、次はアイシンが逆襲。互いの駆け引きが出てくる3戦先勝のファイナルを通して、戦い方の面で気づいたことはありますか。

(しばらく考えて)1回の試合で終わるより、何試合もやったほうが力の差がわかると思いました。このファイナルは楽しくやっているし、もっともっと試合したいという気持ちもありますし、自分自身、まだまだできると思います。

大学時代からのライバルとして田中大貴とのマッチアップに燃えている。ディフェンスでは自分なりのポイントがあるという

――3戦目まで田中大貴選手を要所で抑えているが、ディフェンスの手応えは?

最初のトップスピードのところでワンクッションを止めれば何とかなるというか、向こうはあんまりしつこくは攻めてくるタイプではないので、最初のところを集中してディフェンスしています。あとは気持ちよく打たせないこと。気持ちよく打っていないから、リズムが狂っているところもあると思います。

――ファイナル前に田中選手に対して「今、自分がまさっているところは一つもない」と言っていましたが、このファイナルでは「負けたくない」という気持ちなのでしょうか。

多分、今は僕のほうがチャレンジャーという気持ちを持っています。大学4年のインカレの時とは逆の立場だと思うので、そのチャレンジャーだという気持ちを全面に出している分、うまくいっているのかもしれません。でもまだまだです。

――アイシンはこの2年間、リーグもオールジャパンもファイナルを逃しています。2年目の選手でありながらも、ファイナルを逃してきたことについてはどう感じていましたか?

去年は新人王(の受賞式)として、この場所でファイナルを見たのは悔しかったので、今年こそはという思いは強いです。相手もトヨタで、トヨタとアイシンはライバル関係にあると思うので、そういう意味でも負けたくないです。

今シーズンに関しては、コミュニケーションを多く取って来たし、ディフェンスから流れがつかめるようになったのは改善できたところ。セミファイナルもディフェンスで粘り勝ったと思うので、昨シーズンの負けからしっかり反省を生かせていると思います。

――ケガをしてレギュラーシーズンでは不本意だったと思いますが、完治した今は「やれる」という手応えをつかんでいるのでは?

ケガをした分もプレーオフでは頑張ろうという気持ちはありました。レギュラーシーズンの出来ではたとえ日本代表に入っても「なんでお前が?」と見られると思うので、その分、この舞台で(見ている人に)納得してもらいたいのもあります。

――優勝まであと一つ。次の試合のポイントと優勝に向けて意気込みを。

やっぱり、ディフェンスとリバウンドをやれば自分たちのペースになるし、ピックからの合わせも出てきました。やるべきことをやれば勝てる手応えはあります。自分のマッチアップに勝って、トヨタに勝って、優勝したいです。
 
 
インタビューの中で「日本代表」という言葉をみずから切り出した比江島。昨シーズンは6月の韓国遠征から8月のジョーンズカップ、10月のアジア大会まで走り続けた。休息がなくそのままリーグに入ったことで「どちらかというと、体力より精神的に疲れたのは確かで、ケガをしたのは、代表活動が終わって気の緩みがあったからかもしれません」と振り返っている。とくにアジア大会では主力ガードとしての出番も長かったため、代表活動とシーズンを通してのコンディションの作り方は今後の課題にもなった。

それでも何とかプレーオフには間に合わせることができたのは、一つ階段をのぼって成長を遂げた証でもある。苦労したシーズンの果てにたどりついたのは、得点を取りながらもエースを封じる役割。試行錯誤と挑戦を重ねてきたシーズンだからこそ、最後の舞台ではすべてをぶつける気持ちで戦う。