女子アジア選手権
渡嘉敷来夢の代表デビュー戦は3分56秒の足慣らし

文/三上 太   写真/加藤誠夫

日本代表として、国際大会デビューを果たした渡嘉敷来夢

2011年8月21日 大会1日目

渡嘉敷の代表デビュー戦は3分56秒の足慣らし
短時間ながらも4得点6リバウンド

 ベンチに戻ってきた♯10渡嘉敷来夢の表情は、どこか晴れやかだった。

 第1Q残り3分56秒で♯5石川幸子と交代してコートへ。渡嘉敷の登場に会場からは大きな拍手と歓声が起こった。入ってすぐに、相手センターのゴール下を阻止してディフェンスリバウンドを奪取。さらに♯7三谷藍の3Pシュートのこぼれ球をきっちり拾って初得点。♯13大神からのナイスパスを受けてゴール下でノーマークシュートも決めた。
渡嘉敷が入って日本は4連続ゴール。1Q終了間際にはゴール下シュートを打ったが、これがこぼれてリバウンドも決まらなかった。この後、第2Q以降、彼女の出番はなかった。中川ヘッドコーチは「第1Qと第3Qに5分ずつの起用を考えていた」と言い、1Qの動きを見て、残りの出番はなしになった。

「渡嘉敷がいると、中にボールが入るので心強い」と話す中川ヘッドコーチ。

 このレバノン戦で渡嘉敷は4得点、6リバウンドを記録した。
右足に不安を抱えての今大会の出場。チーム練習に合流したのは、大会の1週間前だった。6月のギリシア遠征で左足首をねん挫。それが回復してきた矢先に、高校時代に疲労骨折で痛めた右足に再び薄く影が出ているとの診断で、チーム練習から外れてのリハビリを続けてきた。

 アジア選手権までに渡嘉敷は間に合うのか――。周囲の期待と心配がいつもつきまとっていた。チーム練習に加われなかったこの2カ月半の間も、取材陣からコメントを求められることが続いた。そんな期待に「正直、すごい重圧を感じている」とポツリ本音をもらし、涙することもあった。

 思い切りプレイができないもどかしさと、チーム内での合わせ練習が絶対的に不足している不安。「でも、アジアのライバルたちに負けたくない」という強い思い。自分がどれぐらいできるのか、気持ちが揺れ動く日々が続いていた。

 だが、コートにひとたび立った時の渡嘉敷は強い。「試合をやるのはギリシア戦(6月)以来なので、試合に出ることに緊張した」と言いながらも、ゲーム中は冷静だった。

 得点やリバウンドにからんだことについて聞かれ、「自分から点を取ったプレイがなかったので、もっと取りに行きたかった。限られた分数だから仕方がないけれど。今日は何ができたかと言われたら、ラッキーシュートとラッキーリバウンドが多かった」と苦笑いしながらも「体力的にはきついが、もっと出たかった」と意欲を見せた。

 渡嘉敷にとってはこのレバノン戦が代表のデビュー戦。その感想を聞かれると「まだデビューしたという感じはしない」と語り、1Q終了間際にゴール下シュートとリバウンドを外したことに触れて、「終わり方がよくなかった。もっといい終わり方をしたかった」と、しきりに悔しがった。

 4分足らずの出場で自分の持ち味を存分に出せたとは言えなかったが、「今はコートに出るのが楽しい」と、笑顔を見せた。

「このところ試合にあまり出ていないせいか、試合のプレッシャーはあまり感じていないです。もっと競ったところで出されたり、中国や韓国が相手なら緊張するのかもしれないけれど。でも、今はアップするのも楽しいですね。残り1週間、めいっぱいプレイできることを楽しみたいです」

 決して満足はしていなかったが、久々の公式戦、アジア選手権という初の大舞台でプレイしたことで、渡嘉敷の中でこれまで抱えていた不安が、かなり吹っ切れたような気がする。「コートに出ているのが楽しい」という言葉が、何よりもそれを物語っている。

 大きな舞台ほど力を発揮する彼女のことだ。一戦ごとにゲーム感を取り戻し、チームとの連携プレイも増えてくれば、さらに渡嘉敷らしさが増していくはずだ。限られたプレイタイムの中でそれをどうつかんでいくか、すべてはそこにかかっている。