女子アジア選手権
韓国が世代交代の危機を乗り越え、中国を撃破!

文/小永吉陽子 写真/加藤誠夫

中国の足が止まったところでスタミナを生かした韓国。ドライブで中国ディフェンスを切り裂いた韓国のPGチェ・ユナ

8月21日 大会1日目

韓国99(16-16. 24-16. 15-23.21-21. 10-10. 13-7)93 中国

再延長で幕を開けたロンドンへの死闘
韓国が世代交代の危機を乗り越え、中国を撃破!

 大会初日から中国対韓国のビッグカード。しかも再延長となるデッドヒート。ロンドン行きをかけた8日間の戦いが、熱く、険しくなることを予感させる大会の幕開けだった。

 韓国も中国もスタメンに起用したのは、若手やこれまで控えに回っていた選手、代表初選出プレイヤーと“予想外”の布陣だった。これについて中国スン・フォンウHCは「シニアと若手を交代させながら使うことで体力を温存したかった」と語っているが、韓国の思惑は違った。「選手たちに自信をつけてほしかった」と語ったイム・ダルシクHCの采配は、いきなり代表初選手の#10イ・ヨンファ(177㎝、F、28歳)、#11カン・ヨンスク(186㎝、C、30歳)の2人を起用するものだった。

 今大会の韓国は、シドニー五輪当時から昨年の世界選手権まで長年に渡って代表を牽引していた大ベテラン2人が退き、エースシューターのビョン・ヨンハまでケガで欠いたことにより、世代交代を迎えていた。初スタメンに名を連ねた2人は決して若い選手ではないが、これから迎える決勝トーナメントのことを思えば、早く国際試合に慣れなければならない。たとえこの試合で敗れたとしても、女王・中国が相手ならば大きな経験を積んだことになる。しかも出足は、平均年齢23歳で臨んだ中国の若いスタメンたちから先手を取った。

 これと同じ作戦を、日本は昨年の広州アジア大会でも味わっている。今大会は選ばれていない選手だが、韓国の“初物”ガードとセンターに出鼻をくじかれる活躍をされている。韓国のこういった思い切った作戦には、しばしば感心させられる。中国スン・フォンウHCが「韓国のメンバーがどんなプレイをするかわからなかった」と話すほどだった。

 開始5分を過ぎると、互いに主力を送り込んでの勝負となる。韓国が僅差リードで3Qまで試合を進めるが、中国は2大エース#8ミャオ・リージェ(178㎝、30歳)のステップイン、#15チェン・ナン(197㎝、28歳)のインサイドを軸に、大型のフォワード陣が得点を重ねて逆転。残り2分を切って8点リード。このまま逃げ切るかに思われた。しかし、韓国はここから息を吹き返す。

 今後の韓国を担うプレイヤーと期待されている司令塔の#6チェ・ユナ(168㎝、26歳)フォワードの#13キム・ジョンウン(180㎝、24歳)の若い2人が3Pやドライブインで猛追。オールコートプレスをかけてミスを誘い、最後は#6チェ・ユナのスティールからのドライブインで同点に追いつき、延長へと突入した。

 延長でも接戦となり、残り4.6秒、中国のエース#8ミャオ・リージェが1対1を仕掛けてファウルをもらったが、逆転をかけたフリースローは2本決めきることができず、再延長へ。終盤は#8ミャオ・リージェと#15チェン・ナンの2大柱に頼った中国だが、明らかにスタミナ切れ。韓国がスタミナある攻防で粘り勝ちした試合となった。

「中国には平均身長で8㎝(中国/189.9㎝、韓国/181.5㎝)の差があるが、若さとディフェンス力で勝つしかないと思った」と韓国イム・ダルシクHC。この日ハイポストで起点となって20得点をあげたセンター#15シン・チョンジャは「監督に自信を持ってやれば勝てると言われ、その通り、勝つことができたのがうれしい」と喜びを表現した。一方、勝ちゲームを逃した中国のスン・フォンウHCにとってみれば後味が悪く「ゲームをコントロールできずに勝ち切ることができなかったが、予選リーグとしてはいい練習になった」と言うにとどまった。

 この試合は、世代交代の危機を迎えた韓国が、新しい時代を告げるべく、躍動した一戦だったことに尽きる。指揮官の「自信を持って戦おう」の言葉で団結した韓国は、中国にはリバウンドの数で21対37本と圧倒されたが、要所の3Pを決め、ディフェンスでは中国のターンオーバーを15個(韓国は7個)誘ったのも大きい。また、この試合で大活躍した#6チェ・ユナと#13キム・ジョンウンはこの2年間、ケガで代表から外れていた選手だが、北京五輪では活躍しており、見事な復活劇を果たしたことになる。「2人は久々の国際ゲームだったが、自信を持ってやっていた。今日は褒めてあげたい」と、ヘッドコーチから得た信頼の大きさからしても、2人が今後の韓国を背負っていくことを印象付けたゲームだった。

 しかしながら、これで中国がダメージを受けたかといえば、まだ大会の序章にすぎない。両国ともミスが多かった内容なだけに決勝トーナメントに向けて修正してくるだろう。ただ――準決勝を迎えるにあたり、この勝敗が順位にどう左右されるか。序章にすぎないながらも、どこの国も1位抜けを目指しているだけに、韓国にとっては大きな一勝だったことは間違いない。