女子アジア選手権
日本の若き大黒柱・高田真希の戦い

文・写真/三上 太

体を張った強いプレイが求められている高田真希

8月22日 大会2日目

経験を生かして、さらなる脱皮を図る
日本の若き大黒柱・高田真希の戦い

「明日からはもっとファウルをもらうような強いプレイをしてほしい」

 女子バスケットボール日本代表の中川文一ヘッドコーチは、8月21日に開幕した「第24回FIBAアジア女子バスケットボール選手権大会(以下、アジア選手権)」の初戦、対レバノン戦に勝利したあと、選手たちにそう注文をつけた。だがそれはレバノン戦に限ったことではない。昨年チェコで行われた「第16回FIBA女子バスケットボール選手権(以下、世界選手権)」でも女子日本代表はファウルを受ける数が少なかった。そのことを省みた中川ヘッドコーチは、今年度のチームをスタートさせると同時に「ファウルをもらうプレイ」を繰り返し要求していたのだ。

 迎えたアジア選手権第2戦の対チャイニーズ・タイペイ戦。中川ヘッドコーチの要求にしっかりと応えた女子日本代表は81-54と4強の一角を圧倒した。なかでも力強いプレイでチームに勢いを与えたのがセンターの髙田真希である。味方がシュートを打てば、ゴール近くのよりよいポジションを取るために相手と体をぶつけあい、ボールを手にしたときには、相手がぶつかってきても果敢にゴールに向かい、ファウルを受けながらシュートをねじ込む。結果としてこの日はチーム最多の被ファウル数5という数字を上げている。

「今日の試合に限らず、今年からの合宿では『ファウルをもらうプレイが少ない』と言われ続けてきたんです。だから自分が積極的にシュートに行くことによってファウルをもらえればなと。点数を取りに行くというより、ファウルをもらおうという思いがありますね。相手から逃げずに強くゴールに向かえばファウルがもらえてフリースローになるので、得点を積み上げるためにもそういったプレイは重要になると思います」

 高校女子バスケット界の名門、愛知・桜花学園高を卒業してWリーグのデンソー・アイリスに入団した高田は、1年目から女子日本代表に招集され、前回のアジア選手権にも出場している。チームはその大会で世界選手権への出場権を得たものの、高田自身はほとんど出番がなかった。迎えた昨年の世界選手権では8試合で平均出場時間15分と、バックアップメンバーとしてはある程度の出場時間を与えられたが、今度は自分自身が満足のいく結果は残せなかった。いや、数字上では平均3.6得点、3.4リバウンドを上げているのだが、世界レベルの身長の高さにプレイが委縮してしまう場面を何度も見せている。

「昨年の世界選手権がきっかけで、もっとうまくなりたいというバスケットへの意識が変わりました。プレイがうまくできないといった経験が、あのときの自分には必要だったと思うし、あの世界選手権があったからこそ、今の自分があるんだと思います」

 国際レベルの大会が終わると多くの選手はたいてい「いい勉強になった。この経験を次に生かしたい」と口にする。しかし国内リーグに戻れば、世界でしたような苦労をしなくても得点やリバウンドが取れてしまうことがある。すると徐々に国際大会で経験した苦労を忘れて、楽なプレイへと終始してしまう。そしてまた次の国際大会に出たときには、前とほとんど変わっていないことも多々ある。高田も同じように昨年の世界選手権が終わったあとに「すごくいい経験ができたし、勉強にもなった。でもこれを生かさなければ意味がないので、この経験をしっかりと生かしたいと思います」と言っていた。

 その直後に開幕した昨シーズンのWリーグでは安定して力強いプレイを発揮し、初のリーグ得点王に輝くと、得点以外でリーグが定める7つの個人成績でも、3ポイントシュート、アシストを除く5部門で堂々2位の成績を上げている。それらはすべて「世界選手権での経験を生かして、もっともっとうまくなりたい」という髙田の思いが昇華した結果なのだ。

 だが繰り返しになるが、彼女が本当の意味で「経験を生かした」と言えるのは国内リーグではない。世界やアジアの文字どおりのビッグマンと対峙し、それでも果敢にゴールへと向かえたときである。チャイニーズ・タイペイのセンター陣はパワーこそあるものの、自分とほぼ変わらない身長の選手たち。越えなければいけない中国、韓国のセンターは190cm超、もっと言えば2mの選手もいる。それらの選手に対して戦えるか否か。それがチェコで発した言葉の真偽を図るバロメーターとなる。

「中国や韓国のビッグマンたちに対してこそ、ファウルをもらうプレイや、自分が得意としているドライブが有効になってくるので、オフェンスでもディフェンスでも足を使ってプレイしたいと思います」

 21歳最後の日(8月23日生まれ)に、アジアバスケットボール連盟が試合ごとに算出する「Eff(Efficiency・仕事の能率。つまりは試合の貢献度)」で24という高い数字を叩きだした髙田。22歳になった今日からさらなる成長の加速度をつけたとき、ロンドンオリンピックへの扉はまた少し日本に向かって開き始める――。