女子アジア選手権
ジョーカー登場!続々切られる韓国の飽くなき勝利へのカード

文/小永吉陽子  写真/三上 太

後半、鋭いドライブで日本のディフェンスを切り裂いたキム・ダンビ

2011年8月23日 大会3日目

 若いながらも韓国が試合巧者な理由と
予選リーグで使った“カード”

 FIBA主催大会の日韓戦での勝敗は日本の7勝32敗になった(アジア競技大会、東アジア競技大会は含まず)。
日本は韓国に対して圧倒的に分が悪い。

 初日のコラム(韓国×中国)で書いたように、この大会を迎えるにあたり、韓国は世代交代の危機にあった。しかし、若返った韓国はスタミナと脚力ある選手たちが、アグレッシブなディフェンスと、日本を切り裂く#9キム・ダンビのペネトレイト(180㎝、21歳)に代表される勢いで襲い掛かってきた。日本は逆転されてからというものの、韓国のゾーンディフェンスを攻略できずに攻め急ぎ、“我慢”ができなかったのだ。最終的には、若くとも韓国の伝統である“勝負強さ”に屈したといえる。

 過去の歴史を振り返ってみると、韓国には、いつも勝負所でのタフネスさで及ばない。試合後、ポイントガードの#6チェ・ユナは逆転できた要因を「集中力」「負けられない韓日戦だった」と述べている。

 一言に気持ちの強さといっても、オフェンスを決め切る技術があってのこと。隙をついてのドライブ、スクリーンを駆使してノーマークを作っての3P、ゾーンディフェンスを出すタイミング、インサイドのコンビネーションプレイなどは、不変な韓国スタイル。そして、試合ごとに選手起用を変えてもマッチする戦法、いかなる選手がコートに立っても託すことができる信頼関係――点差にしたら僅差かもしれないが、こうした“駆け引き”のうまさに日本はやられてしまうのだ。

 毎年のように対戦し、手の内を知られるアジアでは、世界と戦う以上に綿密な作戦が必要だと感じる。しかも女子の場合は中国、韓国、日本、チャイニーズ・タイペイの4強であることは絶対なのだから、技術的なスカウティングだけでは及ばず、代表のメンバー構成、選手が所属するチーム背景、選手が背負っているもの、性格や気質に至るまで、把握して臨むことが必要なのではないだろうか。

 というのも、日韓戦では、韓国のチーム事情からくる思惑がズバリ的中した場面があった。4Q残り3分、逆転3Pを決めた#4キム・ヨンジュ(178㎝、25歳)の起用だ。彼女は今大会、肘のケガで辞退したエースシューター、ピョン・ヨンハ(発音はヨナ、31歳)に変わって入った選手だ。最初のエントリー15名にも入っていなかったが、その枠を飛び越えての選出だった。

 なぜ、15名に入っていない選手を代表入りさせたかといえば、韓国代表のヘッドコーチ、イム・ダルシク氏が指揮を執る新韓銀行のシューターで、信頼関係があったからだろう。当初は国際大会の経験がないということで選考漏れしていた。ところが、ピョン・ヨンハの出場が無理だとなった7月上旬、ヘッドコーチは「国際大会では知られていない選手なので、ジョーカーとして使う」と、キム・ヨンジュの選出を決定している。日本としても、キム・ヨンジュがリーグ屈指のシューターであることは知っていたが、どこでどう使われるかまで考えていただろうか。

 結果論ではあるが、キム・ヨンジュは日本戦における“ジョーカー”になった。この日、韓国は3Qまでお家芸の3Pは2/15本で13%しかなかった。ジョーカーを投入するしかないところまで追い込まれたのだ。キム・ヨンジュは4Qにたった2分50秒の出場だけで大仕事をやってのけた。

 もうひとつ。世代交代したばかりの韓国が、なぜここまで自信を持ってプレイできるかといえば、リーグを制覇した新韓銀行の6人の選手が中心になって構成されていることも見逃せない。だからこそ、若くても信頼関係と戦術理解力に長けている。日本がジワジワと追い詰められ時間帯、そして逆転に至るときにやられたのは、#6チェ・ユナ、#9キム・ダンビ、#12ハ・ウンジュ、#4キム・ヨンジュら新韓銀行に所属する選手たちのイヤらしい攻撃だった。

 そして、現時点では理由はわからないが、昨年の世界選手権の日本戦でスタメンを務め、大活躍したベテラン#5キム・ジユン(PG、35歳)#14キム・ゲリョン(PF、31歳)の2人は、この試合では1秒もコートに立たなかった。ここまでのプレイタイムの短さからいって、体調面に問題があるのか、完全にバックアップに回っているのかもしれないが、スタメンと同等の力を持つベテラン選手がベンチに控えていることも忘れてはならない。

 日本戦ではジョーカーを起用し、途中からはハ・ウンジュ(202㎝)の高さを活かし、ゾーンディフェンスで勝ちに来た。ハ・ウンジュの高さも切り札のひとつ。中国戦では、オールコートプレスというスタミナの武器で挽回した。世代交代したの中でもチームに存在する“ベテラン”というカード以外のすべてをつぎ込んで、韓国は予選リーグ1位の座をつかみにきたのだ。