制裁解除後、初の海外との強化試合
帰化選手合流!尚武との試合で得た走る手応えと課題

文・写真/小永吉陽子

ケガ人がリハビリ調整中の中で、代表12名入りをかけた競争が始まっている

帰化選手ファイ・パプ・ムール合流!
韓国軍隊チーム「尚武」との試合で得た走る手応えと課題

勝ったり負けたりの中で出てきた「走るスタイル」
KBLの有望若手、軍隊チーム「尚武」との4試合

田臥、石崎、渡邊、橋本らのポイントガード陣は交代に出場し、それぞれ持ち味をアピール

9月末のリオ五輪予選(アジア選手権)に向けて第3次強化合宿中の日本代表が、初の海外チームとの公開試合を行った。

対戦チームは韓国の軍隊チーム「尚武」(サンム)。長谷川ヘッドコーチが2月にKBL(韓国プロリーグ)へ視察に行った際に尚武の監督であるイ・フンジェ氏との間で、強化試合の話がまとまって実現したという。

尚武とは「国軍体育部隊」のことで、選抜されたスポーツ選手が入隊する軍隊チームのこと。韓国男子には20代に約2年(尚武は21ヶ月間)の徴兵制度があるが、試験に合格した選手は「尚武」に入隊し、軍人の身分として競技活動を続行することができる。

その軍人チームの尚武は、今年10月に自国で開催される4年に一度の「ミリタリーワールドゲームズ」(世界軍人競技大会)に向けて、強化のために日本代表との対戦を希望。日本側は、長谷川HCが就任初年度の昨年に韓国遠征からスタートしたように、「隣の国を知ることは重要なこと。KBLの有望な若手で構成される尚武と対戦することで、ゾーンアタックやリバウンドの課題に取り組むことができる」(長谷川HC)と、互いの目的が合致して実現したものだ。

話が持ち上がった2月当初は、「(FIBAによる)制裁解除後であれば」という約束しかできなかったというが、7月の早い段階でフィジカルコンタクトの強い韓国選手と対戦できたことは、これから練習の強度を上げていくうえで申し分のない相手だった。
 
 
日本代表に正式加入直前
リバウンドに期待したい2人の「ファイ」の合流

リバウンドが課題の日本にとって、ファイ・パプ・ムールのインサイドは強力な武器となる

公開された7月17日は、10分ゲーム6本形式で行われた。10分3本を1セットのゲームとし、1セット目は若手と帰化申請が下りたファイ・パプ・ムール(200㎝、28歳、新潟)と、帰化申請中のファイ・サンバ(205㎝、28歳、東芝)が加入したメンバー。2人の「ファイ」は帰化枠を適用することを見越して、第3次合宿より合流している。2セット目は田臥勇太や石崎巧、竹内譲次など、年齢的にベテランと呼ばれるチームに田中大貴を入れた布陣だ。

1セット目に先手を取ったのは日本だった。ガード陣が前からプレスをかけてミスを誘って得点を重ね、ファイ・パプ・ムールのリバウンドから速攻も出て主導権を握った。若手チームは2勝1敗。

2セット目のベテラン中心のチームは、トータルスコアでは日本のほうがまさったが、帰化選手を欠いての戦力はリバウンドに跳び込まれ、ゾーンアタックに足が止まるシーンもあった。勝敗だけでいえば、1勝2敗で尚武がもぎ取った。

この日の結果は3勝3敗で総合得点では日本が上回ったが、この一週間はお互いに勝ったり、負けたりなのだという。日本に関していえば、若手選手たちがアグレッシブに持ち味を出して活気づいてきたことを印象づけた。現在、NBAサマーリーグに挑戦中の比江島慎や、ケガの治療のために合宿に参加していない金丸晃輔、辻直人、川村卓也らの得点源が欠けていたが「だからこそ、彼らの帰りを待つのではなく、切磋琢磨して最後まで競争させたい」(長谷川HC)という狙いで全選手を出場させ、試行錯誤のゲームが行われていた。

そして、今回の練習ゲームで浮き彫りになった課題は、改めて言うまでもなく、永遠のテーマであるリバウンドだった。

ガードの部分では日本のほうが選手層が厚いためにゲームテンポを作れていたが、リバウンドに関しては、かなり跳び込まれた。KBLを見ていても、韓国は国内選手がリバウンドに積極的に絡む。だからアジアの上位で競り合えている現実がある。日本は3次合宿から合流したファイ・パプ・ムールがリバウンドを取れば走れる手応えが見えたのは収獲だが、そこだけに頼っていては国際大会では通用しない。今回の対戦では、日本人選手がどうリバウンドに絡むかという点で、今まで以上に課題が明確になった。

「だいぶ選手間の特徴がわかってきた中で、尚武との練習ゲームができたことはとても良かった。この時期にフィジカルの強い相手とやってどう対応するか、リバウンドの意識、韓国の縦のドライブの対応、ゾーンに対するオフェンスという課題が見えた。(小競り合いでエキサイトしたシーンについては)それも想定内で、アジア選手権ではもっと激しいシーンが出てくると思うので、そういった場面でも受け身にならないことが大事。ムキにならずに冷静になりつつ、闘志を出していきたい」(田臥)

今後、7月末~9月上旬にかけては、さらに強度を上げたチームとの海外遠征や国際強化試合が組まれている。長谷川HCは、「今後行われる中国での招待試合と東欧遠征(チェコ代表、オーストリア代表と対戦)、日本での国際強化試合、台湾でのジョーンズカップでは、様々な組み合わせで選手を競わせて、どんな場面で誰がどう役立つのか、選手の個性を見極めたい」と語る。そのために、大会ごとに出場メンバーを変えて臨む方針だ。

なお、長谷川HCによれば、ファイ・パプ・ムールについては、既に帰化申請は下りているという。ただし、母国のセネガルから書類を取り寄せて法務省に提出し、日本のパスポートを取得するのはこれからで、9月末のアジア選手権に向けて手続きを進めていく方針だ。ファイ・サンバは帰化申請中である。