インターハイ2015
夏を制して得た進化のための「気づき」と「高校界への提言」

文・写真/小永吉陽子

優勝の瞬間、スタメン5人はコートの中央で輪になってお互いをたたえあった

初優勝――明成(宮城)

夏を制して得た進化のための
「気づき」と「高校界への提言」

「横綱相撲はしたくない」――夏の初制覇を狙うウインターカップ王者の戦い方

明成は強かった。八村塁や納見悠仁の個人技、三上侑希と富樫洋介のアウトサイドのシュート力、足立翔のリバウンド力の融合はどんな試合でも冷静さを失わず、総合力は頭一つ抜けていた。正智深谷(埼玉)、延岡学園(宮崎)、福岡第一(福岡)、帝京長岡(新潟)と個性あるチームや留学生を擁するチームを撃破し、決勝では3年がかりのチーム、桜丘(愛知)を92-69で下してインターハイ初優勝を遂げた。

創部は2005年。この11年間で冬を3度制覇し、夏冬あわせて6度の決勝進出。しかも昨年のウインターカップはオール2年生で2連覇を達成している。明成といえば40分間手を抜くことなく走り切り、基本を徹底するスタイル。その土台にプラスして「日本が世界で戦えるバスケを高校界から発信していきたい」という佐藤久夫コーチのモットーは、その年に集まった選手層を生かした “工夫” が散りばめられている。

学区内の選手構成で戦った公立の仙台高時代はパッシングでチームの連動性を追求し、2009年にウインターカップを初制覇した年は、留学生を擁するチームに対抗する駆け引きある攻防と勝負所では圧倒的な走りを展開した。そうした工夫ある戦い方をチャレンジし続けていることが、高校界を牽引している理由だろう。

内外角を巧みに使い分ける八村塁。帝京長岡のエース、ディアベイトの前でも1対1の勝負を何度も仕掛けた

とくに今年は、高校生で唯一、日本代表候補に選出された “超高校級” 八村塁(200㎝)を擁していることもあり、「個々のスキルを上げること」にも一層の力を入れている。

ウインターカップ2連覇中の明成であるが、「横綱相撲はしたくない」(佐藤コーチ)と、初戦からオールコートのゾーンプレスを主体にアグレッシブなチェンジング・ディフェンスを展開している。その豊富な運動量は脚力と体力がなくてはできないもの。今年は今までより強度の高い脚力、筋力、持久力をつける体作りに励んできた。そのハードさは、今年からアシスタントコーチに就任したOBの蔦木大智コーチ(2011年卒業)いわく「僕らの時はこんなにハードなトレーニングをしたことがない」と言うほど、高校生にしては強度の高いものだ。

エースの八村はとくに体作りの効果が現れていた。昨年までは終盤にバテる時間帯があったが、今年は一試合を走り切り、次々と立ちはだかる留学生に対しても、リバウンドでは高いジャンプと大きな巻き込みでボールをつかみ、1対1ではプルアップジャンパーなどオフェンスの多彩さが増し、インサイドでも当たりの強さを発揮してフィニッシュし続けた。

準決勝の帝京長岡戦ではテクニックナンバーワンの呼び声が高いディアベイト・タヒロウ(203㎝)とのマッチアップが大きな注目を集めたが、八村は29得点、10リバウンド。ディアベイトは16得点、11リバウンドで八村がまさって要所でも冷静に抑えた。また、決勝の桜丘戦ではディフェンス力のあるモッチ・ラミーン(203㎝)を前にしても早めにファウルを誘ってインサイドとアウトサイドを使い分け、時には周りの選手も使うといったクレバーさも見せつけた。

1対1という点ではガードの納見悠仁の巧さも光った。2年時からボールコントロールする時間は長かったが、今大会はポイントガードとして独り立ちを目指した。ボールキープ力をつけ、得点が欲しい場面ではアウトサイドシュートを決め切り、緩急をつけたドライブで何度も抜き去った。司令塔とエースが安定していたことで、チームは崩れることがなかったのだ。

簡単に優勝したわけではない。細部にこだわったチーム作りの成果

アウトサイドシュートやドライブなどシュートの安定さは群を抜いていた納見悠仁。司令塔としても成長

さらに際立ったのが、チームが機能するために働く全員の仕事ぶりだ。

シューターの三上侑希は準決、決勝で徹底マークに苦しんだが、これをカバーしたのはもう一人のシューター富樫洋介。決勝では相手の流れが出てきたところで次々に3ポイントを決めて相手にダメージを与えている。足立翔の献身的なプレーも重要な要素だ。常にリバウンドに跳び続け、留学生に対して体を張って八村への強力な手助けをやり遂げた。

今大会は、球際の強さが武器のガード増子優騎が戦線離脱して出場できなかったが、その一枚のユニフォームをめぐっては激しい争奪戦が繰り広げられたていた。ユニフォームを勝ち取った2年ガードの庄司勇人は短い時間ながらも、タイトなディフェンスで流れを変える役割を果たしたている。

また、3Qまで我慢比べとなった準決勝・帝京長岡戦の苦しいところでコートに立ったのは3年生の井上駿だった。

井上は日頃の練習から下級生を育成する役目を担うなど、チームを支えている選手。そんな信頼の厚さが苦境での出番につながり、たった1分半の出場ながら、アグレッシブなディフェンスでチームを鼓舞する重責を果たしている。打てども、打てども、リングに嫌われ続けていたシューターの三上は、そんなベンチメンバーの思いを受けて、3Q終了とともにブザービーター3Pを決めてチームを勢いに乗せ、4Qの明成はそれぞれの働きが「線」としてつながる爆発力を展開した。

「今年に入ってここまで苦しい試合をしたことがなかったので、帝京長岡戦をみんなで乗り越えたことは成長できたと思う」(納見)という言葉通り、土壇場で発揮した底力からは普段の練習を自信にしてきたチームの絆が見え、優勝までのレールを引いた試合となった。

「みんなで先生にインターハイの初優勝をプレゼントしたかったので、それができてうれしい。どの試合も負ける気はしなかった。みんなが攻め気を出して、普段通りにできたから優勝できたのだと思います」と、インターハイでキャプテンを務めた八村は自信と笑顔をのぞかせた。
 
 
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