アジア選手権への抱負を語る
チャンスを生かしてA代表入り。気迫あふれる“プラスα”司令塔

インタビュー&文/松原貴実  写真/小川聖市

正中岳城インタビュー(180㎝/PG/トヨタ自動車)

ジョーンズカップから昇格した司令塔。ジョーンズカップのような熱いハートを、武漢でも見せてほしい(写真はジョーンズカップより)

 田臥勇太、木下博之の相次ぐ故障で赤信号が点ったPGポジションに『新しい顔』として選出された正中岳城。アジア選手権の前哨戦ともいえるウイリアム・ジョーンズカップ(8月4日~14日、台湾で開催)では、日本が送り出した若手チームのリーダーとして気迫あふれるプレイを見せつけた。

 各国のA代表と目されるチームに真っ向からぶつかり、韓国と競りあい、ヨルダンからは2勝を奪取。「あのチームのスピリット、献身的チームワークはこれからA代表チームがやるべきことを示してくれた」と、トム・ウイスマンHCもその戦いぶりを称えた。

 それだけにその活躍が注目される今大会。悪い流れになったときこそ、気迫あふれる正中の出番であろう。本当の厳しい戦いはこれから。田臥という絶対的司令塔を欠いたチームに『勢いをもたらす存在』として正中にかかる期待は大きい。

 以下は9月7日、代表チーム合宿でのインタビューをまとめたものである。
 
 
 気持ちも技術もユニフォームに懸ける思いも
日本で1番レベルが高いのが日本代表
チームのプラスαとなる存在になりたい

――ジョーンズカップを挟んでA代表チームメンバーとして中南米遠征、ドイツ遠征に参加しました。その経緯は?

3つにグループ分けされている代表チームのグループ2に自分は入っていて、そのグループ2にグループ3の一部の選手とグループ1の岡田(優介)が入ったチームでジョーンズカップに出ることは決まってました。で、トレセン(東京都北区・味の素ナショナルトレーニングセンター)で5日間合宿やったんですが、そのときグループ1の方にケガ人が多くて、僕と太田(敦也)がその代わりというような形でそっちの練習に入ったんです。それで結局そのまま中南米遠征に参加することになりました。

――その遠征が終わって、ジョーンズカップに参加するため台湾へ直行。疲れもかなり溜まっていたのではないですか?

正直、かなり…(笑)。でも、自分はもう『若手選手』というカテゴリーではないことはかわかっていたし、『若いチーム』と表現される集団から出ていかなくてはならないと感じていたので、このジョーンズカップはそういうくくりで自分が向かう最後の大会だろうと思っていました。だから、そこでは自分たちの代が下の選手を引っ張っていかなきゃならないと、自分たちが何かを見せることで下の選手にやらせていかなければならないと、それこそ大学のときの上級生のような気持ちでコートに立ちました。疲れはあったけど、それ以上に夢中で、全力で戦った大会でした。下の選手を引っ張って戦うというのは、自分の中でも新しい感覚だったし、それが思い切りのいいプレイや、他のチームから嫌がられるようなハツラツとしたプレーにつながったような気がします。

――そして、ジョーンズカップ終了後、またA代表としてドイツ遠征に参加することになったわけですね。向こうでの試合を通してどんな感想を持ちましたか?

グル―プが違ってもシステムだったり、イメージだったり、やるバスケットは一緒なんですが、メンバーが違うと形も違ってきます。ドイツではスタートで石崎(巧)とツーガードで出たり、自分が想像していなかったような場面も経験しました。最初この代表活動に呼ばれたときはそういう場面に自分が立つというところまで想像できなかったので、すごく戸惑うこともあったし、不安を感じたこともありますが、ドイツではずっと石崎と同じ部屋だったので、わからないことをいろいろ聞いて教えてもらったりして何とか乗り切ることができました。大変ではあったけれど、選手としてはいい経験をさせてもらったと思っています。ドイツには選手はタフな選手がいっぱいいるし、システムもすごくすばらしかったし、学ぶことは多かったです。

――同期である石崎選手は「昨年からの代表活動を通して、ようやく先輩たちと同じステージに立てるようになってきたように思う」と言っていますが、自分としての手ごたえは?

多分、今、僕が感じているのは1年前の石崎が感じたことなのではないかという気がします。代表としての国際経験、プレイの精度、チームの中における存在感など自分はすべてにまだまだ足りていないわけで…。特に自分は去年「アジアのリスペクトを勝ち取る」という機会に参加できていないので、やはり早回しでその機会を戻す必要があります。僕は『チームを機能させるための理解』というのは、時間があってなんぼ、コーチやスタッフや選手と接してなんぼだと思っているので、そういう意味で早回しは難しいとは言えますが、それでもやらなければなりません。(新しく入った自分が)勢いであったり、相手に嫌がられるプレイであったり、何かプラスαの存在になれればいいなぁと思っています。

――2年前のアジア選手権ではメンバー入りしながら登録ミスの問題で試合に出ることができませんでした。今回のアジア選手権に出場するにあたり何か思うところはありますか?

2年前は今回のように合宿や活動に参加していなかったので、急に呼ばれてお客さんのような感じでもあったのですが、それでも現場で見た代表、日本のアジアに置ける地位などが自分が幼いときに感じて、想像していたものとは全く違っていたのでショックを感じました。あまりにも違い過ぎて受け止めるのがつらいという現実がありました。でも、自分があのときの一員であったこともまた事実であり、そう思うと、今回、同じ中国の地で同じアジア選手権に出場できるということに意味も感じます。今回このチームに入って取り戻したいものもあるし、「ようやく」という気持ちもありますね。

 ――その分、大会に懸ける思いも強い?

そうですね。今年グループ2のメンバーとして代表チームに呼んでいただいたときには、正直、A代表としてオリンピックを目指すということは考えていませんでした。表向きには「全員にそういう可能性がある」と言われましたが、現実的にその可能性は低く、今年はここで自分を磨いて来年を目指すというか、次につなげるために自分ができることをここで頑張る年になるのだろうなぁと思っていました。でも、今回最終メンバーに選ばれたことで(アジア選手権の)舞台に立てる大きなチャンスをもらい、とにかく今は自分のできることを精一杯出し切りたいと思っています。気持ちも、スキルも、ユニフォームに懸ける思いも日本で1番レベルが高いチームが僕が描く代表チームなので、それを自分の中で確認しながら思いきって行こうと思います。