全勝優勝。その勝因を5つのポイントから分析
中国に圧勝で決めたリオ五輪への出場権

文/舟山 緑  写真/小永吉陽子

リオデジャネイロ・オリンピックへの道をチーム一丸で切り開いた女子代表。見事な勝利だった

■FIBAアジア女子選手権大会 兼リオデジャネイロ・オリンピック アジア地区予選

ディフェンスと走りの勝利。
歴史的圧勝で決めたリオ五輪への出場権

85-50。日本が中国に圧勝した瞬間、リオデジャネイロ・オリンピック出場が決まった。
試合前には予想だにできなかった大差がついた決勝戦。
予選ラウンドでは1点差の辛勝だった日本が、平均身長186.5㎝の高さとパワーを誇る中国を
武器であるアグレッシブなディフェンスと走りによって完膚なきまでにねじ伏せたゲームとなった。
エース渡嘉敷来夢は、攻守で存在感たっぷりの仕事を果たし、
ウイングの本川紗奈生と山本千夏は、スティールからブレークに走ってチームに流れを作った。
司令塔の吉田亜沙美は、大一番のこの一戦を見事なまでにコントロールし、
センターの間宮佑圭はディフェンスとリバウンドでチームをがっちりと支えた。
交代で出た町田瑠唯、髙田真希、王新朝喜らも各自が仕事を果たし、全勝優勝に貢献した。
中国に圧勝した決勝戦を振り返り、5つのポイントから勝因を探ってみたい。

■勝因1:日本が武器としたディフェンス力

中国にリズムを作らせなったプレッシャー・ディフェンス

85-50の勝利。失点50は、予選ラウンド(失点56)のときよりも低い。日本が4人も2ケタ得点をマークしたのに対して、中国は主力も控えも1ケタ台の得点に終わった。まさに日本のディフェンスの勝利だった。ペイント内での得点が日本42得点に対して中国は14得点。予選ラウンドの中国はペイント内で24得点を取っているから、さらに10点ほど低い数字だ。ターンオーバーからの得点は日本24点に対して中国は8点。中国のミスを誘っての得点がいかに多かったか。

195㎝のセンター#15ファン・ホンピンを3人がかりで厳しくマーク。日本はボールへプレッシャーをかけ続け、パスコースを鋭く読んで相手の攻撃を寸断した

日本は序盤から相手のボールマンにプレッシャーをかけ続けた。司令塔の吉田亜沙美は、予選ラウンドに引き続き決勝でもガードの#5チェン・シャオジャ(陳暁佳/182㎝/27歳)や若い#4ヤン・リーウェイ(楊力維/176㎝/20歳)にプレッシャーをかけ、思うようにゲームを作らせなかった。

高さを生かしてパスをつなぎシュートに持ち込むのが中国だが、そのパスを日本が鋭く読んで何本もスティールした。本川紗奈生(さなえ)や山本千夏が前半から果敢にボールを奪ってブレークに走ったのだ。浮き足立つ相手のドリブルをカットしてブレークにつなげた場面もあった。

リバウンドでも日本は、予選ラウンドで見せたボールへの執念を発揮した。取れないボールはティップからチーム・リバウンドにし、センターの間宮佑圭もディフェンス・リバウンドによく跳んだ。シュートが落ちてもしぶとくセカンドショットを決めてくる中国が、なかなかボールを支配できなかったのも、日本の守りの堅さだった。リバウンド本数は、中国43本(OR:18、DR:25)に対して日本は36本(OR:9、DR:27)。予選ラウンドでも決勝でも、高さが武器である中国に大きく負けなかったのが大きい。

さらに、渡嘉敷来夢や間宮、髙田真希らの見事なブロックショットも、相手のチャンスの芽を摘むのに十分だった。日本はスティール12本、ブロックショット6本。対する中国はターンオーバー18本に、ブロックショットは1本のみ。中国の2点ショット成功率を24%(10/42)に抑えた日本のディフェンス力が見事だった(日本は55%=29/53)。
 
 

■勝因2:エース渡嘉敷の貫禄

アメリカでの経験を生かし、存在感を見せつけたエース渡嘉敷来夢

決勝で渡嘉敷来夢は、日本のエースとしてその個人技の高さとクイックネスで大きな存在感を見せつけた。「最初のシュートは緊張から入らなかった」と言うが、ジャンプショットを1本決めたあとは、中国のセンター#15ファン・ホンピン(黄紅玭/195㎝/26歳)をシールしながらパスを受け、ターンからフェイダアェーシュートを決めて波に乗った。

ジャンプショットに加えてローポストでも果敢な攻めを見せた渡嘉敷来夢。この2年の成長を見せつける活躍だった

第2クォーターに入ってすぐにまたもターンからのジャンプショットを沈め、ステップインも決まって27-13とリード。ミドルレンジのジャンプショットだけでなく、ポストで面を取るプレーも見せ、要所で得点を重ねて中国ディフェンスをものともしなかった。間宮とのハイロー・プレーこそ少なかったが、果敢にゴールに向かうプレーでチームを大きく牽引した。

渡嘉敷は、予選ラウンドの韓国戦やチャイニーズ・タイペイ戦ではチームプレーがイマイチかみ合わず、リングに向かうシーンが少なかった。WNBAのシアトル・ストームではスクリーンからポップして外角シュートを打つことが多い。だが、日本代表に合流してからは、スクリーンからのダイブやローポストプレーをも意識。そのタイミングがうまく合わない自分にフラストレーションをためていた。しかし、予選ラウンドの第4戦・中国戦で、「自分の好きなようにプレーした」ことでその躊躇を吹っ切った。「形にこだわりすぎた」自分を反省し、「得意なプレーで勝負すればいい」と決意したのが大きかった。

「舞台が大きくなればなるほど渡嘉敷は強い」と評していた内海知秀ヘッドコーチ。その言葉どおり、決勝での渡嘉敷は攻守で高い集中力を発揮した。「流れの中で自分らしいプレーをしたい」とゲーム前に語っていたように、チームとの連携も全く違和感がなくスムーズだった。中国はこの渡嘉敷のスピードある個人技を止めることができなかった。

「ディフェンスでも渡嘉敷は中国の脅威になっていた」と内海ヘッドコーチが語るように、相手センターをしつこく守ってインサイドで仕事をさせなかった。マッチアップした195㎝の#15ファン・ホンビンは2得点、0リバウンド。ファンは高さと幅のある選手だが、シアトルでも評価の高い渡嘉敷のディフェンス力とチームで仕掛けたしつこいトラップを嫌がってペイント外に出ることが多くなり、野投は4本のみ(うち1本のみ成功)。シュートをねらう場面そのものが少なかった。

決勝での渡嘉敷は33分23秒の出場で、18得点、7リバウンド、ブロックショット2本。WNBAという世界最高峰の舞台で高さと上手さに慣れてきたからこそ、中国の高さを怖れることなく果敢にゴールにアタックできたと言える。また、本川や山本の3ポイントが当たりブレークも出たことで、渡嘉敷だけに大きな負担がかからなかったことも日本のいい流れにつながった。
 
 
◆次ページは「勝因3: スピードを生かした日本の走り」について
 
 

1 / 3123