インカレ2015 4年生STORY
ラストゲーム

文/松原貴実  写真/小永吉陽子 

自分ができるキャプテン像を求めて最上級生の1年間を送った筑波大・小松

ラストゲーム

 先輩たちから渡されたバトンを手にしたときから新しいチーム作りが始まる。そのバトンは手の中でずっしりと重いが、「落としてはならない」と思う。「磨き続けよう」と誓う。
 そして、1年が過ぎるころ、4年生たちはもう1度バトンの重さを噛み締める。後輩たちにこれをどんな形で手渡せるのだろうか?その答えが出る場所、それがインカレだ。
 優勝の栄冠を勝ち取れるか、上位に食い込めるか、あるいは1つの勝ち星を得られるか、各々に掲げた目標は違えど、答えを求めてコートに上がる4年生たちの気持ちに変わりはない。
 しかし、戦いが終わり大会の幕が下りたあと、彼らは“試合結果”とは別の“もう1つの答え”をもらうはずだ。決して数字では示すことができないその答えは、選手1人ひとりに直接届けられる。だれにも読まれることなく、けれど確かに、その胸の奥にしっかり届けられるのだ。

 
<ページ1>筑波大――小松雅輝
<ページ2>青山学院大――笠井康平
<ページ3>拓殖大――岡本飛竜
<ページ4>東海大――ベンドラメ礼生
 
 

神様がいたコート

優勝 筑波大・小松雅輝

小松雅輝(こまつ・まさき)180㎝/G/福岡第一高出身

「神様ってほんとにいるんですね」

 それが優勝後のインタビューで筑波大キャプテン小松雅輝が最初に口にした言葉だ。

 昨年のインカレ優勝のあと、『継承』という重い責任を背負った4年生たちにとって、この1年は想像以上に苦しいものだった。シーズン最初の春のトーナメントでは決勝戦まで勝ち上がるが、そこで東海大に大差で敗れる。

「東海大が何より勝っているのは、ベンドラメ礼生という絶対的リーダーがいるということ。うちにはそういう存在がいない。筑波のリーダーは誰か?と聞かれても答えられる人はいないでしょう」

 試合後に吉田健司監督が語った言葉は小松の耳にも届いたはずだ。いや、むしろ吉田監督はその厳しい一言を小松に聞いてほしいと願ったのかもしれない。

「去年は笹山(貴哉・現三菱電機ダイヤモンドドルフィンズ名古屋)や坂東(拓・現三井住友銀行)といった心技でチームを引っ張る4年生がいたが、今年の4年生にはその力が足りない。技術どうこうという前に自分たちが最上級生だという気持ちの問題だと思う」(吉田監督)

 最上級生としての気持ちの問題……それは小松をはじめとする4年生たちが新チーム結成当初から悩み、迷い、向き合ってきた大きな課題でもあった。
「笹山さんや坂東さんが抜けたあと、うちは“下級生のチーム”と言われてきましたから」(小松)

 満田丈太郎、木林毅、生原秀将といった力のある3年生に加え、鳴り物入りで入学してきた馬場雄大、杉浦佑成の2年生コンビ。「自分たちより明らかに(力が)上だと感じる下級生たちを牽引していくというのは、考えていたよりずっと難しいことでした」(小松)

 同じく4年の村越圭佑も「木林が僕に代わってスタメンに入って、自分のプレータイムが少なくなっていくなかで、正直、自信を失いかけることもありました」と、振り返る。
 
 秋のリーグ戦では東海大のみならず拓殖大にも2連敗して3位で終了。それでも4年生は時間を見つけて集まっては話し合いを続けた。自分たちが最上級生としてやるべきこと、やらねばならないこと、背負った責任の重さに負けるわけにはいかなかった。

 インカレの決勝戦で小松が放った鮮やかな連続3P。村越が体を張ってもぎ取った7本のリバウンド。そこにいたのは紛れもなく筑波大を全力で牽引する4年生たちだ。

 残り4分でエースの馬場に5つ目のファウルが告げられた瞬間、小松は「俺の出番だ」と思ったという。「俺しかいない。絶対チームを勝たせてみせるという気持ちしかありませんでした」

 しかし、その4分から東海大の怒涛の追い上げが始まる。16点あったリードがわずか2分で3点となったとき、満員の場内が大きくどよめくのを小松は感じた。「でも、不思議と焦りはなかったです。なぜだか負ける気はしなかったです」

 そこからの2分、筑波大はしっかりボールを運び、着実にフリースローを沈め、64-59でタイムアップ。2連覇達成の歓喜の声が湧き上がるなかで、小松は仲間の肩を抱いた。1年間支え合ってきた4年生たちは勝利の紙吹雪が舞うコートのなかでひときわ大きく泣いた。

「神様ってほんとにいるんですね」

 笑顔の小松が言う。背負った重い荷物に苦しみながらも頑張る姿を見てくれていた神様。「今回の優勝は神様が自分たちに贈ってくれた大きなご褒美だったような気がします」

 だが、決勝戦が始まったとき、まだ神様は現れなかった。神様がやって来たのは4年生たちが歯を食いしばり最後の意地を見せたとき。そのとき神様はうんうんとうなずきながら、初めてコートに降りて来たのだ。
 
 

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