2015 李相佰盃・韓国学生選抜
韓国の将来を担う期待の2メートルトリオ

文・写真/小永吉陽子  取材協力/朴 康子、笹本明子


韓国の将来を担う期待の2メートルトリオ

ここ数年、韓国大学界は2メートル前後の選手が登場しては、代表選手へと成長している。日本はアウトサイドのシュートで対抗できても、インサイドではかなわないのが実情だ。特に今年度の3年生(新4年生)は 高さの面で“黄金世代” と呼ばれている。2015年12月に開催された李相佰盃より、韓国の将来を担う期待の2メートルトリオを紹介。
 

左からイ・ジョンヒョン、チェ・ジュニョン、カン・サンジエ。2015年度アジア選手権代表選手だ

U18からユニバ、国家代表へと
成長中の2メートル級たち

 コートに立つ2メートル級センター陣の体つきを見て、観客から驚きの声が上がっていた。鍛えられた分厚い胸板と肩回りの筋肉。韓国選手たちの体格は日本の選手と一回り違ったのだ。2015年12月開催の李相佰盃において韓国は、1戦目は勝負所を捉えた勝ち方、3戦目は多彩な攻めで日本を振り回して23点差(80-57)をつけ、強さを見せつけた。

 だが、主力の一人、チェ・ジュニョンによれば、「今回はすっきりとした内容ではなかった。まだボールを持った練習をそんなにしていないので…」と、歯切れは悪い。韓国は日本より一足早い10月上旬に大学リーグ戦を終了し、10月末には4年生がプロリーグへ入団。李相佰開催時には、3年生以下で新しいシーズンに向けて準備している最中だった。確かに動きに重さが見え、2戦目は接戦を落としている。しかし、ゲーム運びにおいては地力の差を見せつけられたと言わざるを得ない内容だった。

 韓国はここ数年、2メートル前後の高さある大学生が活躍し、代表入りを果たしている。特に今回来日した3年生は “黄金世代” と呼ばれ、近年でもっともレベルが高かった2012年のU18アジア選手権(モンゴル)の決勝において、中国と最後の1秒まで覇権を争った主力メンバーだ(結果は痛恨の逆転負けで準優勝)。そのモンゴル世代から今回の李相佰盃に選ばれたのが、#14イ・ジョンヒョン(高麗大3年/206㎝/C)、#8チェ・ジュニョン(延世大3年/200㎝/SF)、#12カン・サンジェ(高麗大3年/200㎝/PF)であり、3人とも昨夏のアジア選手権(リオ五輪予選)に出場した代表選手である。

イ・ジョンヒョン(高麗大3年、206㎝)

 2015年度の韓国代表は、KBL選手にケガ人が続出したことで、アジア選手権直前に3名の大学生をエントリー変更で加え、計4人の大学生を入れて戦っていた。新たに加わった大学生をまじえた練習時間の短さゆえに組織力が出せずに6位と振るわなかったが、大学生たちが随所に見せた好プレーは将来の希望になった。

 高校3年時より代表入りしているイ・ジョンヒョンは長いリーチを生かしたインサイドプレーとブロックショットが武器。今回は「あまり運動していない時期なので僕自身はあまりよくなかった」と反省をするものの、2014年のワールドカップではブロックショット王(平均2.6本)になったことからも、将来の韓国を背負って立つ選手であることは間違いない。

 チェ・ジュニョンは2~4番までこなすスウィングマン。リバウンドを取ってみずから速攻に走ってダンクをぶちかます“コースト・トゥ・コースト”が得意技。アジア選手権では徐々にプレータイムを獲得し、2次ラウンドのレバノン戦では目の覚めるようなスピードある突破とパスを披露。2メートルの身長でガードもこなせる非凡なセンスを見せつけた。

シューターからインサイドへと転向した珍しいケース
急上昇中の選手、カン・サンジェ

カン・サンジェ(高麗大3年、200㎝)

 そして、今もっとも成長を見せているのがパワーフォワードのカン・サンジェである。アジア選手権でもインサイドの控えとして短い時間ながら要所のシュートを決めていたが、この李相佰での内外角にわたる活躍には舌を巻いた。パワフルに鍛えられた体はゴール下での接触に強く、ゴリゴリと中に押し込んでくる。そうかと思えば、的確な状況判断から外に出てピシャリと3ポイントを沈める。3戦を通じて、このカン・サンジェのインサイドプレーがいちばん厄介だった。

 驚くべきことに、彼は高校時代はシューターだった。高校3年時に出場したU18アジア選手権では平均15.6得点、3ポイントの確率は43.1%(25/58本)。翌年のU19世界選手権では、強豪クロアチア相手に35得点を叩き出し、平均19.2得点、3ポイントは46.5%(20/43本)という高確率をマーク。そのプレースタイルから、フォワードとしてスコアラーになることは想像できても、インサイドに転向することは想像し難かった。大学入学後、シューターからインサイドに “逆コンバート” した珍しいケースの選手だといえる。
 
 

チェ・ジュニョン(延世大3年、200㎝)

「大学に入ってからインサイドに転向したのはチーム事情で監督から望まれたこともあるし、プロに入った時に中も外も両方できたほうがいいと思ったので、今はインサイドをやりながらも、外のシュートを打つようにしています。高校ではシューターでしたが、チームに背の高い選手がいなかったのでインサイドプレーも教わっていて、それが今に役立っています。太る体質ではなかったのですが、よく食べて、ウエイトをしたら3年間で15㎏も増えました」

 大学でインサイドに転向したため、主軸として活躍し始めたのは大学3年からだが、もともと得点力はある選手。2015年はユニバーシアード、国内トーナメントのプロアマ最強戦(KBLと大学生、軍隊チームが競う大会)を通してメキメキと力をつけ、10月の大学リーグ・チャンピオン戦ではMVPを獲得。エントリー変更といえど、アジア選手権のメンバーに名を連ねたことも納得なほどの成長ぶりだった。

 そして、彼ら2メートル級選手のほかに、もう一人紹介しておきたい選手がいる。機動力を見せつけた#4チェ・ソンモ(高麗大3年/187㎝/G)である。彼もまたモンゴル世代の一人で、スピードとドライブを得意とするキーマンだ。チェ・ソンモのスピードある突破と走りは何度も日本の流れを断ち切り、その献身的な働きは韓国の要になっていた。国家代表である “ビッグ3” が目立つ中で、影で支える選手がいたからこそ、韓国は崩れなかったのだ。

2016年の李相佰および
今後の国家代表戦でも彼らとは再会する

チェ・ソンモ(高麗大3年、187㎝)

 能力ある選手の台頭が目立つ韓国だが、李相佰で指揮を執ったソ・デソン監督は、彼らに苦言を呈している。

「韓国の選手たちは自分たちのほうが身長が高いし、身体能力もあると思っているので、やればできると思っているところがある。日本は身長の差があっても負けずと戦う姿勢があったし、シュートはとてもよかった。韓国の選手はようやく3戦目に自分たちで試合に臨む姿勢を改善していい試合をしてくれた。常にベストを尽くすよう、メンタル的にもっと強めていきたい」

 今回の韓国学生選抜は「体作りができていない」ことを理由に、なかなか気持ちが入らず、地力だけで戦っていたのは事実だ。2012年のU18アジア選手権で韓国と試合をした杉浦佑成(筑波大2年)は「高校時代、14番(イ・ジョンヒョン)は怪物級で手がつけられないほどでした」という感想を持っているが、今回はその姿は出していない。それでも勝てる――と韓国に思わせてしまったことは、日本にとってみれば悔しさしかない。だからこそ、次に試合をする時はもっと対抗したい。3年生の彼らとはまた次の李相佰盃で戦うのだから。

 イ・ジョンヒョン、チェ・ジュニョン、カン・サンジェ。今後、日本のライバルとして立ちはだかる3人を覚えておいたほうがいい。